はじめに
このページではPC/AT時代からデータの保存媒体として活用されていたフロッピーディスクについてお話します。
FDDはFloppy Disk Driveの略です。PC/AT(オリジナル)には記憶媒体としてFDDが主に使われHDDはオプション扱いでした。PC/ATに採用されたFDDは5inch(サイズ的には5.25inchなのだが)のタイプで、現在主に使われている3.5inchのタイプはPS/2に採用されたものをベースにしています。
FDDとHDDはCD等の記憶媒体と異なりPC/ATの基本機能で、BIOSレベルで認識するので起動時から利用できます。このためインストールやBIOSのアップデートなどには欠かせないものでしたが、最近ではFDDを利用しなくてもそれらのことが可能となってしまったために搭載されない機種も増えてきました。
以前はフロッピーは持ち運び可能な記憶媒体で相手とのデータ交換をするのにはもっとも手軽で確実なものとして、古い規格ながら利用され続けていました。これはドライブ自体が安価でほぼすべてのパソコンに実装されていた上に、メディアも安価で入手しやすかったためです。しかし、最近ではデータの肥大化にともないフロッピーディスクの記憶容量の少なさが弱点となり、またCD-Rの低価格化とUSBメモリーの台頭により急速にその数を減らしつつあります。
容量
FDにはサイズと密度で幾つかの種類があります。現在FDといえば3.5inchのものですがPC/ATに搭載されたのは5inchのもので、現在の3.5inchのものの他8inchのものも存在するそうで、フォーマットもワープロ専用機独自のフォーマットなどがあります。
規格 | 5inch | 3.5inch | ||
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PC/AT互換機 | PC-9800シリーズ | PC/AT互換機 | PC-9800シリーズ | |
2D | 320KB/360KB | 320KB/360KB | - | - |
2DD | - | 640KB/720KB | 720KB | 640KB/720KB |
2HD | 1.2MB | 1.2MB | 1.44MB | 1.2MB(通称2HC) |
2D=Double side Double density(両面倍密度)
2DD=Double side Double density Double track(両面倍密度倍トラック)
2HD=Double side High density Double track(両面高密度倍トラック)
※PC-9800シリーズでは2HDのフォーマットサイズが異なるのはコントローラを8inchのフロッピー用をベースに製作しためで、一部に互換性や共通化を持たせてあります。IBMのPC系では8inchのフロッピーは採用されなかったので互換性や共通化をする意味がなく、独自の1.44MBという規格を採用したのでした。
インターフェース
FDDはPC/AT互換機の基本機能の一つで、通常は専用のコントローラとインタフェースが用意されており二台のFDDが搭載可能です。PC/AT互換機でHDDのドライブレターがC:から始まるのは二台のFDD用にA:とB:が確保されているからです。本来ならPC/AT互換機ではFDDを必ず必用とするものでしたが、現在はFDDを搭載しなくても使用できるようになっています。
なお、通常のケーブルには5inch用と3.5inch用のコネクタがそれぞれ二個づつあり、Aドライブ用とBドライブ用のコネクタが決まっています。
モバイルパソコンなどドライブ類の実装が困難な場合などに向けてUSBなどをインターフェースにした外付けFDDも存在します。この場合はUSB外部機器として認識されるのでMOなどと同様な扱いになるので、通常USBに対応したOS上でしか利用することができずDOSの起動やBIOSの書き換えプログラムを実行することはできないハズです。
しかしモバイルパソコンメーカー各社はこれは不便だと考え、BIOSに手を加えてUSB接続ならがBIOSが通常のフロッピーとしてエミュレートすることが可能な製品も多くみられます。BIOSでエミュレートするという関係上純正以外のFDDでは難しいようですがこのようにエミュレートした場合は通常のフロッピー用のインターフェースに接続したものと同様なことが可能です。
歴史
FDDの歴史は深くPC/AT互換機登場以前からあります。
1972年にIBMが8inchのフロッピーディスクを開発しました。当時は1S=Single side Single density(片面等密度)で業務用パソコンの外部補助記憶媒体として登場しました。ちなみに製品名はフロッピーディスクドライブではなく『IBM3740 Data Entry System』で、230KB程度の容量を持っていました。
1976年には小型化した5.25inch(通称5inch)のフロッピーディスクをAlan Shugart社(ちなみにこれは現在の SeagateTechnology 社でSCSIを規格化させたあの会社。)が開発に成功、これはPC/AT互換機に搭載されます。
さらに1981年にソニーが3.5inchのフロッピーを開発してこれはPS/2に搭載されます。ちなみに、それまでは磁性体をボール紙のケースに収めていましたが3.5inchからはプラスチック製のケースに収め対衝撃性を高めました。
フロッピーディスクは、初期の頃ドライブが媒体の有無を光レーザーによって検出していた関係で反応しやすいようにケースが黒い色をしていました。今ではその必用がないのですが、通例のように黒いケースになっているのはこの為です。