ASRock X470 Taichi

ASRock X470 Taichi。

実に9年ぶりにメインマシンを更新して、信頼と実績のSandyBridgeのシステムからZen 2へとアップデートしました。 マザーボードはASRockのX470 Taichiで、ものすごく今更ですが、防備録をかねてレビュー的なものをしたいと思います。

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ASRock X470 Taichi

私はIntel派なのでAMDのプラットホームは3枚目で、1枚目が初のコンシューマ向け64bit CPUのAthlon 64で、2枚目が初のAPUのZacate(E-350)なので、インパクトでいうと今回は比較的おとなしめでしょうか。

ちなみに、第3世代Ryzen(Zen 2)用にはX570という新しいチップセットがリリースされていますが、チップセットにファンがついているため、あえてX470を搭載した前世代のX470 Taichiをチョイスしました。ちなみに、X470は第3世代Ryzen(Zen 2)をサポートしていますが、CPU内蔵のPCI-EがGen4からGen3へ、USB 3.2がGen2からGen 1にスペックダウンします。

チップセットのファンは小さいのでウルサく、しかもCPUクーラーのように交換できることを前提としていないため故障すると面倒で、あまり良い思い出はありません。Athlon 64もnForceというnVIDIA製のチップセットを使っていましたがチップセットファンがウルサく、早々にCPUごと売っぱらった記憶があります。

メーカーのASRockは初めての購入。比較的最近(?)登場したメーカーなので持っていなかったのですが、自作erの皆さんに"変態"と愛される、尖った製品をたくさん送り出しているメーカーなので一度は使ってみたいと思っていました。

余談ですが、心なしかマザーボードメーカーって"A"から始まるところ多くないですかね?ASUSTek、ABIT、Aopen、Albatron、ASRock...しかも面白い製品を作っている率も高いような(笑)

ASRockは変わったマザーボードを作っているイメージでしたが、最近ではオーソドックスなものも手がけており、というか、そっちが主流となっているようで、このASRock X470 TaichiもX470マザーボードの鉄板の一つらしいです。

スペックはオーソドックスですが、基板のデザインは少し変わっていてTaichi(=太極)名前の通り太極をイメージしたデザイン…ではあるのですが、どちらかというと歯車っぽいように見えます。昔はオレンジとか黄緑一色のザ・電子基板というのが普通でしたが、最近のマザーボードはずいぶんとおしゃれになったなと思います。

Taichiシリーズをデザイン面でみると、このマザーボードは第2世代くらいで、第1世代(X370、Z270世代)は白黒のツートンカラーでかなり対極推しでしたが、この第2世代(X470、Z370世代)は対極より歯車が前面に押し出されたデザインになりました。第3世代(X570世代)はほとんど普通なイマドキのマザーボードになってしまったので、この第2世代くらいのデザインが個人的には好きです。

スペック

ASRock X470 Taichiのスペックなんて、そこら中のサイトにたくさんあると思いますが、自己満足も兼ねて先代のSunday Bridgeプラットホームのマザーボードと比較してみます。

  ASRock X470 Taichi Intel DZ68DB
Release 2018 2011
CPU Ryzen Core
Memory DDR4 3200 DDR3 1333
PCI-E (CPU) Gen3 20 Lane Gen2 16 Lane
PCI-E (Chipset) Gen2 x4 1slot, x1 2slot Gen2 x1 2slot
PCI - 3 slot
NVMe 2 slot (Gen3 + Gen2) -
SATA 3 6 + 2(ASMedia) 2
SATA 2 - 4
USB 3.1 2 + 1(ASMedia) -
USB 3.0 10 2(NEC)
LAN 1Gbps (Intel,Controller) 1Gbps (Intel,PHY)
WiFi/Bluetooth 802.11ac + BT4.2 (Intel) -

前のマザーボードの発売から7年間の月日が経っています。人によって感じ方はそれぞれだと思いますが、まぁ順当な進歩といったところだと思います。主なところはメモリの高速化(従来比約2倍)、NVMeの登場(SATA3比較約5倍)、USB 3.1の登場(従来比約2倍)でしょうか。

パソコンの性能がグングン上がっていた時は、性能が3倍くらいにならないと違いを体感できないと言われていました。今は性能向上が鈍化したためあまり言われなくなりましたが、たぶん今でもこの感覚はだいたい合っていると思います。

CPUやメモリもそれなりに性能が向上しましたが、目に見えて違いが分かるのは動画のエンコードにかかる時間くらいで、普段の作業で性能向上を実感できる機会はあまりありません。ですが、ストレージについては体感できるレベルで明らかに速くなったと思います。なので、赤色が好きな某モビルスーツ乗りのごとく、狙うなら3倍です(笑)。

開封の儀?

