ウォークマンの逆襲

はじめに

2006年に、Sonyのウォークマンの復権を目指して書いたものです。AppleのiPodを手本に、転送ソフトウェアであるSonicStageの使い勝手などを含めてあれこれお話しています。

ウォークマンの逆襲(1) 2006年05月16日

実は私はSONYファンだったりして、ノートパソコンはもちろんVAIOです。カセットテープのウォークマンを通学の友として愛用していて、今でもMD生誕10周年記念のNetMDを愛用しています。そんなSONYの牙城でもあったハズの携帯オーディオ市場が、陰りどころか落城してしまったような状況でファンとしてはもっと頑張って欲しいところです。今回はこの携帯オーディオについて考えてみてSONYさんにゼヒとも頑張っていただきましょう。

今や携帯オーディオとかMP3プレーヤーと言ったら、もはやiPodとその他な状況でかつてのウォークマン以上の独占ップりを見せています。最新のBCNランキングを覗いてみれば1位から9位までiPodで2桁目でやっと我らがSONYがランクインするありさまです。

なんで、ここまで差がつけられてしまったのでしょうか?巷では、SONYはMDに拘りすぎていて次世代(フラッシュメモリやHDD)の携帯オーディオへの参入が遅すぎたという意見もちらほらと聞かれます。

iPodが登場したのは2001年なのですが、それからさかのぼること2年も前の1999年にSONYはフラッシュメモリのプレーヤー『NW-MS7』を発売しているのです。ですから、次世代への参入はかなり前から積極的に行っていたと言えるのです。

いや、まてまて、NW-MS7はフラッシュメモリといえどもメモリースティックを採用していてMDとおなじカートリッジ式の概念から抜け出してはいなかったのがiPodよりも遅れていたという意見もあるかもしれません。

そんな彼方のためにSONYは2000年に内蔵フラッシュメモリの『NW-E3』を発売しています。つまりiPod nanoと同様のハードウェア概念をSONYはiPod登場以前からすでに実現していたのです。

しかし、歴史がどうであれ結果として現在の状況はBCNが示した通りなわけで、SONYは完全にAPPLEの後塵を拝しているワケです。では何故か?ハードウェアが先行していたのにもかかわらず負けたとなれば、あとはソフトウェアが悪かったのに他ならないでしょう。

いや、もちろん発売時期や値段、デザインなんかも多いに関係してくるとは思います。それでも発売時期が早すぎたのであれば今でも差が開いている説明がつきませんし、ウォークマン帝国を築いたSONYのデザインが好みに差こそあれ大敗を帰する原因にはならないでしょう。

実は上の2つの製品、いやその後もかなり長い間SONYが拘り続けたのが音楽ファイルのフォーマットにATRACの採用です。ATRACはMDの為に開発されたSONYの誇る圧縮フォーマットですが、MDのようなクローズな世界ならいざ知らず、パソコン上で自在に管理して手軽に楽しむ為には独自規格のフォーマットはあまりにも大きな壁だったに違いありません。ましてや無印Pentiumあたりで何十分もかけてエンコードするような時代の代物、そうそうウォークマンの為だけに何曲もエンコードするわけにも行かなかったと思います。

SONYがATRACに拘り続けた理由は、おそらく自社でレコード部門を持っていて、著作権にルーズなMP3を手放しに採用できなかったという理由が大きかったと思いますが、その他にもいろいろ画策があったのかもしれません。ここで過去の詮索は無意味です。では今後はどうすれば良いのかがポイントになります。

長くなってきたので続きは次回ということで。

ウォークマンの逆襲(2) 2006年05月16日

前回ウォークマンの敗因がATRACに拘ったのが原因という分析しました。今回は、なんとかしてiPodに奪われたシェアを回復し、再びこの広い銀河の携帯オーディオのシェアを、ウォークマンの手中に収めることを画策しましょう。

さて、原因がATRACならMP3対応にすればイイやん、みたいな安易な解決方法ではすでにiPodに許したシェアの回復は難しいでしょう。原因の根本は独自規格による汎用性の低下と著作権保護にまつわるユーザーへの不便を強いる点です。

iPodの起爆剤の1つとして暗躍しているのが、無料で使える大変便利なソフトであるiTunesです。このiTunesはCDからMP3を作る機能を中心に、パソコンで音楽を扱うための一通りの機能がついていて、さらに直感的に扱うことができるので多くの人に愛用されています。

