nVIDIA nForce

はじめに

nForce (無印) チップセット は2001年に nVIDIA 初のチップセットとして発売されたグラフィック統合型の Athlon 用チップセットです。

開発コードネームは NV-Crush で、グラフィックコアにGeforce2 MX 相当のグラフィックスコアを統合したためそれまで統合型チップセットのグラフィックコアはお粗末というイメージを払拭したチップセットとなりました。

主な仕様

IGP-128

IGP-64

MCH-D

MCH

スペック

チップ名 nForce 420D nForce420 nForce 220D nForce220
ノーズブリッジ IGP-128 IGP-64
サウスブリッジ MCP-D MCP MCP-D MCP
対応CPU Athlon/Duron
デュアル動作 ×
対応メモリ種類 PC2100/1600 DDR SDRAM
(TwinBank MA)
PC2100/1600 DDR SDRAM
対応メモリ速度 4200MB/s 2100MB/s
メモリの最大搭載量 1.5GB 1.0GB
最大メモリスロット数 3slotで6bankまで 2slotで4bankまで
ノースブリッジとサウスブリッジの接続に使用しているバス HyperTransport(800MB/s)
AGP 4X
内臓グラフィック Geforce2 MX 相当
PCI 32bit/33MHz×5 Ver2.2
IDE ATA100
USB 6 port
付加機能 5.1ch
Ethernet
(論理層)
2ch
Ethernet
(論理層)
5.1ch
Ethernet
(論理層)
2ch
Ethernet
(論理層)

特徴

このチップセットの最大の特徴はGeforce2 MX相当のグラフィッククスコアを内臓した点ですが、他にも2チャンネルのメモリアクセスをサポートするTwinBank Memory Architecture を搭載し、通常64MBitのメモリバス幅が128Mbitの幅となりグラフィックスコア以外にシステム自体のパフォーマンスが向上するという特徴をもっています。

nForce はノースブリッジにあたる IGP=Integrate Graphic Prosessor とサウスブリッジにあたる MCP=Mediaand Communications Prosessor からなっていてそれぞれハイエンド版とローエンド版の二種類が用意されて、組み合わせで前四種類のチップセットが存在します。

nForce 420D nForce 420 nForce 220D nForce 220
IGP-128 IGP-128 IGP-64 IGP-64
MCP-D MCP MCP-D MCP

このチップセットの最大の特徴はやはりGeforce2 MX並みのグラフィックコア内臓した点でしょう。Intel i810チップセットがグラフィックコアを内臓してからグラフィック内臓チップセットいわゆる統合型チップセットというものの存在はメジャーなものになりましたが、それと同時に内臓グラフィックコアは性能が悪いというイメージも定着させてしまいました。Geforce2MXはnVIDIAの誇るGPU郡の中ではローエンドに位置しますが、それまでの3Dゲームは論外だった内臓グラフィックコアに比べてはまともに使えるグラフィックコアとしてそれまでの統合型チップセットとは一線を駕する存在となったのです。

ちなみに、nForceを語る上で忘れてはならないのがMicrosoftのXboxですが、Xboxの内臓コアはGeforce3をベースに性能をGeforce2程度に落としたものでしたが、こちらはGeforce2をベースに作られている点で異なります。速度はそれほど差はないのですが、DirectX8にフル対応しているGeforce3をベースに作られたXboxと比べて、DirectX7世代のGeforce2をベースに作れているnForceは機能的に多少劣ってしまうようです。
XBOXについて詳しくは『Column 05』を参照してください。

なお、内臓のグラフィックコアはAGP 8X相当で接続されているとのことで、AGP 8X規格がまだ発表されていない当時最速の接続となっていました。

nForceでは、内臓グラフィックコアのグラフィックメモリとして他のほとんどの統合型チップセットと同様にメインメモリ共有する方法をとっています。一般にメインメモリはグラフィックメモリに比べて格段に遅いのでパフォーマンスの点で不利になるといわれていますが、nForce420 シリーズではTBMA=TwinBank Memory Architectureと呼ばれるメモリアクセスを採用して2バンクのメモリに同時にアクセスして二倍のメモリ帯域を確保するようになっています。

