ATOMのプロセッサファミリ。

ATOMのプロセッサファミリ。

ソフトウェアネタが多かったですが、ここでちょっとハードウェアネタを。ATOMについてです。

ネットブックの爆発的な人気を中心に、ATOMという名称が一般的なユーザーにも浸透してきました。性能については他のレビュアーがあれこれ議論しているようですが、私はアレはアレで良い製品じゃないかなと思います。

パソコンに限らずお金を払えば性能が良くなるもので、必要な性能とお金のバランスを天秤にかけるわけですが、現在パソコンを使う多くの人が『ネットとオフィスが使えればいいんじゃないかな』という人達のように思います。私の家族もそうです。もちろん、昨今はネットの内容も充実してきておりATOMでは処理能力が不足気味なときもあるかもしれませんが、『使えない』と『使える』は大違いですが、『快適』と『とりあえず使える』は気にしない人も多いでしょう。一日に1時間くらいしか使わないパソコンにお金をかけるくらいならば、洋服や食事に使った方がいいというのもアリだと思うのです。

話を戻して、プロセッサファミリというのがあります。ファミリですから家族ですね。

プロセッサには、プロセッサファミリ、モデル、ステップという3つのコードがあります。

ステップの例えが難しいのですが、コインで例えるならば、『円』というファミリの中に、『10円玉』というモデルがあります。同じ10円でも、よ~く見るとギザギザのついている古い10円と、そうでない10円がありますが、これがステップに相当するんではないでしょうか。プロセッサも同じで、同じようなプロセッサでも作られた年代によって細かい改良が加えられていて、それがステップという数値で表示されます。

さて、プロセッサファミリですが、Core DuoとCore 2 Duoは同じファミリっぽいですよね。Coreファミリですから。実際に、両方とも『6』というプロセッサファミリです。

Pentium 4やPentium Dは違いそうです。これも正解で『F』というプロセッサファミリです。ちなみに『F』というのは16進法で『15』を表しています。はて、なんで新しいハズの『Coreシリーズ』が数値が小さいのでしょうか?コンピュータの世界は一般的に数字が大きいほど新しくて高性能なものです。えっ、Windows 7よりもWindows 2000の方が新しくて高性能かって?ハハハ。

それはさておき、『Coreシリーズ』は名前が変わっているもので従来の『Pentium』シリーズから刷新されて、まったく新しく作られているような雰囲気ですが、実はモバイル向けの『Pentium M』をベースに作られています。『Core Duo/Solo』がモバイル向けだったことからも、なんとなく察しがつくかもしれません。

ですから、『Pentium M』のプロセッサファミリも『6』ということになりますね(本来の流れは逆だけど)。

『Pentium M』というプロセッサはどんなものなのでしょうか?

これも、Intelが久方ぶりにモバイル専用に設計したCPUで、Pentium 4とは全く別の新たなアーキテクチャ(内部の仕組み)をもっていると説明されていました。が、中身を紐解くと、『Pentium M』は『Pentium III』をベースに、『Pentium III』のコア(中心部分)に『Pentium 4』で搭載された各種機能を搭載させたものというのが通説です。

もともと、Pentium 4は消費電力と発熱でモバイル向けには向いていなかったのでモバイル向けには『Pentium III』が採用されていました。ただ、CPUの動作クロックは向上できても、チップセットとの接続バス(FSB)が古いままで、かつ対応チップセットも古かったので、DDRメモリやUSB2.0への対応が遅れてしまいました。ですから、コアは『Pentium III」相当のままで、FSBや省電力機能、SSE2命令(マルチメディア用拡張命令)等をPentium 4相当にして、Pentium 4対応の最新チップセットを使えるようにしたものが『Pentium M』だったというわけです。

ここで、『通説』と書いたのは、Intelが公式にそう発表しているわけではないからです。

でも、Intelのマーケティングの人達ががいくら『全く新しい製品』と言っても、技術屋は正直です。『Pentium M』のプロセッサファミリである『6』は、実は『Pentium III』と同じだったというわけです。つまり、技術屋さんはマーケティングの人の見えないところ(?)で『Pentium M』は『Pentium III』の仲間ですよ~と暴露していたというわけです。