このiTunesは、従来だったら有料で買うようなオーディオプレーヤーソフトが無料で使えるワケで爆発的に人気がでるのもうなずけます。さらにこのiTunesは簡単な操作でiPodへの音楽転送機能がついているのがポイントです。ここで重要なのはAppleにとってiTunesはiPodのためのソフトであり、iPodへの音楽転送機能がもっとも重要な機能のハズですがそれを使わない人にとっても利用価値が充分にあるのがiTunesが広まった秘訣なのは言うまでもありません。

iPodをもっていないけれどもiTunesを使っている多くの人たちが、仮に携帯オーディオプレーヤーを買おうと思い立ったときに、iTunesが優しく背中を押してくれるのは言うまでもありません、iPodの方へと。

SONYもウォークマン用にSonicStageというソフトを開発しています。基本的にウォークマン専用で、仮に無料でだれでも使うことができたとしても、少なくても私はこれを活用する気にはなれない程度の使い勝手だと思います。

そしてSonicStageはなによりもパソコン上の音楽をSonicStageの下に管理するという色が濃いのです。SonicStageはウォークマンに音楽を転送するのに必要ですが、ユーザーが必ずしも音楽の管理から再生や録音をすべてSonicStageにやらせたいと思うとは限りません。音楽のエンコードには別のソフトを使いたいと考える人もいれば、音楽データの管理は自分でやりたいと考えるひともいるでしょう。そんなユーザーの要望に、 iTunesは可能でもSonicStageは答えてはくれないのです。

SonicStageにも褒められる点もあります。私のNetMDは今から4年近く前に買ったもので、当時付属してきたSonicStageは1.xで使い勝手はそれはもぅ。。。でした。その後着実にバージョンアップを加え今の最新版は3.4で近く4.0がリリースされるようですが、つねに旧機種である私のMDにも対応してくれて、(ハードウェア的制約によって)すべてではないにしろ新機能の恩恵にも与っています。ハードウェアの付属ソフトでこれほどサポートの良いものはそうはないと思います。

(そうそう、個人的には新しいウォークマンにConnectPlayerなる別ソフトが搭載された時には、ついにSonicStageの開発打ち切りかと心配したましたが、どうやらSonicStage開発勢の長年に渡る地道な努力の前に、逆にConnectPlayerがSonicStageに吸収される方向になったようで一安心。)

しかし、バージョンアップを繰り返しかなり使い勝手が改善された今でもやはりSonicStageがユーザーの音楽ファイルを管理下に置こうとする方向性は変わっていないように思います。すでにMP3への対応も行い、ネット販売など特別なものを除いて著作権的に管理できる状況ではないこの期に及んで、ユーザーへの不自由を強いるようではiPod+iTunesにウォークマン+SonicStageでは勝てないと思うのです。

次回はSonicStageへ、期待から願望、要望そのへんを織り交ぜてお話しようと思います。

ウォークマンの逆襲(3) 2006年05月17日

前回まででiTunesを持ち上げた上で、SonicStageの欠点をブツクサと書いたのでここではSonicStageへの要望やら願望やらを織り交ぜて次期SonicStageの進化に多いに期待していきましょう。

まず、基本的にATRACというフォーマットは独自フォーマットなので少なくともこれを主体にするのは止めるべきでしょう。私の持っているのはNetMDなので最終的にはATRACに変換されるのは致し方ないですが、何でもかんでもATRACで保存されて著作権がらみの保護でバックアップも簡単にとれないようでは困ります。

ネット販売などが徐々に広がりを見せているようですが、こちらは著作権保護が必要となると思いますが、仮にこのような場合でもATRACはどうかと思います。同じく著作権保護に対応したフォーマットとしてiTunesのAACやWindows MeidaのWMAなどがありますが、まぁ私の独断と偏見を加味しなくてもシェアを考えればWMAが汎用性が高いのは目に見えてます。なにせSonicStageにLinuxやMac OS版は存在しないのですから。

iTunesはAACというフォーマットにも対応していて著作権保護も可能なフォーマットとしてはこちらを利用します。ですからSonicStageでATRACを使ってもいいじゃないか?と思うもごもっとも。しかし、現状ではウォークマンはシェアを取り返しに行かねばならないワケでiTunesと同じ程度のことをやってもシェアの差は埋まらないでしょう。相手よりよりよくするのがポイントです。

どうしてもATRACでいくというのであれば、ATRACを他のプレーヤーで再生するためのコーディックも添付すべきです。SonicStageでしか再生できないフォーマットでは誰も使いたがらないのも当然です。本来であればフォーマット形式を公開してWinAmpなど有名なプレーヤーで再生できるようにするのがベストですが、できないのであれば少なくともWindow用のコーディックがさえあれば、かなり多くのソフトで再生可能となると思います。

私はSonicStageの曲管理の方式が3.xあたりで変わった後は、使い勝手がわるいと思っているのですがこの辺は好みが分かれるところだと思うのでここでの議論は置いておいて、この折角管理したデータベースですが、実はMicrosoft Acsecc形式になっていて汎用性の面では比較的高いのです。