まず、箱は普通のマザーボードより大きいです。

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ATXのマザーボードはだいたいAmazonの箱より一回り大きいくらいなのが多いので、このASRock X470 Taichiの箱は大きいと思います。デザインもやっぱり対極と歯車です。

とりあえず、CPUとメモリを取り付けてみました。

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チップセットの歯車はヒートシンクの代わりとしても、バックパネル付近やオーディオチップのあたりに余計なプラスチックのカバーがついています。

きっと、"緩衝材"をとりわすれちゃったんだね!ということにして、取り除きました(笑)。

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だいぶ、スッキリとしてマザーボードらしくなりました。

ちなみに、CPUの周りにあるのは電圧レギュレータ(VRM)のヒートシンクなので緩衝材ではありません。オーディオ周りはノイズシールドでも兼ねているのかと思いましたが、ただのプラスチックだったので、たぶん緩衝材です(笑)。

バックパネルや上部の緩衝材を取り外すには、電圧レギュレータのヒートシンクを一旦外す必要があります。電圧レギュレータやチップセットのヒートシンクは柔らかい導熱素材で密着していますが、CPUのグリスのようにくっついているわけではないので、一旦外しても元に戻せるようです。

ただ、しばらく使って熱で溶けたりすると違うかもしれません。いずれも保証外の行為ですので自己責任でお願いします!

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せっかくなので、ヒートシンク類を全部外して、ありのままの姿を見てみることにしてみます。

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マザーボードだけになると少し対極らしさがUPしますね。

Taichiシリーズはミドルレンジの位置づけですが、CPU周りは充実しているのが特徴で、整然と16フェーズの電圧レギュレータが並んでいるのが美しいです。

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もっとも、前のマザーボードがたぶん5フェーズなので、普通に使うにはだいぶオーバースペックな気がしますけどね。

X470(チップセット)

まずチップセットから見ていきたいと思います。というか、最近はメモリコントローラのノースブリッジがCPUに取り込まれた関係で1チップ構成なのでチップ"セット"という言い方もどうかと思いますが。。。

チップセットはAMD X470で第2世代Ryzen用として登場したものですが、第3世代Ryzenもサポートします(うわさでは第4世代Ryzenもサポートするとか)。

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あまり情報が見つけられませんでしたが、"47B2"の"47"がX470でB2ステッピングという意味でしょうか。ちなみに、CPU-Zの情報によるとRev.51だそうです。

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X470はAMDのSocket AM4プラットホームの第2世代のチップセットです。ちょっとここで、AM4のプラットホームのチップセットについて、各世代のフラグシップを比較してみます。

  X570 X470 X370
Release 2019 2018 2017
CPU Ryzen Gen3 Ryzen Gen2 Ryzen Gen1
PCI-E Gen 4 x8 (x16 ※) Gen 2 x8
SATA3 4 (12 ※) 6
USB 3.1 8 2
USB 3.0 - 6
Remarks StoreMI
XFR3 Enhanced
Precision Boost Overdrive
 

※ X570からはPCI-E Gen4 x16がでていますが、このうちx8がフレキシブルになっていて、単純にPCI-E x8として使ったり、x4を使ってSATA3 4ポートにしたりすることができるので最大数の表記が曖昧になります。(なので、全部を最大数で使うことはできません。)

StoreMIは、SSDをHDDのキャッシュとして使う機能で、もともと別の会社が有償で提供していたソフトウェアをAMDが無償でバンドルしたものです。XFR2 EnhancedとPrecision Boost Overdriveは自動ブースト機能で、とくにマルチスレッドを使っている場合に効果があるそうです。ただし、XFR2 Enhancedは第2世代Ryzen以降との組み合わせで使用でき、Precision Boost OverdriveはXつきモデルでのみ有効です。

なお、X570は、搭載されたマザーボードで見るとさらに違いがあります。元々RyzenはIntel系のCPUに比べて、従来はチップセットで提供されているような機能の多くをCPU側に搭載しており、NVMe用PCI-EやUSB、SATAのコントローラも内蔵しています。第3世代Ryzenでは、これらのコントローラも機能強化されているのですが、X470/X370を搭載したマザーボードではそれを活用できないためです。

  Ryzen Gen3
with X570
Ryzen Gen3
with X470
Ryzen Gen3
with X370
PCI-E x16 Gen 4 Gen 3
NVMe x4※ Gen 4 x2
Gen 3 x1
USB 3.1 4 -
USB 3.0 - 4
Remarks

※NVMeはNVMe x4またはNVMe x2+SATA3 2portで使えるようです。SATA3はチップセットでもサポートするので、第1,2世代Ryzenでこの使い方をするシチュエーションはM.2をNVMeではなくSATAで使う場合くらいだと思いますが、第3世代Ryzenの場合はNVMe x4が2つあるので、NVMe x4 + NVMe x2 + SATA3 2portという使い方はアリかもしれません。

というか、NVMe x2をPCI-E Slotとして使えるならば、Micro ATXやMini-ITXくらいだったらチップセットいらないんじゃないでしょうか。。。

ところで、X170とX270は何処いった?と思う方もいるかも知れませんが、第1世代がX370です。X370が登場した当時、ライバルであるIntelのチップセットが200番台だったので妙な対抗心でこういうややこしいことになりました。まぁこの業界ではよくあることです。。。

