拝啓MOメーカー様

はじめに

2006年に、徐々にマイナー規格になりつつあったMOについて、それを救うべくあれこれ書いたものです。現状をみると私の願いも叶わず、すでにメジャー規格から転落してしまったと言ってもいい状況です。

拝啓MOメーカー様 (1) 2006年03月19日

今回は気分転換にMOのお話をしたいと思います。

先日、最後までMOで運用していたデータやバックアップなどのディスクをDVD-RAMに移行しました。DVD-RAMを導入してからデータの多い画像系のバックアップから徐々に移行していき、最後までMOで残っていたモノでしたが、これで私のMO利用が完全にDVD-RAMに取って代わられてしまいました。

MOのシェアは店のメディアやドライブの売り場の割合を見る限り、我が家でのMOと同じように減っているように思えます。MOはDVD-RAMに比べて容量も少なく単位容量あたりの価格も高いです。さらにUSBメモリよりも大きく動作も低速です。この結果データの保存という面ではDVD-RAMに、リムーバブルディスクとしてはUSBメモリによって駆逐されてしまったということだと思います。

ただ、私が思うにこれらのメディアの性能上の問題というよりも、MOを牽引するメーカーの製品戦略の失敗によるものだと思うのです。

MOドライブを見ると、大部分がUSBタイプの外付けドライブで、半数くらいがUSBから電源を供給してもらうポータブルタイプです。同じグレードで対応しているメディアの最大容量が640MBのものと1.3GBのものがあり、さらに書き込み速度の差によってグレードの差別化をしています。

MOは読み込みにも書き込みにも専用ドライブが必要になりますが、DVD-RAMに比べてメディアがコンパクトである点を活かして、ドライブ自体をポータブル(持ち歩き)してもらおうというワケです。さらにCDやDVDに比べて書き込み速度が若干速いので高速化を目指し、USBメモリやCD-Rに比べて容量が大きいことをウリにしようとメーカーは考えたようです。

しかし、DVD-RAMに比べて小さくてもUSBメモリと比較してしまえば、ドライブ自体を持ち運ぶなんてナンセンス極まりないですし、動作速度もメモリとは比較になりません。USBメモリに比べて容量では有利ですが、一般人が持ち運ぶデータはせいぜい数メガバイトのオーダーで、多くても100メガもあれば事足りるでしょう。USBメモリが安価に手に入る時点で、すでにMOをリムーバブル用途への利用は絶望的と言えるのです。

となると、バックアップなどのデータ保存用途にカケることになります。実は、DVD-RAMに比べて容量面では確かに不利になりますが、ここにMOの特性上の最大の利点があるのです。それは信頼性です。

DVD-RAMの書き換え可能回数は10万回程度、コンパクトフラッシュでも30万回程度ですが、MOドライブは1000万回程度と文字通り桁違いの信頼性を誇ります。磁気に弱いフロッピーや光に弱いCD-Rなどは言うに及ばずです。

また、容量が少ないのは信頼性の上では逆に利点にもなります。物理的なデータの消失というのは意外に少なく、メディア自体を無くす、どこに保存したのか探せなくなる、など人為的なものの方が多いと言われています。みなさんも心当たりがあるのではないかと思われます。

MOは容量が少ないですがメディアも比較的コンパクトです。複数のメディアに分けて保存すれば、データの管理も楽ですし、万が一紛失したり破損しても失うデータが少なくて済むというわけです。

さて、この信頼性という最大にして最高の利点をメーカーは全く活かしていないどころか、逆に無くしてしまっているのです。

先ほどのメーカーが販売しているMOドライブの状況を書きましたが、約半数を占めるポータブルタイプのドライブはUSBからの電源供給のみで動作しますが、電源供給が安定しないので書き込みエラーが発生する確率が高くなりますし、全体的に動作が不安定になります。おまけに、グレードが高くなるほど高速書き込みを行うようになり、これも信頼性の面ではマイナス要素になりかねません。

つまり、信頼性を最大の利点とすべきMOドライブの主力に信頼性が低くなるような機軸を使っているという状況なのです。

拝啓MOメーカー様 (2) 2006年03月20日

MOはポータブル用途を諦めてバックアップなどデータ保存用途に注力して、信頼性をウリにすべきというのが前回のあらすじです。

さて、ではどういう製品になるかというと、まず持ち運ぶ必要がないので内蔵の選択肢に入ります。内蔵と外付けが半々となり、外付けタイプは電源がACアダプタか内蔵電源タイプとしてUSB供給での駆動は避けます。MOはドライブ自体も小型化できるので外付けは特に小さめの方が有利ですが、持ち運びするわけではないのでムリな小型化は必要ないでしょう。

