CD-ROMドライブの倍速って何?

はじめに

PC周辺機器では多くの場合、XXMB/sやら、XXdpiのように具体的な数値を示されることが多いですが、CDドライブではXX倍速という表記が主に使われそれ以外の具体的な数値が示されることは少ないです。
ここではCDドライブの速度についてお話いたします。

何を基準のXX倍速?

CDドライブやレコーダーではXX倍速という数値がスペックとして取り上げられています。このXX倍速というのはいったい何の倍速なのでしょうか。

当社従来品?そりゃ40倍は早すぎでしょう?

CD-ROMはそもそも音楽CDから転用された媒体です。よって音楽CDの再生速度を標準としてXX倍速を定めているのです。CDの再生時間は最大で74分ぐらいなので、10倍速のプレーヤーでは単純計算で8分程度で650MB全部を読み込むことができるというわけです。

転送速度

音楽CDは16bit&44.1KHz&stereoで記録されていますから、16×44.1×1000×2÷8=176.4KBとなります。これが等倍速で読み取ることができるデータ量でこれを1セクタを2352バイトとして75ブロックに分けて管理しています。

さて、音楽CDには耐エラー性はほとんどなく再生機側が前後のデータから判断して"適当"に処理します。まぁ、読めない漢字を前後の文脈で判断するようなもんです。しかしながら、プログラムやデータを前後の文脈で判断されては困ります。この為、音楽CDをデータCDに転用する際に多くの耐エラー技術をつぎ込みました。このエラー訂正用の領域に2352バイト中304バイトを消費するので実際にデータ記録用として利用できる領域は1セクタで2048バイトとなり、よってCD-ROMを等倍速で実際に読み出すことができるデータ量は2048×75=153600Byte/sとなります。パソコンでは通例1KB=1024Byteで換算するので153600Byte=150KBで等速は150KB/sとなるのです。

これに従い2倍速は300KBで4倍速は600KB…となり、これはCD-R/RWの書き込みや書き換え速度も同様です。

CLVとCAV

CDはCLVという線速度一定という読み込み方法を使っています。つまり、レーザーが当たっている箇所の速度(=線速度)が一定になるように回転数の方を変化させる方式です。同じ速さで回転している円盤の場合は外周に行くほど線速度が上がりますが、逆に同じ線速度を保つならば内周の方がより高速に回転させる必用があります。12倍速あたりから最内周の回転速度をそれ以上あげるのが技術的に困難になってきました。

そこでCAVという角速度一定方式によって高速化する方法を使うようになりました。角速度一定とは要するに回転速度を一定に保ちながら読み取るといことで、外周に向かうにつれて高速に読み取ることができます。また回転速度を一定にすることで回転数も上げやすく、ランダムリードにも強くなりました(ランダムリードのようにディスク上の複数の箇所からデータを読む場合はCLVでそのつど回転数を変える動作が入るので不得意)。ただし、この場合のXX倍速というのは"最大"であって最内周などはずっと遅いハズです。親切なメーカーは平均XX倍という表記もしていましたが、最近ではすべてCAVを使っているので最大同士を比べることになるのでそれほど気にしなくても良いようです。

読み取りの場合は、音楽CDではないので読み取り速度が一定である必用はありませんが、書き込み時は話が違ってきます。やはりレーザーを当て初めてから色素が変色するまでの僅かな時間などがあるので、CAVでは制御が難しそうです(たぶん)。しかし、現在では読み取りと同様にCAVやパーシャルCAVのほかゾーンCLVなどの技術でこれを克服しました。

パーシャルCAVは回転数的に厳しい内周部ではCAVから書き込みを初めて、目標の倍速になってからはCLV方式を使うという方法です。ゾーンCLVは場所によってことなるCLVを使いわけるということで、回転数が厳しい内周部では低速なCLVを使い外周部では高速なCLVを使うというワケです。どちらもそれなりに成功しているようです。

ちなみに技術革新が続き、最近では24倍程度まではCLVでの読み書きが可能なようです。