はじめに
Intel 5 Series チップセットは2008年(Intel X58)から2009年(Intel P55/H57/H55)に発売されたCorei7/i5/i3系用のチップセットです。開発コードネームはIntel X58とIbexpeak(Intel P55/H57/H55)で、Corei7/i5/i3をサポートし、従来とチップセットの構成が大きく変わっています。
主な仕様
Intel 5 Series
- Core i系CPUをサポートする初めてのチップセット。
- CPUとの接続にQPIを利用し25.6GB/sの帯域をサポート(Intel X58)。
- 1チップ構成(Intel P55/H57/H55)。
スペック
Intel 5 Series は上位の Intel X58 と ミドルレンジ以下の Intel P55/H57/H55 ではプラットホーム自体が異なります。ここでは、Intel X58 と Intel P55/H57/H55で分けてお話しします。
チップ名 | Intel X58 | Intel P55/H57/H55 |
---|---|---|
ノースブリッジ(IOH) | X58 | - |
サウスブリッジ(ICH) | ICH10x | - |
PCH | - | P55/H57/H55 |
CPU | Bloomfield/Westmere | Lynnfield/Clarkdale |
ソケット | LGA1366 | LGA1156 |
CPUとのI/F | QPI | DMI |
Intel X58
Core i (LGA1366プラットホーム)対応
Core i系のCPUでは、メモリコントローラーをCPUに統合しました。今までのノースブリッジ(MCH)では、CPU、メモリ、グラフィック、サウスブリッジを接続していましたが、メモリコントローラーがCPU側に搭載されたため、IntelX58 はCPUとグラフィック、及びサウスブリッジを接続するよう構成が大きく変わったのが最大の特徴です。
なお、Intel X48 までのMCH(メモリコントローラーハブ)という名称と呼ばれていましたが、Intel X58ではIOH(I/Oハブ)に名称が変わっています。メモリコントローラーが搭載されていないのですから当たり前ですが。。。また、CPUとのインターフェースもFSB(FrontSide Bus)から、QPI(QuickPath Interconnect)となり、そのデータ帯域も12.8GB/sから25.6GB/sと倍増しています。
サウスブリッジに関しては、Intel 4 Series と同じICH10を使っています。
Intel P55/H57/H55
公式には Intel P55/H57/H55 はICH(サウスブリッジ)の機能を統合して1チップ構成としたものですが、実際には従来のサウスブリッジそのものです。要するにICH11相当ということになります。
Lynnfield/Clarkdale系のCPUでは、メモリコントローラーに加えてPCI-Expressコントローラも統合しました。もし、仮にそのままノースブリッジが存在するとすれば、CPUとサウスブリッジを単に繋ぐだけの、文字通りブリッジチップになってしまいます。このため、CPUはノースブリッジではなくサウスブリッジとのインターフェースを搭載して直接サウスブリッジを接続するようにしているのです。
Intel H57/H55 はCPUに統合されたグラフィック機能を出力するためインターフェイスであるFDIが搭載されています。CPUのグラフィック機能は、FDIによってチップセットと接続されてDVIやHDMIなどとして出力されます。
なお、ステッピングがB2までのIntel P55/H57/H55にはUSBに不具合があり、USB1.1のフルスピード同期転送デバイス(オーディオ等)とUSB1.1の非同期転送デバイス(キーボード等)を同じコントローラ(P55/H57/H55のUSBは2つのコントローラで計14ポートを提供している)に接続すると不安定になることがあるようです。発生する環境が限られる上に、別のコントローラの方へ接続することで回避できるので、リコールなどにはなりませんでした。
Intel P55/H57/H55は当初Lynnfield/Clarkdale系の次期CPUにも対応できると言われていましたが、DMIの帯域を広くするために互換性がなくなって結局のところ対応しませんでした。これにより、IntelP55/H57/H55は、わずか1年ちょっとの短命なチップセットとなってしまいました。もともとDMIの帯域は10Gbpsなので、PCI-ExpressGen2(5Gbps)やSATA3(6Gbps)への対応などを考えれば致し方なかったのかもしれません。
チップ名 | Intel P55 | Intel H57 | Intel H55 | ICH10R |
---|---|---|---|---|
インターフェース | DMI | |||
Serial ATA | 6 | |||
SATA RAID | ○ | × | ○ | |
PCI-Express | 8 | 6 | ||
USB 2.0 | 14port | 12port | ||
FDI | × | ○ | × | |
SLI/CF | ○ | × |
※この他企業向けのIntel Q57がある。
表からもIntel P55/H57/H55がサウスブリッジ相当であることがわかります。
特徴
Core i系(Nehalem)対応
Intel 5 Series チップセットは、Core i系CPUに対応するチップセットという点が最大の特徴です。Core i系CPUは従来のCore 2 Duo系のCPUとプラットホームに互換性がいため、Intel 5 Series はCore i系CPUに対応する初めてのチップセットとしてリリースされました。また、互換チップセットが登場したかった(できなかった?)ことから、この世代のCore i系CPU向けとしては事実上唯一のチップセットでした。
ハイエンドとミドルエンドのプラットホーム
Intel では従来ハイエンドとミドルエンド向けで同一のプラットホームを使っており、帯域などに違いがあったとしても、CPUに互換性がありました。しかし、このIntel 5 Series と Core i系CPUではハイエンドとミドルエンドで、CPUとのインターフェースに互換性がなく、同一アーキテクチャでもハイエンドとミドルエンド向けで全く異なったプラットホームが提供されることとなりました。
互換チップセット
Intel 5 Series は 今までチップセットが担ってきた多くの機能がCPUに統合されたため、チップセットがシンプルになりました。それと同時に差別化も難しくなり、他のベンダーから互換チップセットが登場することもなくなっていくと思われます。