もう一つ、MOの特徴の一つとして下位互換があるということがあげられます。つまり、初期の128MBしか対応していないドライブでは128MBのディスクでしか読み書きできませんが、それより新しいドライブでも128MBのディスクの読み書きもでき、最新のドライブで書き込んだ128MBのディスクでも、当然初期の128MBしか対応していないドライブでも読み書きできるというものです。230MB以上のディスクにおいても同様のことが言えて、要するに対応している最大容量以下ならば読み書きに対応しているということです。

実はMO以外にこれができるメディアは意外に少なく、MO互換性の高いメディアとしての利点もあるのですが、メーカーはこれを過信してか、同じグレードでも640MBと1.3GB(モノによっては2.3GBタイプまである)の2種類のドライブをラインナップに加えています。

つまり大容量タイプが必要ならば1.3GBを、そこまで必要でなければ640MBタイプを選べるというわけです。1.3GBタイプを買えば640MBも読み書きできるので安心なわけですが、これは1.3GBの普及を大きく妨げる結果になりかねません。

1.3GBと640MBの両方を選べるならば、640MBで良いという人もいるわけで、その人たちは1.3GBのメディアは使えません。使えない人が多いメディアは高騰してしまいます。メディアが高ければ使い手は、640MBディスク2枚にわけるなどの工夫をしたり、DVD-RAMなどの別の大容量ディスクに流れてしまうのです。

つまり、本気で1.3GBを普及させる気があるのであれば、開発当初ならばいざ知らず、技術的に成熟したのであれば中途半端にラインナップを揃えずに最新機種は1.3GBに揃えて1.3GBの普及に注力すべきところなのです。640MBで済む人でも1.3GBでは困る人はいません。あとは価格をなんとかすべきところですが、1.3GBタイプと640MBタイプでそこまで価格差が開く要因もないと思うのです。

次回あたりはターゲットユーザーを考えながら具体的な製品を煮詰めて見ましょう。

拝啓MOメーカー様 (3) 2006年03月22日

さてさて、前回まででMOドライブ製品についてあれこれ批評しました。すでにMOという規格は一般向けではジリ貧状態で絶滅危惧種に指定されてしまいます。すでにPDやJAZ、ZIPなど多くのメディアが絶滅していきました。。。

今まで述べたようにMOは信頼性という面では未だに最も優れているメディアで、今後のメーカーの対応次第ではまだまだ生かせる規格だと思うのです。では、具体的にどのような製品を展開すべきであるかを考えてみましょう。

前回までのお話から高い信頼性が生かせるデータのバックアップ用としての活用が期待できます。バックアップといってもサーバーのデータ全てをバックアップするような用途ではありません、これらの容量が膨大で定期的に全部のバックアップをとるような用途にはテープメディアやHDDでのミラーリングで対応するのがベストです。

ここでいうデータのバックアップは、一般的なメールや文書データのうち大切なものを手動で保存、バックアップするような用途です。個人でもデジカメで撮った旅行写真や会社の大事な書類など、消えては困るようなデータの保存には最適ですし、プロのDTMやDTPなどの作家さんであれば、仕事の大切なデータの保存には信頼性の高いメディアが不可欠です。また、これらのデータはシステム全体とは異なり比較的容量の少ないMOでも複数枚に整理して分ければ充分に入る大きさですからMOメディアの活用が期待できるのです。

さて、このような用途向けに製品ではどのようなものが良いか。まず、持ち運ぶ必要がないので内蔵を選択肢に入れて内蔵と外付けが半々となり、外付けタイプは電源がACアダプタか内蔵電源タイプとして、USB供給での駆動は避けます。メディアが小さいMOはドライブ自体も小型化できるので外付けは特に小さめの方が有利ですが、持ち運びするわけではないのでムリな小型化は必要ありません。

プロ用(業務用ではなくあくまで一般的な商品のうち)のより信頼性の高い(作りがしっかりしている)モデルと一般用の2種類のラインナップがあれば充分です。ただでさえシェアが少なくなっているのに、ラインナップをいたずらに増やすことはドライブの価格高騰や消費者の混乱などの恐れがあるので避けるべきでしょう。

価格は今の2万円前後が中心でも、それほど問題にはならないと思います。無理な価格ダウンは品質の低下に繋がり本末転倒です。大切なデータの為を考えれば多少高くても購入する消費者は大勢います。安ければ買うくらいの人には、初めからMOは向いていません。

また、MOの利点の啓蒙活動も忘れてはいけません。放っておいても売れていく安い速い旨い規格と異なり、MOは品質で勝負する規格ですから、利点というものをしっかりとポスターなりホームページなりドライブのパッケージなりで示して、MOの利点を消費者に理解してもらう必要があります。

今後Blu-rayやHD DVDなどの新しい規格が登場しますが、信頼性という面ではMOはまだまだ勝負になります。使い勝手の面でもフロッピー(今ならフラッシュメモリの方が分かりやすい?)と同じように扱えるMOが、充分な性能を持ちながら消えてゆくのはもったいないと思ってならないのです。

MOメーカーがんばれ!