2バンクに同時にアクセスして二倍の帯域を確保するチップセットとしてはRDRAMを利用するIntel i850が有名ですが、TBMAはi850が2バンクに同時アクセスするメモリコントローラを利用しているのに対して1バンクにアクセスできる二つのメモリコントローラを使って2バンクにアクセスしている点が特徴です。このため、i850では2本のメモリは同じ容量(っていうか同じもの)である必用が合ったのに対して、nForceでは異なる容量のメモリ(理論的には異なる速さのメモリも)でも可能となっています。ただし、3スロット装備するタイプのマザーボードでは1スロットと3スロットは同じメモリーコントローラが担当するのでその二つは注意が必要となるようです。

また、このような仕組みのためにnForceではCPUとバスマスタ動作のPCI機器やAGP機器などが同時にメモリにアクセスした時に、二個のメモリコントローラがそれぞれを担当することができるのでパフォーマンスの面で有利になるようで、逆にどれか一個だけがメモリにアクセスするような場合ではそれほど大きなアドバンテージにはならないようです。

このチップセットではノースブリッジとサウスブリッジの接続にAMDが開発したHyperTransportを利用しています。これによりPCIに比べて理論値で6倍の転送速度を持ちます。また、当然PCIバスとは別系統となるのでPCIバスが周辺機器で占有されていてもサウスブリッジやUSBなどに影響を及ぼすことはありません。この辺はIntelのハブアーキテクチャでも同様です。
このHyper Transportの広い帯域が有効に機能するのは二つのチャンネル上のUltraATA100のIDE機器を同時に動かした際くらいなものですが、このような場合に前項のTBMAなどと相まって高いパフォーマンスが得られるようになっています。

nForceは、サウスブリッジも多機能でICHと同様にEthernet機能の論理層を内臓していて物理層のチップを搭載するだけでEthernet機能を利用できるようになっているだけでなく、MCP-Dでは5.1チャンネルのサウンド機能に加えDirectX8.0準拠のサウンド機能をハードウェアレベルでサポートしていてドルビーデジタルのデコードもハードウェアでサポートしています。当時のサウンドカードの主力はCreativeのSoundBlaster Live!で、ドルビーデジタルのデコードはソフトウェアだった(しかも、一部の機種は4チャンネルだった)ことを考えると、サウスブリッジに高機能サウンドカード+αを搭載していることになります。これによりnForce420-Dではチップセットだけである程度の3Dゲームが不満なく楽しめるようになったのです。

このチップセットは統合型チップセットでそれまでの常識を打ち破る強力な内臓グラフィックに加え、高速なメモリアクセスやマルチメディア機能をもってnVIDIAのチップセットベンダーとしての地位を確立するに至らしめたチップセットです。

nForce 415D/415

nForceは、その後IGP-128からグラフィックコアを省いたSPP=System Platform Processor(さすがにグラフィックコアを内臓しないでIGPという名称はマズいと思ったらしい)もラインナップに加えています。SPPでもTBMAの恩恵にあずかることはできて、メモリに同時にアクセスするような場合に高いパフォーマンスを得ることがでたようです。

チップ名 nForce 415D nForce415
ノーズブリッジ SPP
サウスブリッジ MCP-D MCP
対応CPU Athlon/Duron
デュアル動作 ×
対応メモリ種類 PC2100/1600 DDR SDRAM
対応メモリ速度 4200MB/s
メモリの最大搭載量 1.5GB
最大メモリスロット数 3slotで6bankまで
ノースブリッジとサウスブリッジの接続に使用しているバス HyperTransport(800MB/s)
AGP 4X
内臓グラフィック -
PCI 32bit/33MHz×5 Ver2.2
IDE ATA100
USB 6 port
付加機能 5.1ch
Ethernet
(論理層)
2ch
Ethernet
(論理層)