CDとクラシック

CDとクラシック

先進技術の産物であるCDと古き良き芸術のクラシックの意外な関係についてお話しいたしましょう。

CD-ROMの記憶容量は最初は約650MBでした。最近は多く見かける700MBの容量版はCDの規格一杯に密度を高くして記録することで達成されたもので最近の技術革新がなせた業なのです。

CD-ROMは音楽CDに耐エラー性を高めてデータ保存用としたもので、この650MBという容量はもともと音楽CDの録音時間74分から来ています。ちなみに音楽CDをパソコンで作成する場合に74分のWAVEファイルは650MB以上の容量を持ちますが、これはWAVEファイルのヘッダ等に情報が記録されているデータ分もありますが、650MBの容量は耐エラー用に設けられた領域を除いた容量なので音楽CDではこの領域も音楽データを記録できるので記録可能な容量が多くなるのです。

当初フィリップスがCDの草案を纏めた際、カセットテープの対角線の大きさ11.5cmを直径とした大きさとして録音時間は60分でした。当時のLPレコードは片面30分でしたからLPがまるまる一枚録音できる容量として合理的な容量と大きさでした。これを日本のメーカーに賛同を求めた際に乗ってきたのは言わずもがなソニーでした。

ソニーとフィリップスの最大の論点は容量と大きさについてでした。当時副社長であった大賀さんは芸大卒の音楽家からの転身だったこともあり、60分ではクラシックの大作が切れ目なく演奏できないことがあることを指摘して、もっと長い録音時間を求めました。

当時のソニー会長であった森田会長は世界的なクラシック指揮者であるヘルベルト・フォン・カラヤンと友人で、彼が第九を演奏した時間であった74分をベースとするのはどうだろうかという案がだされました。調べた結果、74分あれば世界の99%の曲が切れ目なく録音できることがわかりました。しかし、74分の録音にはフィリップスの提案より大きい12cmの直径が必用でした。

議論の結果、『巨匠カラヤンが74分欲しいと言った!』ということで12cmの直径で74分42秒録音可能なサイズが採用されたのだそうですが、実際にはカラヤンがそう言ったわけではないというのが通説です。もっとも、カラヤンが60分よりも長くして欲しいといったのは本当のことらしいですが、まぁ事実は本人のみぞ知るというワケです。

まぁこのカラヤンの演奏時間がCDの大きさを決め、またそれがCD-ROMとなり、コンピュータの世界にまで影響を及ぼすとは、カラヤンも天国でさぞビックリしているでしょうね。

パソコンとコンピュータの意外な関係でした。