ですが、せっかく汎用性を高くするのであればXMLあたりを使った上で仕様を(著作権保護のあたりを除いて)オープンにしてみたらどうでしょうか?フリーウェアはもちろんのことメジャーなソフトでもSonicStageのプレイリスト対応などと連携が生まれる可能性が充分にあると思います。

チェックインとチェックアウトの概念も使い勝手を損ねないように限りなく制限を撤廃します。例えば、『MP3ならば自由に可能、著作権保護がかかったファイルならば同じパソコンでないとチェックインができない』程度ならばユーザーが不満に思える程の制限にはなりませんし、すくなくとも音楽ファイルの違法コピーが現状よりも悪化することはないでしょう。

MP3ならばフラッシュメモリにでも入れれば、いくらでもコピーできるわけですから携帯オーディオだけ制限をかけるのはナンセンスです。著作権保護がかかったファイルもいくらプレーヤーにいくつもコピーできたからといって別のPCに書き戻せない状況ならば、広がるとしてもプレーヤーのやりとりができる友人知人程度、昔のレコードをカセットに録るのと規模はかわらないでしょう。そもそもメモリを内蔵している以上、最終的には消すことになるでしょうから、その人にとって数回聞いただけで不要になる程度の曲は保護したところで、その人がお金を払って買うとは思えません。

これからのデジタル音楽は著作権保護と使い勝手をいかに天秤にかけるかがポイントになると思うのです。

さて、長くなってきたのでつづきは次回ということで。

ウォークマンの逆襲(4) 2006年05月17日

前回、SonicStageの改善要望として使い勝手と汎用性などを議論してきました。こんどはハードウェアを絡めた音質などについてを中心にお話ししましょう。

最近リリースされたSonicStageでは高音質のMP3への対応などがなされていました。今後携帯オーディオの容量が増加するのは間違いないでしょうから、その大容量をどう使うかがポイントになります。もちろん、さらに沢山の曲を入れて持ち歩くのもイイでしょうけれども、同じ曲数くらいに抑えてより高音質に楽しみたいというニーズもあるでしょう。曲の転送も高速に手軽にできるようになった今ならなおさらです。

ここには大きな可能性があります。現在でも音響メーカーとしてSONYの音質には(好き嫌いは別として)定評があります。iPodに関しては音質についてあまり評判を聞かないところを見ると、音質がウリでないとみて良いのでしょう。ならばこれこそSONYのアドバンテージであることは言うまでもありません。

とはいえ、単純にハードウェアの作りに工夫を凝らし高音質にしました(当社従来比)、ではいささかインパクトに欠けます。
そこで考えられるのが可逆圧縮の対応です。まぁ無圧縮でもいいのですが容量を考えると可逆圧縮への対応は有効です。高音質な作りのプレーヤーで可逆圧縮対応とくれば音質に拘る消費者でなくても食指が動くところでしょう。

あとバッテリーの持続時間もウォークマンで培ってきたノウハウが存分に生かせる分野。iPodの弱点ともいえるバッテリーの持ちは携帯オーディオ機器としては購入ポイントの1つとなるのでこのアドバンテージは大きいです。

デザインは好みが分かれるところですが、私はシンプルなAppleのデザインは優れていると思いますが、SONYのデザインも好きです。大きさや重さは、すでに現状で不必要なほどに小型化しているのでとくに気にするところではないと思います。わずか1mmや1gの世界最小の為に何千円もかけるくらいなら安くしろ、というのが本音です。

本体のユーザーインターフェースもデザイン同様に好みが分かれるところですが、実のところiPodの操作が格別に良いという評判もそれほど多くないようで、残念ながらSONYのウォークマンの方も右に同じなので両者で切磋琢磨していただければ消費者にとってはプラスに違い有りません。

まぁ、そんなこんなでウォークマンの復権についてあれやこれやと要望と願望を交えてだらだらと書きましたが、改めて考えるとやはりMDまで携帯オーディオは『いわゆるオーディオ機器』だったのに対してフラッシュメモリやHDDを使った携帯オーディオは『パソコンの周辺機器』に近い存在だと思います。

オーディオ機器はカセットにしてもMDにしても、それほど多くない業界数社で決めた規格で言ってみればクローズな世界です。それに対してパソコンの世界はPC/AT互換機に象徴されるように、汎用性とオープンな仕様の世界だと思います。

コンピュータの周辺機器と考えればSONYよりもAppleの方が老舗です。SONYは、そのことをよく把握した上でアグレッシブにウォークマンの復権に力を注いで欲しいと思うのです。