nVIDIA Geforce 3 Series

はじめに

Geforce 3 は2000年にGeforce 2 GTSの後継として発売されたグラフィックチップです。

開発コードネームはNV20で、DirectX8.0に初めて対応するグラフィックチップとしてプログラマブルシェーダを搭載しているのが最大の特徴です。また、プロセスルールをシュリンクしていながらも膨大なトランジスタを使い価格よりも高速化を目指した設計だったようです。

主な仕様

スペック

チップ名 Geforce 3 備考
グラフィックチップ Geforce 3
コアクロック 200MHz
対応メモリ種類 DDR SDRAM/SGRAM
SDRAM/SGRAM
対応メモリ速度(最大) 230MHz のDDR 最大であってこの他いろいろな組み合わせがある。
メモリの最大搭載量 -
対応スロット AGP 4X/PCI
DirectXの世代 DirectX 8.0
OpenGLの世代 OpenGL
ハードウェア T&L
ピクセルシェーダ
バーテクスシェーダ
ジオメトリエンジン -
レンダリングエンジン -
プロセスルール 0.15μ
Mpeg再生支援
その他 -

特徴

このグラフィックチップの最大の特徴はDirectX8.0にハードウェアレベルで初めて対応し、プログラマブルシェーダを実装した点でしょう。このプログラマブルシェーダは後にDirectX8.1/9.0以降に引き継がれ、3Dグラフィックカードの中核をなす技術だけにこのGeforce3の功績は大きいのです。nVIDIAはこのGeforce 3に搭載したプログラマブルシェーダをnFinite FXと命名しました。

※プログラマブルシェーダについて詳しくは『Column 06』を参照してください。

Geforce 3はGeforce 2 GTSの0.18μから0.15μと若干微細化していますが、それでも5700万という膨大なトランジスタを搭載し価格を度外視した超高速設計だったようで性能的には軽くGeforce2 Ultraの何倍というレベルを誇っていたようですがそのあまりの価格の高さから一部のリッチなゲーマー以外ではあまり人気が出なかったようです(あこがれていても先立つものがなかった。。。)。

ちなみに、5700万というトランジスタは二次キャッシュを搭載していないコアとして新しいPentium IIIのKatmaiコアの950万から考えるとPentiumIII六個分くらいのグラフィックチップということになり0.15μというKatmaiよりもはるかに微細化したとはいえ巨大なコアでいかに強力な処理能力を持っていたかが伺えます。

初代XBOXに採用されたグラフィックコア(グラフィックチップではなくチップセットのグラフィックコアとして)に採用されたのがnVIDIAの製品で、実はこのコアはGeforce3をカスタマイズしたものなのだそうです。私は高価なGeforce 3よりもGeforce 2シリーズあたりを利用したものだと思っていたのですが、仕様上はGeforce3の方が近いようです。

XBOXがうなぎのぼりにシェアを伸ばし、XBOXの人気ゲームがガンガンPCに移植されていたらGeforce 3の運命は変わっていたかもしれませんが、初代XBOXの結果はまぁ皆さんのよく知っているところだと思います。第二世代はATIのチップを使うことになっているようで、nVIDIAは貧乏くじを引いたような感じを受けるのですが、そこはさすがnVIDIAでころんでもタダではおきないようで、このときの培ったグラフィックコアを内臓したチップセットのノウハウを生かしてnForceとしてリリースすることになります。実際に内臓グラフィックコアは当時お世辞にも良いものとはいえないもので、本当に映ればよいという程度だったものに対してnForceは使えるグラフィックコア内臓チップセットとしてあらたな市場を作った製品となりました。

なお、このときのグラフィックコアはGeforce 2をベースにしていて、この点からも私はXBOXで採用されたのが本当にGeforce 3ベースなのか疑わしく思っているのです。

※XBOXについて詳しくは『Column 05』を参照してください。

※nForceについて詳しくはチップセットの『nForce』

nVIDIAはGeforce 2 MXでローエンド市場に最適化した製品を投入して絶大な人気を誇りました。しかし、Geforce 3 にはローエンド市場向けに最適化された製品は投入されませんでした。このため、ハイエンド市場は高価で高性能ななGeforce3がニーズを満たしたのですが、ローエンド市場には一つ前の世代にあたるGeforce 2 MXの派生品で勝負することになり、おりしもATIが対nVIDIA向けにチップの外販を開始するなど本格的な対抗に入った時期と重なりnVIDIAの市場の独占状態は徐々にATIとの二分割の状態に移行していくことになるのでした。

nVIDIAがなぜGeforce 3にローエンド向けの製品を作らなかったのか理由は分かりませんが、元になるGeforce 3の基本構造(特に特徴でもあるプログラマブルシェーダの辺り)があまりにも大きくてトランジスタを食うためにどんなに最適化してもローエンド向けの価格帯に抑えることができなかったのか、またはXBOXのチップセットの開発などに開発リソースが割かれてローエンド向け製品の開発まで手が回らなかったのだと思われます。あくまで予想の域をでませんが、私は後者の線が濃いと思います。というのも前者であればGeforce2をベースにした廉価版をさらに強化してくることもできたハズなのに、投入したのはクロックが異なる製品だけでほとんど開発にリソースを割いていないと思われるからです。それでも一世代前のGeforce2 MXシリーズがATIの対抗製品と善戦を繰り広げたのはさすがというほかないのかもしれません。

Geforce 3 同時期に販売されていたGeforceシリーズ製品(前期)

チップ名 市場 特徴
Geforce 3 ハイエンド -
Geforce 2 MX 400 ローエンド Geforce 2 MXの高クロック版
Geforce 2 MX 200 ローエンド Geforce 2 MXの低クロック版装

※大まかな変更点で細かい変更点はほかにもあるかもしれません。

Geforce 3世代では、途中で製品をマイナーアップしています。これはATIの反撃に触発されたものだと思われますが、あまり大きな差はありません。MXシリーズはローエンド向けとして継続的に販売されました。

チップ名 市場 特徴
Geforce 3 Ti 500 ハイエンド Geforce 3の高クロック版
Geforce 3 Ti 200 ミドルエンド Geforce 3の低クロック版
Geforce 2 Ti ミドルエンド Geforce 2 Ultraと同じコアクロックとGeforce 2 GTSと同じメモリクロックを持ち、コストパフォーマンスに優れた製品

※大まかな変更点で細かい変更点はほかにもあるかもしれません。

※Tiは同社の展開したTitaniumシリーズからきています。