Windowsの歴史

はじめに

今や私達の身の回りにあるパソコンの約9割がOSにMicrosoftのWindowsを採用しています。ここではWindowsの簡単な歴史をご紹介いたします。今日の高いシェアは、長い間積み重ねてきた実績と技術力に裏打ちされているということが分かります。

Windows以前

1981年に8086系CPU用のOSとしてDOSをMicrosoftとIBMが共同し、MicrosoftはMS-DOS(MicroSoftDisc Oprating System)、IBMはPC-DOSの名称でそれぞれ販売します。MS-DOSは順調にバージョンアップを繰り返し、MicrosoftはOSソフトメーカーとして徐々にシェアを拡大していきました。

Windowsの登場

1985年にPC/AT互換機用のOSとして、GUI(Graphical User Interface)とマルチタスクという二大要素をもってWindows Ver.1.0がひっそりと登場しました。このWindowsはOSそのものというよりも、DOSにグラフィカルなユーザーインターフェース機能を追加するプログラムで、ユーザーはより直感的に操作できるようになりました。Windowsの名前の由来はこのGUIのプログラム窓(Window)に、マルチタスクなので複数形のsが付いてできたと言われています。

しかし、この新たなGUIの時代への第一歩になる初代Windowsは当時のパソコンのスペックからすると明らかオーバースペックとなっており(Windowsはいつの時代もパソコンのスペックに泣かされてる)、マルチタスクもほんの2、3個ソフトを立ち上げただけでメモリ不足になるような状態だったのでメリットをあまり感じられず、あまり手ごたえがないまま次期バージョンになります。日本国内では、PC-9801シリーズ向けに移植されてNECから発売されています。

1987にWindows Ver.2.0が発売されます。Windows Ver.1.0がタイルを敷き詰めるように複数のウィンドウを表示したのに対して、Windows Ver.2.0は、今ではお馴染みのスタイルとなった、空間に奥行きの概念を持たせてウィンドウ同士を重ねることが可能なオーバーラッピングウィンドウというGUIになりました。Windows Ver.2.0はハードウェアのスペック向上も手伝って、そこそこの評価が得られまました。1988年にはマイナーアップ版であるWidows Ver.2.1が発売されています。

i386とWindows/386、そしてWindows 3.1へ

Windowsがまだそれほど普及していなかった当時はDOSが大活躍をしていましたが、DOSには同時に複数のプログラムを実行することできないという大きな欠点がありました。

1985年に登場したIntelの初の32bitプロセサーのi386プロセッサーは、一個のCPUで擬似的に複数の8086プロセッサーのように見える機能を搭載していました。1888年にMicrosoftはi386のこの機能を利用してWindows上で同時に複数のDOSを実行できるようにしたWindows/386を発売します。OSの機能自体はWindows Ver.2.xからさほどかわっていなかったのですが、DOSを複数実行できるOSとしてWindows/386は成功を収めます。

1990年にMicrosoftはWindows Ver.3.0を発売します。このOSは、名前こそWindows Ver.2.xのバージョンアップのようになっていますが内部的にはWindows/386の後継にあたりました。この時点でWindows本流はWindows/386系を採用することになり、Windows Ver.1.0系はVer.2.xで開発を終了することになります。

MicrosoftこのOSの宣伝とデモンストレーションを大々的に行い、PC業界にWindowsの名を轟かせました。実際、このOSの評判は上々で、NECを初め各社のPC向けに移植され発売されました。

1992年にマイナーアップ版のWindows Ver.3.1が発売されます。このOSはマイナーアップ版ではありますがその機能が強化され、よくずっと使いやすく安定したOSとなりました。また、それまで各社が自社パソコン用に移植していた日本語版Windowsですが、1993年に初めてMicrosoft自身の手によりWindows Ver.3.1日本語版を発売します。

OS/2とWindowsNT

MicrosoftはWindowsとは別にIBMとOS/2というOSを共同開発していましたが、1990年にIBMとの交渉が決裂し自社でMS-OS/2の開発をすることになります。1991年にMS-OS/2の名称をWindows NT(New Technology)と名前を変更してWindows 3.1と平行して開発をつづけ、1993年Windows NT Ver.3.1として発売されます。