さて、さらに続きます。この『Pentium III』は、前作である『Pentium II』と共に、『Pentium Pro』と同じアーキテクチャ(内部の仕組み)であることが公表されています。これを『P6アーキテクチャ』と呼ぶのですが、おや、ここで『6』という数字がでてきましたね。

『P6』は『Pentium Pro』の開発コードネーム、インテルが現在Intel系プロセッサの基礎となる『8086』プロセッサを作ってから『6世代目』にあたるプロセッサになるのです。だから、プロセッサファミリが『6』なのです。ちなみに、5世代目は『Pentium』プロセッサで、プロセッサファミリは当然『5』です。

余談ですが、『Pentium』という単語はIntelの作った造語なのですが、『ペンタ』はラテン語で『5』を意味します。ペンタゴンやペンタックスなど聞き覚えがあるものもあるでしょう。ペンタゴンは建物が五角形だったから、ペンタックスはもともとは製品名で、五角プリズムを初めて採用したカメラだからです。

さて、今回の本題とは大きく外れてきましたが、ここでもう一つ余談を。

Pentium Pro、Pentium II、Pentium IIIが全部同じ『6』ファミリなのはイイとして、じゃぁ『Pentium 4』はなんで『7』じゃないのかなぁ?ということになりますね。

実は7世代目にあたる『P7』という開発コードネームの製品が存在しました。

と書くと、いかにも開発に失敗してキャンセルされたように見えますが、ちゃんと発売されていますし、今でも後継製品が売られています。実はこれItaniumのことです。

ええ、すっかり存在感がなくなりましたが、64bit命令であるIA64を引っさげて登場したものの、後続のAthlon 64が掲げるAMD64(x64)命令と争って破れ、闇に葬られてしまった可愛そうなCPUです。Intelとしては、いつかItaniumのIA64こそがPentiumの正当な後継者となる日がくることを夢見て、『P8』の座を残しておいて、Pentium 4に『F』という名前を付けたのかも知れません。ちなみに『F』というのは、16進数で『15』、一桁で表せられる最大の数です。

さて、ここからが本題ですw

ATOMですが、内部的にはどちらかというと『Pentium』に近い構造になっています。というのも、処理の仕方に『インオーダー』という方式を使っているからです。『Pentium Pro』以降はみんな、『アウトオブオーダー』方式です。

難しい説明は割愛して(私も分かりませんw)、単純に言えば、効率的に処理できるように並べ替えて効率良く処理をするのが『アウトオブオーダー』方式です。それに対して、来た順番に処理するのが『インオーダー』方式です。『アウトオブオーダー』方式は効率良く処理ができるので性能は上がりますが、並べ替えをする機能がある分プロセッサが大きくなり、値段も消費電力も上がります。『インオーダー』方式はその反対です。

ATOMは、消費電力を下げること優先して『インオーダー』方式を採用して、プロセッサを小さくし、消費電力を小さくしました。それと同時に値段も安く作れるようになったので、ネットブックのような格安のパソコンの登場にも繋がりました。もちろん、同じ周波数であれば、効率の良い『アウトオブオーダー』方式をとっている『Core系』のCPUよりも性能は悪くなります。

そろそろ核心に触れましょう。では、ATOMのプロセッサファミリは何?

私は『5』かなぁと思いました。なぜって、どちらかというと内部構造が『Pentium』プロセッサに近いからです。または、新たなプロセッサとして『E』あたりの可能性も考えていました。

CPU-Zというソフトで見てみたところです。青文字の上から6行目くらいにかかれているファミリの項目。

イメージ

なんと、『6』でした。これは正直言って想定外です。

プロセッサファミリ『6』は、『P6アーキテクチャ』の仲間である証。そして『P6アーキテクチャ』の最大の特徴は『アウトオブオーダー』等に代表される、内部で効率的に処理ができるように変換するところだと思っていたからです。

Intelの技術屋がATOMのプロセッサファミリ『6』に込めた思いはなんなのでしょうか。いずれ分かるのか、はたまた永遠の謎か?

乞うご期待!