『回生ブレーキ』

はじめに

東急8500系では省電力を考えブレーキに回生ブレーキというものを使っています。とはいえ、回生ブレーキって何ですか?と思われる方が多いと思います。では回生ブレーキってなんなんでしょうか。

東急8500系のブレーキ

東急8500系には回生ブレーキと電気指令式電磁直通ブレーキという二つのブレーキが搭載されています。基本的なブレーキは電気指令式電磁直通ブレーキを使い、回生ブレーキによって止まる時のエネルギーのムダが少なくなるようにしています。

電気指令式電磁直通ブレーキ

ブレーキでもっとも基本的な方法は、車輪などに何か(ゴムやら金属やら)を押し当てて、その摩擦で車輪の回転速度を落とすという方法です。鉄道では押し当てる力に圧力を高くした空気を使います。制御方法にいくつか種類があるのですが、空気を使ったブレーキということで総称して空気ブレーキと呼びます。

空気ブレーキの制御方法でもっとも単純なのは、先頭車両から最後尾までを空気を通すパイプ(直通管と呼ぶ)でつなぎ、その直通管に各ブレーキシリンダーをくっつけて、運転台から空気の圧力を制御できるようにする方法です。この直通管の圧力が上がると、ブレーキシリンダーの圧力も上がりブレーキがかかり、逆に直通管の圧力が下がるとブレーキシリンダーの圧力も下がりブレーキがゆるむようになっています。

この方式は直通ブレーキと呼ばれる方式で、運転台でかけた圧力がそのままブレーキの力となるので操作がやりやすいという利点があるものの、例えば、直通管が途中で切れた(車両間の空気ホースが外れるとか)場合に全車両でブレーキが効かなくなるという大きな問題がありました。

この問題を改善したのが自動ブレーキで、直通ブレーキと同じように先頭車両から最後尾までを空気を通すパイプ(こちらはブレーキ管と呼ぶ)でつなぎますが、そのブレーキ管に普段は圧力をかけておき圧力が下がると逆にブレーキシリンダーの圧力が上がる仕組みとなっているのが特徴です。ブレーキ管の圧力が上がると、ブレーキシリンダーの空気が抜けてブレーキが緩み、逆にブレーキ管の圧力が下がるとブレーキシリンダーに空気が送り込まれてブレーキががかるようになっています。ブレーキ管とブレーキシリンダーが逆に動くのがポイントです。

この方式では、例えば(あっては困りますが)列車が走行中に編成の途中で分離したり、ブレーキ管が外れたり、途中に穴が空いたりした場合に、ブレーキ管の圧力が下がって自動的にブレーキがかかるので安全なブレーキと言えます。原始的ですが安全で確実な方法として古くから使われ、いまでも古い車両の多くに使われている技術です。

しかし、いずれの方式も空気の圧力で制御するため、運転台に近い車両と遠い車両とではブレーキの掛かる時間にタイムラグが発生してしまうという欠点があります。これは編成が長くなるほど問題になります。そこで、各車両に電気で動作する電磁弁を搭載し、運転台からの直通管/ブレーキ管の圧力の変化を、各車両の直通管やブレーキ管へ反映する方式が考案されました。これが、それぞれ、電磁直通ブレーキ電磁自動ブレーキです。

ただし、各車両の直通管やブレーキ管はつながっていて、基本的な構造は直通ブレーキ/自動ブレーキと同様です。つまり、直通ブレーキ/自動ブレーキに電磁弁を搭載して、直通管やブレーキ管をゆっくり伝わる圧力の変化を電磁弁によってアシストするようなイメージです。

なお、電磁直通ブレーキは直通ブレーキの重大な問題をそのまま抱えているため、自動ブレーキと併用されるのが一般的です。国鉄などでは、操作性にすぐれて応答性も改善した電磁直通ブレーキと安全な自動ブレーキの組み合わせを採用した例が多いようです。

後者2つは電気を使った電磁弁を併用していますが、基本的には運転台から空気でブレーキの指令をだしているので、前者2つも含めて空気指令式ブレーキに分類されます。

電磁直通ブレーキ/電磁自動ブレーキともに、運転台にある弁で圧力を調整するという方法には変わりなく、その部分でのロスがありました。そこで運転台からの電気指令で直接各車両の電磁弁を動作させる方式が考えられました。これが電気指令式電磁直通ブレーキです。

名前の通り各車両の構造は電磁直通ブレーキを踏襲していますが、自動ブレーキと同等の機能を電気的に搭載しています。(先頭車両から最後尾まで電線を往復させて普段は電圧をかけることで、列車分離したときに線が切れて電気が帰ってこなくなることでそれを検知し、各車に空気管の圧力の低下を検知する装置を搭載して併用することで実現)。

なお、この方式は名前からわかるように電気指令式ブレーキに分類されます。ただし、指令は電気ですがブレーキ自体は空気の力を使っているので空気ブレーキには変わりありません。電気指令式ブレーキはブレーキを操作するハンドルに空気を扱う弁が必要ないため、マスコンと呼ばれるモーターを操作するハンドル(車のアクセルに相当)とブレーキを操作するハンドルを一体化することが可能になりました。

回生ブレーキ

自転車のライトは発電式のものが多いと思います(特にママチャリに多い)。夜になって電気をつけると変な機械が前輪に押し当てられてガリガリと発電を始めます。この発電機を使うとすこーしですけど自転車をこぐのが大変になると思います。こぐのをやめて止まるまでの時間も短くなりますよね?じゃぁもっともっと大きくて強力な発電機をつければブレーキとして使えるんじゃないですか!というのが原理です。

ところでこの発電機って中身なんだか知っていますか。そりゃ発電機でしょう?まぁ発電機なんですがあれってモーターと同じものなんです。試しにモーターの電極にマメ電球をつけてモーターを手で凄い勢いでまわしてみるとマメ電球が光ります。

ということはモーターは電気を流すと回転するし、外部から回転させてあげれば発電するというコトです。つまり回生ブレーキとは、うまいことして電車が停止するときにモーターから発電される電気を架線に戻して、電力を必要とする別の電車に使ってもらう仕組みということなのです。

前項の電気指令式電磁直通ブレーキで空気ブレーキをお話しましたが、こちらは電気の力でブレーキをかけていることから電気ブレーキに分類されます。ちなみにこの回生ブレーキは電車だけでなく自動車でも使われている技術だそうです。