上の表をみても分かりますが、ぶっちゃけ、X370とX470はほとんど変わりません。正直、物理的なモノ(ダイ)に違いがあるかどうかも怪しいです。

なお、Ryzenは第2世代でTDP 105Wの製品が追加されたので、搭載されたマザーボードで見ると電源周りや熱設計がTDP 105Wに対応して強化されている可能性はあります。もっとも、最近のマザーボードはオーバークロックへの対応のため電源部分にかなり余裕をもっているので、X370のマザーボードであっても廉価版でない限りは問題ないと思いますが。

余談ですが、X570はAMDの自社設計、X470とX370はASMediaとの共同設計だそうです。AMDの自社設計はモノはそこまで悪くないのですが、いまいちパッとしない末路を辿るイメージが(笑)

もともと、AMDはチップセットを事業としては力を入れておらず、CPUを売るためにやっているようなものなので、X570もPCI-E Gen4の実現が難易度が高いため自社で提供したというのが真相じゃないかと思います。いずれサードパーティーがPCI-E Gen4を問題なく作れるようになったら手を引いて、AMD自社設計のX570って値段が高くてでファンも付いてて微妙だったね、みたいなイメージだけが残るのでしょう。。。

ところでIntel派だった私としては、ASMediaはASUSTekやASRockのオンボードデバイスのコントローラを作っているメーカーというイメージで、チップセットを作っているというのが正直なところ意外でした。

しかし、よく考えてみたら今のチップセットは昔のサウスブリッジに相当してCPUのPCI-Eに接続されてSATAやUSBを提供するものですから、どちらのコントローラも提供しているASMediaならば何ら不思議なことはなかったですね。(ASRock X470 TaichiにもASMediaのSATAやUSBのオンボードデバイスが搭載されています。)

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余談ですが、ノースブリッジやサウスブリッジの"ブリッジ"はもともとPCIバスとISAバスといった異なるバス間のブリッジチップだったのが由来です。今はPCIも使われなくなりましたが、比較的最近まではサウスブリッジはPCI-EとPCIのブリッジチップとしての役割を果たしており、PCI-EとPCIのブリッジチップを提供していたASMediaはそういう意味でもチップセットメーカーとしての実力があると言えるのかも知れません。

PCI-E

主な構成はスペックの項に纏めていますが、ASRock X470 TaichiはPCI-E x16が3本、PCI-E x1が2本、NVMe x4が2スロットあります。比較的オーソドックスな構成になっていると思います。

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  PCI-E/NVMe Remarks
Slot 1 None 大型のCPUファン搭載可能。
Slot 2 PCI-E Gen3 x16 (CPU) Slot 5 を使う場合はx8になる。
Slot 3 None Slot 2に2スロット仕様のGPUを搭載可能。
Slot 4 PCI-E Gen2 x1 (Cihpset)  
Slot 5 PCI-E Gen3 x8 (CPU) 使う場合はSlot 2がx8になる。物理的にはx16仕様。
Slot 6 PCI-E Gen2 x1 (Chipset) エッジフリーで、物理的にはx4,x8,x16を搭載可能。
Slot 7 PCI-E Gen2 x4 (Chipset) M.2 2と排他仕様!物理的にはx16仕様。
M.2 1 NVMe Gen3 x4 (CPU)  
M.2 2 NVMe Gen2 x4(Chipset) Slot 7と排他仕様。
M.2 3 PCI-E Gen2 x2 (Chipset) Key E 垂直。WIFI+Bluetoothモジュールで使用済み。

注意点はSlot 7とM.2 2が排他仕様になっている部分でしょうか。また、M.2 2は速度もM.2 1のGen3 x4(32Gbps)と異なり、Gen2 x4(20Gbps)止まりです。

グラフィックカードにもよると思いますが、ほとんどの方はSLIやCrossFireは使わずグラフィックカードは1枚構成だと思うので、Slot 5は使うシチュエーションは少ないと思います。ですので、ASRock X470 TaichiはPCI-E x1の拡張カード2枚と、PCI-E x4 or NVMe x4 (Gen2/低速でも良いデータ用)という拡張性のマザーボードと言えます。

なお、M.2 1のNVMeは、M.2 2と比較して速度が速いだけでなく、CPUに直接接続されているという特徴があります。IntelのCPUはグラフィックカード用のPCI-E x16しかサポートしていないため、IntelのプラットホームにあるNVMeは基本的にはチップセットに接続されています。

それに対してAMDのRyzenプラットホームはグラフィックカード用のPCI-E x16に加えてNVMe x4もCPUに直結されているため、ストレージの速度面でIntelのプラットホームに対するアドバンテージになっています。

STEAL SLOT

グラフィックボードを搭載するSlot 2とSlot 5はASRockがSTEAL SLOTと呼ぶ金属製のカバーで保護されたコネクタになっています。

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ASRockのホームページによると耐ノイズ性に優れているそうですが、コネクタ部のノイズが問題でグラフィックカードの性能が低下するという話はあまり聞かないので効果のほどは分かりません。

