ATI RADEON 9700/9800

はじめに

RADEON 9700 は2002年にRADEON 8500の後継として発売された第三世代のRADEONにあたるグラフィックチップです。

DrectX 9.0に初めてハードウェアで完全対応し、ATIのグラフィックチップとしてもDirectX9.0世代に初めて対応したグラフィックチップです。

RADEON 9800は2003年にRADEON 9700の後継として発売されたグラフィックチップでRADEON 9700の改良版です。

主な仕様

スペック

チップ名 RADEON 9700 PRO RADEON 9800 PRO 備考
グラフィックチップ RADEON 9700 PRO RADEON 9800 PRO コアクロックが複数種類あった。
コアクロック 325MHz 380MHz RADEON 9700はPROが付かないのがコアクロックが275MHzでメモリクロックが270MHz。
対応メモリ種類 DDR SDRAM DDR SDRAM この他DDR SDRAM/SGRAM SDRAM/SGRAMにも対応しているようです。
対応メモリ速度(最大) 310MHz のDDR 340MHz のDDR
メモリの最大搭載量 128MB 256MB
対応スロット AGP 8X/PCI AGP 8X/PCI
DirectXの世代 DirectX 9.0 DirectX 9.0 完全対応
OpenGLの世代 OpenGL OpenGL 完全対応
ハードウェア T&L × × ハードウェアT&Lはバーテックスシェーダのエミュレーション
これはDirectX9.0の仕様
ピクセルシェーダ Ver.2.0 Ver.2.0 バージョンは変わらないが強化点がある。
バーテクスシェーダ Ver.2.0 Ver.2.0 バージョンは変わらないが強化点がある。
ジオメトリエンジン - -
レンダリングエンジン - -
プロセスルール 0.15μ 0.15μ
Mpeg再生支援
その他 - -

※RADEON 9700のPROが付かないものはOEM向けで一般リテール市場向けではなかった(RADEON 8500 LEのような扱い)のでここではRADEON9700 PROをメインチップとしました。

※RADEON 9800にはのちに高クロック化したRADEON 9800 XTが登場していますが、クロック向上以外には目立った変化はないようです。

特徴

RADEON 9700 PROの最大の特徴はDirectX 9.0にハードウェアレベルで完全に対応した初のグラフィックチップである点です。すでに、先行してMatroxがParheliaがDirectX9.0対応で発売していたが、こちらはピクセルシェーダのがDirectX8.1世代のものだったのでDirectX9.0をハードウェアで完全に実現したのはこの製品が初めてです。ATIではこのバーテックスシェーダVer 2.0とピクセルシェーダ Ver 2.0を実装したエンジンをSMARTSHADER 2.0と命名しています。

シェーダについて詳しくは『Column 06』を参照してください。

このほか、RADEON 8500と比べてコアクロックやメモリクロックが向上していて性能が高くなっています。

また、シェーダの汎用性が高くなったことからグラフィックスだけでなく映像や画像なども処理すると、それまでのGPUという呼び名からVisual ProcessingUnit=VPUと改めました。

ATIのRADEONが搭載するピクセルシェーダの浮動小数点演算の精度は24bitのものですが、nVIDIAのGeforceでは32bitのものになっています。同程度の価格帯にもっていくためには、一つのチップに使えるトランジスタの量には制限がでてきます。ここで高速化に主眼をおいてそこへトランジスタを多く使えば、精度の方に回らなくなり、逆に精度を高めると高速化に手が回らなくなります。このトレードオフが両者の大きな特色となっていて、高速でそこそこの精度のATIと高い精度のnVIDIAという構図が成り立ったのです。

実はDirectX9.0の仕様は32bitの精度を要求しているのでATIの24bitというのは必要な精度を満たしていない(=一部を削って計算している)ことになります。しかし、そのトレードオフによって得られた高速な性能と現在のゲームではそこまでの精度を求めないようで、ゲーマーなどを中にATIのグラフィックカードが人気を博したのです。

RADEON 9800 PROはRADEON 9700 PROの物理的設計を最適化することにより高クロック化を実現した製品です。バーテクスシェーダの浮動小数点演算機能を強化し、ピクセルシェーダの利用可能な命令の制限をなくしたりしたSMARTSHADER2.1を実装し、ハードウェアレベルでも細かい強化をしているのでクロック以上に性能の向上があるようです。

ラインナップ(RADEON 9700世代)

RADEON 9700 PROと同時期に販売されていた主なRADEONシリーズ
(RADEON 8500はRADEON 9000より性能が高いのに製品名の数値が低いために性能が低く見られることから変更したようです。)

チップ名 市場 主な特徴
RADEON 9700 PRO ハイエンド DirectX 9.0に対応
RADEON 9700 ハイエンド 9700 PROの低クロック版 (OEM向け)
RADEON 9500 PRO ミドルエンド 9700 PROのクロックを下げてメモリバスを半分の128bitにした
RADEON 9500 ミドルエンド 9500 PROからシェーダの性能を下げたもの(OEM向け)
RADEON 9100 ローエンド RADEON 8500(統一するために名前を変えた)
RADEON 9000 PRO ローエンド RADEON 8500のシェーダ性能を下げたもの
RADEON 9000 ローエンド RADEON 9000の低クロック版

※RADEON 9500のシェーダの性能を下げるとは、ピクセルシェーダのパイプラインの数を半分の4つにしたことが主な点。

※RADEON 9000 PROのシェーダの性能を下げるとは、バーテクスシェーダエンジンの数を半分の1個に、ピクセルシェーダのパイプラインに対するテクスチャユニットの数が4つのパイプラインに対して1個と半減させたことが主な点。

※注目すべきことは、9700と9000はPROと無印の差がコアクロックとメモリクロックだけなのに対して9500だけはパイプラインの数に変更があるという点。

ラインナップ(RADEON 9800世代)

RADEON 9800 PROと同時期に販売されていた主なRADEONシリーズ

チップ名 市場 主な特徴
RADEON 9800 XT ハイエンド 9800 PROの高クロック版
RADEON 9800 PRO ハイエンド DirectX 9.0に対応
RADEON 9800 ハイエンド 9800 PROの低クロック版(OEM向けとして存在していたらしい))
RADEON 9800 SE ハイ/ミドルエンド 9800 PROのメモリバスが半分の128bitになったほか、レンダリングパイプラインも半分の4本になっているというが正確には不明(正式発表もないらしい)
RADEON 9600 XT ミドルエンド 9600 PROの高クロック版、低誘電(Low-K)層間絶縁膜採用
RADEON 9600 PRO ミドルエンド 9700 PROのプロセスルールを0.13μに、メモリバスを128bitに、そしてシェーダの性能を下げたもの
RADEON 9600 ミドルエンド 9600 PROの低クロック版
RADEON 9600 SE ミドル/ローエンド 9600からメモリバスをさらに半分の64bitにしたもの
RADEON 9200 PRO ローエンド RADEON 9000 PROのAGP 8Xに対応させたもの。
RADEON 9000 ローエンド 9200 PROの低クロック版(というかRADEON 9000のAGP 8X対応版?)
RADEON 9800 SE ローエンド 9200からメモリバスをさらに半分の64bitにしたもの

※RADEON 9600 PROのシェーダの性能を下げるとは、バーテクスシェーダエンジンの数を半分の2個に、ピクセルシェーダのパイプラインの数を半分の4つにしたことが主な点。RADEON9500よりもたくさん落とされているらしい。

※注目すべきことは、RADEON 9600 PROはクロックを除くとRADEON 9500 PROよりも性能が低い可能性があるという点。

※大まかな変更点で細かい変更点はほかにもあるかもしれません。