『直流と交流』

はじめに

文中に交流だの直流だのという用語が飛び交って、電気に詳しくない人はサッパリだと思います。まぁ電車について興味があるのならば電気について少し知識を深めてもいいかなぁって思います。

直流と交流ってなんなのさ?

電気には交流と直流ってのがあります。交流をAC=Alternating Currentと呼び直流をDC=Direct currentと呼びます。身近な例としては、電池が直流で家庭用のコンセントから出てるのが交流です。直流は一定の電圧、例えば乾電池ならば1.5Vを出します。交流は周期的な変化をする電圧、例えば家庭用コンセントならば144Vから-144Vまでの間を一秒間に何十回って繰り返すのです。あれ?コンセントって100Vじゃなかったけ?って思うかもしれませんが、144Vから0Vまで行く間に100V以下の状態もあるので平均すると100V相当になるっていうことです(波なので単純に足して2で割るわけではないから平均して77Vになったりはしない)。ちなみに符号がマイナスになったりするので平均すると0Vになるような気もしますが、電圧がマイナスになるということは電流が逆に流れるだけで交流用の機器ならば電気的エネルギーとして使えるので符号は気にしなくていいです。

さて、で、交流と直流ってのはどっちがいいのかなって考えると、両者とも良いところと悪いところがあるのですが機械を動かすには直流の方が向いている事が多いようです。ではどうして家庭用電源は交流かというと、電気を遠くまで送るのに交流の方が効率が良いとか、ムダを少なく必要な電圧を簡単に作れるとか、交流から直流への変換は簡単(例えばACアダプタとか)とかいう利点があるからなのです。

電車の使う電気

電車の架線から送られてくる電気は直流が多いですが交流の場合もあります(一部だけ交流ってのもあり)。田園都市線は全線直流なので当然東急8500系は直流で動いていることになります。ちなみに直流1500Vで乾電池を約1000個で電車が動くってことになりますね(すぐに使い切るでしょうけど)。

でも蛍光灯などは一般的な交流用のものを使っています。1500Vで動く特注品を使うのもナンセンスですし(蛍光灯なんて消耗品だから価格が高いのは致命的)、電圧が高すぎて効率が悪くなりそうです。ですから、東急8500系に限らず一般的な電車は直流を交流に変換する装置を使って交流の電気を得ているのです。こうして得られた交流の電気は蛍光灯やクーラーなどの交流機器のほかに、電圧の低めの直流の電気を生成するのに使われます(交流はムダをすくなく必要な電圧を作れる上に交流から直流への変換は簡単なので)。

電動発電機と静止型インバータ

電車で直流を交流に変換する方法は、主に電動発電機を使う方法と静止型インバータを使う方法があります。電動発電機(MG=Motor Generator)は、要するに直流モーターで交流の発電機を動かして発電しているのです。でもこれってなんとなくムダが多いですよね。だって電気から動力に変えて再び電気に戻しているわけですから。

静止型インバーター(SIV=Static Inverter)は直流の電気を交流の電気に変換する装置を使って直接変換する方法です。静止型っていうくらいで電動発電機に対して動く部分がないので静かで消耗しずらいという利点があります(見た目は簡単そうですが、最近の半導体技術をもって実現したもので、だからこそ交流から直流に簡単に変換できるのは交流の利点となっている)。

東急8500系では当初から電車の制御や蛍光灯に使う電力は静止型インバータを採用していましたが、この静止型インバータは大容量のものではないのでクーラーを使うとなると足りなくなり、クーラー用には電動発動機を別途用意していました。8611F編成以降には電動発動機の代わりに大容量の静止型インバータを搭載しています。

実はこの大容量の静止型インバータの開発が間に合わなくって8900型は後から作ることになり、先に8800型を作って車両数をまかなったっていうお話があります。ってことは8900型が登場するまではその編成ではクーラーが使えなかったハズだと思います。まぁすぐに8900型が投入されたので問題にはならなかったみたいですけれども。ちなみに現在では電動発電機を使った8900型は8605F以前の編成に纏められて8606F以降は静止型インバータを搭載したものとなっています。