ちなみに、金属製のカバーは4カ所でマザーボードに直接半田(?)づけ固定されていて、コネクタと一緒にグラフィックボードを支える構造になっているので重いグラフィックカードでも安定した支持ができる効果もあります。

私は高性能で重たいグラフィックカードを搭載する予定はないので、気になるのはむしろコネクタのメーカーで、粗悪品だと接触不良など様々な問題の原因になるので品質は重要です。ASRock X470 TaichiのPCI-Eスロットは信頼と実績のFoxconn製でした。STEEL SLOTのコネクタも、コネクタ右端のレバー付近にFoxconnの刻印が見えます。

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今ではFoxconnといえばiPhoneなどの製造をしているサプライヤーのようなイメージが強いかも知れませんが、実はコネクタメーカーとしても老舗で黎明期の頃から有名でした。

NVMe ヒートシンク

NVMe 1には標準でヒートシンクがついています。

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高速なNVMeは発熱も大きく、そのままではサーマルスロットリング(温度オーバーによる保護動作)が働いて性能を発揮できな場合もあるようなので、ヒートシンクが標準でついてくるのはありがたいです。また、マザーボード付属のヒートシンクはデザイン面で他の部分と統一感があるのもメリットです。

ただし、このヒートシンクはマザーボードを固定する真ん中のネジと干渉するポンコツ仕様なので、マザーボードを固定してからヒートシンクを取り付けるようにすることをおすすめします。

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ヒートシンクといっても金属のフタ程度のもので、他の冷却パーツと接続して連携するようなタイプでもないので、特段冷却性能が高そうにも見えません。ヒートシンクがついているNVMeの場合は、そちらを使っても問題ないと思います。 

CPUとチップセットのUSBとSATA

ASRock X470 TaichiでCPUとチップセットがサポートする主なデバイスはPCI-Eの他、USBとSATAがあります。

USB

ASRcok X470 Taichiには、USB 3.1 Gen2が3つ、USB 3.0が10つ、USB 2.0が5つですが、RyzenはUSBコントローラまで搭載しているので、整理すると以下のようになります。

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Place Type Number Controller Remarks
USB3.1 Gen2 Back Panel Type A 1 X470  
USB3.1 Gen2 Back Panel Type C 1 X470  
USB3.1 Gen2 OnBoard Pin-Header 1 ASM3142  
USB3.0 Back Panel Type A 4 CPU  
USB3.0 Back Panel Type A 2 X470  
USB3.0 OnBoard Pin-Header 4 X470  
USB2.0 OnBoard Pin-Header 5 X470

※スペックシートにはUSB 2.0のピンヘッダーは4ポートと記載されていますが、CPUファンのLED制御用にUSB 2.0のピンヘッダーが1ポートあるので合計5ポートです。また、後述のWIFI+BluetoothモジュールにもUSBがつながっているので、残った1つはこれに使っているのかもしれません。

バックパネルのUSB 3.0は、とくに記述は見当たらなかったので、デバイスマネージャーを見ながら抜き差しして、上の4つがCPU由来のUSB 3.0で、下の2つがチップセット由来のUSB3.0らしいと分かりました。(実はUSB 3.0周りのトラブルがあって原因の切り分けをする際に分かりました。。。)

ちなみに、第3世代のRyzenに内蔵されたUSBコントローラーはUSB 3.1 Gen2にアップデートされましたが、マザーボード側が対応していないのでUSB 3.0として動作しています。どういう仕組みかは分かりませんが、私はUSB 3.1 Gen2にUSB 3.0のハブを繋いで使っているとイメージしています。

なお、チップセットがサポートするUSB 3.1 Gen2は、バックパネルにあります。USB 3.1 Gen2は10Gbpsと速度が速くなっている分ノイズに弱く配線長の制限が厳しくなっているので、バックパネルの手前にPERICOMのPI3EQX 1004B1ZHEXというリドライバのチップを搭載しています。(PI3EQXというのはいろんな種類があるようなので1004B1ZHEXまでが型番みたいです。)

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バックパネルのUSBポートのうち、1つはUSB Type Cポートです。USB Type Cポートは上下を気にせず使えますが、それを実現するため接続された側に合わせて切り替えを行うスイッチチップが必要です。バックパネルのUSB Type Cポートはマザーボードの裏側のUSB Type Cポート付近に搭載されているASMediaのASM1543で実現しているようです。

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追加コントローラのASM3142で実現しているUSB 3.1 Gen2については、オンボードデバイスの項で詳しくみていきたいと思います。

SATA3

ASRock X470 Taichiには、SATA3が8ポートあります。6ポートがチップセット由来、2ポートがASM1061で実現しています。

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追加コントローラのASM1061で実現しているSATA3については、オンボードデバイスの項で詳しくみていきたいと思います。

ところで、ASRock X470 TaichiはM.2スロットが2つありますが、両方ともNVMeだけでなくSATAモードでも接続できると書かれています。X470は6ポートしかサポートしないハズなので、この2つはどういう扱いなんでしょうかね?CPU接続のM.2はCPUのSATAコントローラを使ったとして、チップセット接続のM.2はASM1061でしょうか?