このOSはもともと別のOSでしたからWindowsと名乗ってはいるものの内部的には異なっており、Windows本流との互換性はあまり高くなかったようです。Windows NTは1994年にVer.3.5を、翌1995年(日本語版は1996年)にはVer.3.51と順調にバージョンアップを重ねて行きます。Windows Ver.3.51はかなり完成度が高く安定性も向上していましたが、コンシューマ向けには少し扱いずらいOSだったようです。

Windows 95の登場、3つのWindows

さて1995年にMicrosoftが史上空前の宣伝とデモンストレーションを全世界を巻き込んで行い、Windows 95が鳴り物入りで発売されます。Windows 95は破竹の勢いでシェアを拡大して行き、また同年に日本語版も発売されます。現在(Windows Vistaのクラシックモードまで)まで続くあのGUIスタイルが初めて採用された瞬間でした。ちなみにWindows 95はWindows Ver.4.0にあたります。

Windows 95は、ユーザーフレンドリーなGUIとPlug&Playによる周辺機器の簡単なセットアップの実現などの先進的な技術をサポートして、一般家庭へのパソコンの普及に大きく貢献します。また、Windows 95ではインターネットへの敷居が格段に低くなりインターネットへの普及に対しても大きな功績を残しました。

さらに、Microsoftは同年にWindows用ブラウザソフトのInternet Explorerを開発して無料でリリースしました。最初は所詮無料といった感じでしたが、Ver.2.0、3.0を経て1997年に登場したInternet Explorer 4.0はブラウザとして充分優秀で有料のパッケージ製品とも互角に渡り合える製品だった上に、Windows自体のインターネット機能やマルチメディア機能をも強化する機能も有しており、一気にシェアを奪いブラウザ市場を独占します。

1996年にWindows NT Ver.3.51の後継になるWindows NT Ver.4.0が発売されます。発売当時は機能的にはWindows NT Ver.3.51とさほど変わらなかったようですが、爆発的なヒットを生んだWindows 95と同じGUIを採用し見た目が統一されます。また、後継のバージョンの開発が遅れたこともあり、後にリリースされるService Packで機能が強化されることになります。

Windows NT Ver.4.0はもともと企業向けに作られた事もあって、一般ユーザーには扱いづらいく、またにマルチメディアに弱く対応アプリケーションとハードウェアが少ないという欠点を持っていましたが、フル32bitで、メモリ管理やファイル管理などがWidows 95とは異なる優秀な方式を採用しており高い品質を誇っていました。

1997年、ハンドヘルトPC用にWindows CEが発売されます。Windows CEはPDAやカーナビなどの組み込み用Windowsとしてリリースされているので一般の目に触れる機会は少ないですが、Windows Mobileなどのベースとして今でも開発されています。

Windows 98とWindows 2000

1998年にMicrosoftはWindows 95の後継としてWindows 98をリリース、直後に日本語版も投入します。翌年には、バグの修正と一部の機能を強化したWindows 98Second Editionが発売されます。Windows 95は革新的な技術を一挙に多数取り入れたため安定性の面では問題もあり、それらの改善と発売後に登場した新しいハードウェアへの対応などが主な目的でした。ちなみにWindows 98のバージョンはWindodws Ver.4.1で(Second Editionも同じ)、Windows 95のマイナーアップにあたります。

Intelはi386以来積極的に32bitのCPUを投入していて、1995年からは特に32bit処理に強いPentium Proやその後継を販売していました。Windows 95は32bit OSでしたがWindows Ver.3.1との互換性もあって内部に16bitコードを多数もっており、性能向上の足かせになっていました。その為、完全な32bit OSであるWindows NT系の後継OSの登場がまたれていたのでした。

2000年にWindows NT Ver.4.0の後継としてWindows 2000が発売されます。このOSはWindows NT Ver.4.0の弱点であるマルチメディア関係の弱さと対応ハードウェアの少なさを克服し、さらにアドバンテージであるセキュリティや安定性を強化したOSとして登場しました。Microsoft自身が、「一番労力と時間をつぎ込んで作った。」と言うほどのできだったのですが、対応アプリケーションとハードウェアが出揃うまで少しずつジワジワと普及していくことになります。ちなみにWindows 2000はWindows NT Ver.5.0にあたります。

