α7 S with Leica Elmar 90mm F4

はじめに

風景写真が中心の私は中望遠レンズを持っておらず苦手なイメージがあったのですが、たまには毛色の違ったレンズも良いかなと思い手を出してみることにしました。レンジファインダー機ではピント合わせが難しいせいか、中望遠のレンズはお買い得なレンズが多いような気がします。このレンズもライカのレンズにも関わらず2万円程度でした。

写りについては、開放から周辺までシャープでしっかりとした写りながら、色味は淡く繊細で穏やかな描写が魅力的だと思います。これで、80年も前の白黒フィルム用レンズというから驚きですね。

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Leica Elmar 90mm F4

Elmar 90mm F4は最初のLマウントカメラとなる『Leica C』の交換レンズとして1931年に登場した、古参のLマウント交換レンズの一つになります。ライカのレンズにしては手頃な価格にも関わらず写りには定評があり、私のようなちょっと中望遠を試してみたい人には最適なレンズではないでしょうか。

Leica Elmar 90mm F4もロングセラーでいくつかのタイプがありますが大きく分けると、初期型で太めの通称『ファットエルマー(日本では"だるまエルマー")』と、細身になった戦前タイプの通称『ティンエルマー』、ガラス素材が変更された戦後タイプのエルマー、レンズ構成が3枚となった通称『トリプレットエルマー』などがあるようです。

ちなみに、ライカのレンズで3枚構成なのは『トリプレットエルマー』だけで、写り、造形、希少価値(本数も少ない)すべてが素晴らしく、お値段も素晴らしい価格で取引されている知る人ぞ知るレンズだそうです。もちろん私の持っているのは普通な4枚構成のエルマーで、1937年製の戦前タイプのエルマーでした。

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このレンズはライカのLマウントで、私はElmar 50mm F3.5 の際に購入したKIPON社製のアダプタを使いました。無限遠は他のレンズと同じで若干ずれているようですが、無限遠で使うことが少ないので標準レンズの他のLマウントレンズよりも目立ちませんね。

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写りの印象

エルマーはElmar 50mm F3.5に続いて二本目ですが、繊細で緻密な写りは50mmと同様に感じられます。色味はコントラストが低く全体に淡い感じですが、シャープな解像度とあいまって透明感のある描写になっていると思います。ただ、この淡い色味は光の具合により曇天では思いのほか深い発色をみせることもあり興味深いです。

中望遠のレンズの中では開放F4というスペックは暗めだと思いますが、そのぶん周辺描写も開放から秀逸です。明るい空などが入ると周辺光量落ち(ヴィネッティング)が感じられますが、自然な雰囲気に仕上がるのでむしろ好印象だと思います。なお、50mm同様にコーティングがなく逆光には弱いので太陽の位置は気をつかいたいところです。

80年も前のレンズとは思えないほどシャープでしっかりとした写りなのでイメージするレトロな描写とは違うかもしれませんが、最近のレンズでは味わえないような淡く繊細で穏やかな描写はとても魅力的だと思います。中望遠レンズなので使用頻度は低いですが、とてもコンパクトなので鞄にしのばせて旅行に持って行きたくなる一本です。

α7S + Elmar 90mm F4 ISO100 F4 1/1250 B/W

作例

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