オンボードデバイス

ASRock X470 Taichiのオンボードデバイスは、7.1ch HDオーディオ、有線LAN、無線LAN+Blutooth、USB 3.2 Gen2とSATA3 2portです。

オーディオ

オーディオはRealtekのALC1220オーディオコーディックを中心としたオーディオ機能を搭載、ALC1220はRealtekのオーディオコーディックの中では高音質なタイプだそうです。

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私は昔の惰性でSound Blasterを愛用しているのでオンボードサウンドには興味がなくて、蟹のってるなくらいにしか思ってなかったのですが、調べてみるとグレードによって何種類かあるみたいです。

DAC ADC S/N(DAC) Remarks
ALC1220
ALC1150
7.1ch 24bit 192kHz 2ch 24bit 192kHz 120dB
115dB
ハイエンド
ALC892
ALC887
7.1ch 24bit 192kHz 2ch 24bit 192kHz 95dB ミドルエンド
ALC662 5.1ch 24bit 96kHz 2ch 20bit 96kHz ? ローエンド

表に纏めておいてなんですが、まぁオーディオ関係のスペック(数値)なんて参考にはなりません。Sound Blaster 16でも16bit 44kHzでスペック的にはCDと同等でしたが、オーディオのスペックが役にたたないことを身をもって教えてくれました(笑)

最近はローエンドのALC662を採用した製品を見ないので、だいたいミドルエンド以上の4製品のどれかが搭載されていることが多いです。ミドルレンジ以上であれば違いはS/N比くらいで機能面に違いはありません。スペックだけなら再生も録音もハイレゾでガンガンいけます!

バックパネルは3.5インチミニジャックが5つと角形光デジタルコネクタが1つ。3.5インチミニジャックは5.1chのアナログアウトとラインインとマイクインです。もしかしたら設定画面で切り替えられるのかもしれませんが、見る限りはアナログ出力では5.1chまでしか対応していなさそうです。もっとも、7.1chのサラウンドをアナログ接続で使っている人ってどの程度いるですかね。

とくに光デジタルアウトがついているのはポイントが高く、光デジタル入力がついているオーディオを接続すれば高音質な再生が可能です。もともとオンボードサウンドの音質が悪いと言われているのはアナログ部分の品質によるところが多いため、デジタルで接続してしまえば高音質なサウンドカードなどとも遜色ない音質が期待できます。しかも、サウンドカードやUSB DACに比較して採用数が多いRealtek ALC1220は、ドライバの提供などの面でWindows以外のOSや将来性において有利かもしれません。

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ASRock X470 Taichiは、オンボードサウンドについても力を入れており、とくにアナログ回路は音質に気をつかった設計になっています。

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ASRockでは、Purity Sound 4対応という表現をしていましたが、おそらくPurity Soundというのはこれら高音質化技術の総称のようです。

これだけ作り込みがされていたら、たしかに音質面ではサウンドカードと同等レベルの音質が実現できるかもしれません。ただ、サウンドカードは音響効果などのソフトウェア面も含めてのものなのでハードウェアだけで一概には言えませんけどね。

なお、ALC1220が上位モデルだからか、ドライバが新しいからかは分かりませんが、ASIOにも対応していました。ですので追加のオーディオインターフェースがなくても、PCオーディオやDTMにも使うことができそうです。

ちなみに、基本的にはアナログ回路の部分の話なので、先ほどのようにデジタル出力を使ってしまうと意味はありません。ただ、ASRockのホームページには『Pure Power-In』という電源回路にも工夫しているような記述があるので、そういう部分であればデジタルにも効果があるかもしれません。

ネットワーク

ネットワークはIntel i211-ATを搭載しています。一昔前まではオンボードでIntelのネットワークコントローラを積んでいるのはIntel純正マザーボードの特権のようなものでしたが、いまではハイエンドモデルはIntel、ローエンドモデルはRealtekという使い分けが定着しているようです。

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もっとも、正直なところローエンド向けのRealtekでも普通に使っている分には特段性能が悪いというわけではないと思います。その昔、FreeBSDのソースコードに名指しで『ローエンドを再定義した』と書かれていたほどポンコツでしたが、当時でもCPU占有率が高めで安定性がイマイチでも安くてまぁまぁ使えるチップでした。いまでは全体的に性能が上がっているので避ける理由はそれほどないと思います、と言いつつ私はずっとIntel派なんで説得力がないですが(笑)

Intelのチップセットにはネットワークコントローラの論理層が内蔵されているので、物理層(PHY)だけ搭載すればネットワーク機能を提供できます。それに対して、その他のチップセットやIntelのチップセットであっても2個目などは、論理層と物理層の両方を搭載した通常の拡張カードと同様のネットワークコントローラが必要です。