当初Windows 2000(Windows NT Ver.5.0)はWindows 98に対する欠点を克服し、コンシューマ向けのOSとビジネス向けのOSの統合を目指していました。実際にWindows 2000は、コンシューマ向けOSであるWindows 98のほぼ全ての機能を実装しており製品自体はそれも可能なものでしたが、Microsoftはコンシューマ向けとしてリリースするには対応ハードウェアとソフトウェアの普及がまだ不十分だと考え、Windows 2000はビジネス用のOSとして販売することになりました。

そしてコンシューマ向けには、同年Windows 98の後継OSとなるWindows ME(Millennium Edition)を発売することになりました。このOSはWindows98からマルチメディア機能を強化したり、Windows2000で採用された機能の一部を取り入れたものでしたが、逆にネイティブDOSのサポートを打ち切るなど互換性がそこなわれた上に安定性も芳しくなかった為に市場の評価はあまりよくなかったようです。

Windows XPの登場、統合されたWindows

Windows 2000が発売されたから時間が経ち、ハードウェアやソフトウェアが対応した頃合いを見計らって、コンシューマ向けのOSであるWindowsME系の後継として、またビジネス向けのOSであるWindows 2000の後継として、2001年にWindows XPが発売されます。WindowsXPはWindows NT Ver.5.1にあたり、Windows 2000のマイナーアップ版にあたりました。ここで、Windowsの本流がWindows/386系からWindowsNT系へと2度目のシフトをすることになり、Windows/386系はWindows MEで開発を終了することになります。

Windows XPは製品そのものに関してはWindows 2000と大きな差はありませんでしたが、マーケティング的に見ると長らく別々であったコンシューマ向けのOSとビジネス向けのOSを統合したという意味で重要な製品と言えます。さらにコンシュー向けWindowsにとっては初のフル32bit OSとなり、Windows MEの性能の悪さも手伝ってか一気に普及することになりました。

また、この頃から一般的にもパソコンのセキュリティに関する関心が高まり、後にリリースされたServicePack 2ではセキュリティ機能の大幅な機能追加が行われました。加えて、後継OSの開発の遅れにともなってサポート期間が延長され、Internet ExplorerやWindows Mediaなどのミドルウェアで新しいバージョンがリリースされたため、非常に寿命の長い製品となりました。

Windows Vistaの登場

2007年にWindows XPの後継となるWindows Vistaが各言語同時に発売されました。Windows XPが登場してから実に6年ぶりのバージョンアップで、3Dグラフィックと検索機能を活用したGUIの採用、セキュリティ機能の強化などが図られました。なおWindowsVistaはWindows NT Ver.6.0にあたります。

しかし、GUIに変更が加えられたことにより操作性が変化したこと、搭載された機能が高度化したことにより必要するハードウェアのスペックが大きく上がったこと、セキュリティ関連の強化により動作しないソフトウェアやハードウェアが少なくないことなどの要因で、市場になかなか受け入れられませんでした。

すでにパソコンは一家に一台から、一人一台という時代になりつつあり、ネットブックなどのソコソコの性能で安価なパソコンがカジュアルユーザーを中心に大ブレイクしており、ハイスペックなマシンに高機能なOSという従来の構図は成り立たなくなっていたのかもしれません。

また、この頃からブラウザベースのサービスが数多く登場してきており、これらのサービスはブラウザが対応していればプラットホームであるOSは影響を受けないため、Macのシェアが拡大したり、iPhoneやAndroidを筆頭にしたスマートホンが爆発的に普及するなど、Windowsプラットホームの影響力が低下しているのもまた事実でした。

Windows 7の登場

2010年にWindows Vistaの後継となるWindows 7が発売されました。Windows 7ではネットブックなどでも快適に動作するように要求スペックを引き下げ、またGUIや互換性などVistaで問題となっていた多くの点を改善しました。なおWindows7は名前こそ『7』ではあるものの、Windows NT Ver.6.1でWindows Vistaのマイナーアップ版にあたります。

Windows 7は製品そのものに関してはWindows Vistaの改良版で大人しい製品でしたが、Windows Vistaの問題点だった要求スペックや互換性などの問題点を着実に改善しており市場の評価は上々で、WindowsVistaの買い控え需要も手伝って順調に普及がすすみました。

とはいえ、スマートホンの人気は続いている上に、iPadが切り開いた新たなジャンルも台頭してきています。今後はパソコン自体の価値向上が急務となっている今、Microsoftの次の一手が注目されるところなのです。