TDP Temperture Type Since Remarks
82579V 0.66W 0°C to 85°C PHY 2011  
I217-V 0.5W 0°C to 85°C PHY 2013  
I218-V 0.5W 0°C to 85°C PHY 2013  
I219-V 0.5W 0°C to 85°C PHY 2015  
82573L 1.3W 0°C to 70°C Controller (PCI-E x1) 2005  
82574L 0.727W 0°C to 85°C Controller (PCI-E x1) 2008  
I210-AT ? 0°C to 70°C Controller (PCI-E x1) 2012
I211-AT ? 0°C to 70°C Controller (PCI-E x1) 2012

I217-V/I218-V/I219-Vはデータシートを見てもイマイチ違いが分からないのですが、世代が違うだけで性能面はほぼ同じように見えます。プロセスルールまで同じなので、新しいチップを開発した理由は不明ですが。。。

コントローラタイプは82573L、82574L、I210-AT/I211-ATの順で世代が異なり、プロセスルールがシュリンクされ消費電力(TDP)が下がっていますが、I210-AT/I211-ATは従来のチップに比べて耐温度性能が下がっているのはデメリットですね。

I210-ATとI211-ATは同じ世代で、なぜか数字が小さいI210-ATの方が上位で1ドル程度値段が高く、Network Controller Sideband Interfaceという機能をサポートしているのが違いのようです。ただ、管理インターフェースの機能なのでI210-ATをオンボードとして搭載しているマザーボードはほとんど見かけません。

Intelのネットワークコントローラは、安定性や速度でも定評がありますが、ドライバ(ソフトウェア)により提供されるチーミングやVLANといった豊富な機能もアドバンテージの一つです。

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USB

X470はUSB 3.2 Gen2を2portサポートしておりますが、ASRock X470 Taichiは前面ポート用に追加でASMediaのASM3142を載しています。

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PCI-E Gen2 x2接続のコントローラでUSB 3.2 Gen2を2portサポートするチップです。コントローラの左上にUSB 3.2 Gen2のKey-Aコネクタがあります。Key-AはType-Cポート対応します。

チップセットのUSBの項でも書きましたが、USB Type Cは上下どちらでも接続できるようにするためスイッチチップが必要で、ASM3142の下にこのKey-Aコネクタ用のASM1543が搭載されています。

ただ、ASM3142は2portサポートしており、Key-A 1つしか出力されていないので、上下それぞれに1portづつ接続すれば、スイッチチップなど使わなくても実現できそうな気はしますけどね。

SATA3

X470はSATA3を6portもサポートしているのですが、ASRock X470 TaichiではASMediaのASM1061を載してさらに2portを追加しています。下の写真では一番右にあるA1とA2の2portがASM1061由来のもので、その少し下にあるチップがASM1061です。

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ASM1061はPCI-E Gen2 x1接続のコントローラで、搭載する拡張カードを見たところSATA3を4portサポートするチップのようです。かれこれ10年近く前の枯れたコントローラですが、SATA3のコントローラとしては後発だったので性能は悪くないそうですが、そもそも今時SATA接続のHDDを6基以上を搭載するシチュエーションはあまりないと思うので、なぜこんなものを搭載しているのか謎です。

なお、PCI-Eの項で少し触れましたが、チップセットがサポートするSATAは6ポートすべてマザーボード上にポートがありますが、チップセット接続のM.2スロットをSATAモードで動作させた場合でもスペックシートに排他仕様の記載はありません。ですので、ひょっとするとM.2をSATAモードで使用した場合にASM1061に接続するのかもしれません。

余談ですが、UEFI(BIOS)の設定画面でASM1061はDisableにできたのですが、チップセット由来のSATAはDisableにする項目が見当たりませんでした(UEFIのバージョンはP3.9)。私はNVMeしか搭載していないのでSATA3コントローラは使っていないのですが、今のところできないようです。

WIFI + Bluetooth

ASRock X470 TaichiにはIntel Dual Band Wireless-AC 3168のWIFI + Bluetoothのモジュールが搭載されていて、IEEE802.11acのWIFIとBluetooth 4.2に対応しています。

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Intel Dual Band Wireless-AC 3168はM.2 Key Eタイプの拡張カードで、WIFI機能はPCI-E x2で、BluetoothはUSBで接続されています。M.2 Key Eという標準規格のスロットですので交換することも可能だと思いますが、UEFI(BIOS)に設定項目があったので単なる拡張カードとは少し違うのかもしれません。

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M.2はNVMeにも使われているフォームファクターですが、インターフェースと大きさに種類があります。

インターフェースはKey A~M(Iは欠番)の12種類あるようですが、PCで主に使われているのはKey A、B、E、Mの4種類ですね。似たような名前ですが、前述のUSB Type-Cのピンヘッダー(Key-Aコネクタ)とは別物のようです。

  Interface Remarks
Key A PCI-E x2, USB  
Key B PCI-E x2, SATA, USB, Audio ストレージ用, NVMe x2/SATA
Key E PCI-E x2, USB Key Aと同じ?WIFI用
Key M PCI-E x4, SATA ストレージ用, NVMe x4/SATA

※インターフェースはこの他にSDIOやPCMと言ったものがあって、それぞれのKeyで微妙にサポートするものに違いがあります。

対応しているインターフェースすべてに対応する必要はなく、例えばM.2のストレージモジュールはPCI-E x4かSATA3のどちらか一方しか対応しないのが普通ですし、マザーボード側のKey BやKey MのスロットでもNVMe(PCI-E)のみの対応でSATAには対応しない場合もよくあります。また、複数のKeyに対応することもできるようです。(Key BとKey Mどっちでも可みたいな感じです。)

Key AとKey Eの棲み分けがよく分からないのですが、高速なNVMe x4に対応するSSDモジュールがKey M、安価なNVMe x2またはSATAのSSDモジュールがKey B、WIFIがKey Eといったところでしょうか。

大きさは幅が22mmで、長さが16、26、30、38、42、60、80、110mmの8種類あり、例えば80mmのモジュールならば2280のように書きます。(幅・長の順に数字を並べて書くだけです。)

SIZE Remarks
2230 22mmx30mm WIFI用
2280 22mmx80mm ストレージ用

規格としては8種類ありますが、自作PC向けの汎用品はストレージが2280mmで、WIFIが2230mmがほとんどで他のサイズはあまり見かけません。ただ、おそらくメーカー製のモバイルノートには小さいサイズのストレージも使われていると思います。それでも、ほとんどのマザーボードで色々な長さのモジュールに対応できるように律儀にネジ穴が用意されていますけどね。

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私は有線LANでネットワークに接続しているので、このM.2 Key EのPCI-E x2を有効活用できないかと拡張カードや変換パーツの類いを探してみましたが、M.2 Key EタイプをWIFI以外で活用する面白そうなパーツは見つけられませんでした。

余談ですが、Intel Dual Band Wireless-AC 3168はIEEE802.11acとBluetooth 4.2までの対応ですが、Wi-Fi 6とBluetooth 5に対応したIntel Wi-Fi 6 AX200というM.2モジュールが登場しているので、正当なアップグレードパスとして良さそうです。

少し前まで、WIFIモジュールはminiPCIeのタイプが搭載されることが多かったのですが、現在ではM.2が主流になっています。Dual Band Wireless-AC 3168のIEEE802.11acは433Mbpsなので、速度面でPCI-E x1では足りなくなったというわけではありませんが、内蔵されるモジュールはストレージも含めてM.2に統一されてきているので、その流れによるものかと思います。

PCI-Eのレーン

PCI-Eスイッチ

ASRock X470 Taichiはグラフィックカード用にCPU由来のPCI-E x16スロット(物理的な形状)を2つ持っていますが、CPUからはグラフィックカード用に16レーンがしか出ていないので、PCI-E x16 x1で使うかPCI-E x8+x8で使うか選択することになります。このためNXP CBTL04083BというPCI-Eスイッチチップが搭載されています。

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チップ表面にはL04083Bと書かれていますがチップ名はCBTL04083Bで、データシートによるとPCI-E Gen3に対応して4レーンまで扱えるスイッチチップのようです。ASRock X470 Taichiは、これを表に5つ、裏に2つ、合計7個搭載しています。ネットの記事でASM1480を搭載しているものもあったのでバリエーションがあるのかもしれません。

ただ、いまいち使い方が分かりません。単純にPCI-E x16をPCI-E x8+x8にするなら、8レーンをスイッチできれば良いだけですから2つあれば足ります。加えて、チップセットに接続されたM.2はPCI-E x4スロットと排他利用なので、このスイッチにも1つ使いそうですが、それでも3つでだいぶ余りますね。

搭載位置を見ると、CPU接続のM.2に1つ、PCI-E x16の16レーンに4つ(うち2つはPCI-E x8+x8の切り替えにも使用)、チップセット接続のM.2とPCI-E x4に2つといったところでしょうか?

ちなみに、データシートにはこのスイッチチップはPCI-E Gen3と明記されていますので、ASRock X470 Taichiは第3世代RyzenのPCI-E Gen4にはUEFI(BIOS)の制限ではなく部品のスペック的に対応できないということになります。(オーバークロックで動かないことはないのかも知れませんが一般的にはNG)

余談ですが、この手のスイッチチップはPCI-E x8+x8に対応している、つまりマザーボードのミドルエンド上位のモデルに搭載されていることが多いため、CPUのPCI-EをそのままPCI-E x16に直結しているようなローエンドモデルの方が案外新しい規格に対応できたりするという逆転現象が起こることがよくあります。

もちろん、ノイズ対策などの信号線の作り込み次第ですし、動作保証という面でサポートしてくれるかはメーカー判断になりますが、少なくともスペック的に対応できない上位モデルに比べると有利になります。PCI-E Gen3に対応したIvyBridgeが登場した際にも、既存のマザーボードはCPUのPCI-EがGen2で動くかGen3で動くかが分かれ、案外シンプルなミドル以下がGen3をサポートできていました。

PCI-E パケットスイッチ

ASRock X470 Taichiは、チップセット由来のPCI-EスロットをPCI-E x1が2つ、PCI-E x4(またはNVMe x4)が1つ持っているので5レーン使っています。さらに、オンボードデバイスとして、LANのI211-ATがPCI-E x1、USBのASM3142がPCI-E x2、SATAのASM1061がPCI-E x1、WIFI+Bluetoothの PCI-E x2を搭載しているので、合計11レーンほど使っている計算になります。

チップセットのX470はPCI-Eを8レーンしか持っていないので、PCI-Eレーンを分岐するASMediaのASM1184eというPCI-Eパケットスイッチを搭載しています。

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8レーンのうち、1つをこのパケットスイッチを介して4つのPCI-E機器に接続すれば、11レーンを賄うことができます。ただ、ASRockのスペックシートからはどの機器やスロットが共有されているかまでは読み取れませんでした。

私としては、どうせこういうチップを使ってPCI-Eのレーンを増やしているのならば、チップセット接続のM.2とPCI-E x4を排他利用ではなく両方使えるようになっていたら良かったのにと思います。もちろん、レーンを共有するので両方の機器を同時に使うと速度が落ちますが、必ずしも両方を同時に目一杯使うシチュエーションばかりではないので、排他仕様よりもずっと使いやすいハズです。

なお、ASRock X470 Taichiには上位モデルとして、ASRock X470 Taichi Ultimateがあり、10Gbps LANのAquantiaのAQC107というチップを搭載しています。このAQC107はPCI-E x4で接続されるのですが、ASRockのスペックシートには排他利用の記述はないので、上記のPCI-Eパケットスイッチを使ってもPCI-Eのレーン数が足りなくなります。

ASRock X470 Taichiの基板にはAQC107のパターンが残っているので共通の基板を使っているようですが、他にパケットスイッチ(またはパケットスイッチのパターン)は見当たりません。いったいどうやって実現しているのか謎です。

電源(VRM)と基板・回路

電源(VRM)

ASRockのTaichiシリーズは、位置づけとしてはミドルレンジで多機能なオンボードデバイスこそ搭載されていませんが、要所に高品質なパーツを使っているのが特徴のシリーズで、このASRock X470 Taichiは電源周りがしっかりと作り込まれていることに定評があります。

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ASRockのホームページには以下のような高品質な部品が使われていることが特徴としてあげられています。

ATX電源は12V、5V、3.3Vを提供できますが、CPUはそれらより低い電圧で動作しているので、ATX電源より供給される12Vなどを使って、マザーボード上のVRM(=Voltage Regulator Module)でCPUに必要な電圧を作っています。VRMと言われると小難しいは専門用語に聞こえますが、Regulatorは調整という意味ですので、日本語にすると単純に『電圧調整装置』です。

最近のマザーボードではこの電圧調整装置をスイッチング回路を使って実装しています。ザクッと言ってしまえばトランジスタで高速に回路をON/OFF(スイッチング)して、それをコイルとコンデンサで平滑化して、低い電圧を作るものです。また、1つの回路で大きな電流を賄うのは大変なので、小さなスイッチング回路を複数並列にならべて、CPUの必要とする大きな電流を確保するように作られています。

何個の回路を並列につないでるかをフェーズと呼んでいます。ASRock X470 Taichiは16フェーズの電源回路を搭載しています。廉価版のB450マザーボードなんかでは4フェーズくらいだったりするので、16フェーズというのがいかに豪華な仕様か分かると思います。もっとも、本当に16フェーズも必要か、という部分は議論の余地があると思いますが。。。

1フェーズあたり40Aとすると全体で640Aとなるので、CPUの電圧が1Vちょっとですから単純計算で700Wくらいです。2分でレトルトカレーがおいしく暖まりますね(笑)もちろん、VRMに限らずMAXで動かすと効率が悪くなりますので半分くらいで使うとしてもTDP100W程度のCPUを動かすならば8フェーズもあれば充分じゃないかと思います。

ASRcok X470 Taichiはスイッチングに、International Rectifier(買収されて現在はInfineon傘下)のIR35201というPWMコントローラーを採用しています。

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IR35201は8フェーズまでしかコントロールできないので、同じくInternational RectifierのIR3598というフェーズダブラーを8個搭載して16フェーズの回路をコントロールできるようにしています。なお、IR3598はマザーボードの裏側に搭載されています。

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スイッチングはTexas InstrumentsのCSD87350Q5DというMOSFETを各フェーズに搭載して実現しています。

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チップ表面には87350Dと書かれていますが、型番はCSD87350Q5Dのようです。Texas InstrumentsはIEEE1394のコントローラというイメージが強かったですが、こういうものも作っているんですね。

Texas Instrumentsは『NexFET パワー・ブロック MOSFET』と表現していましたが、ASRockのスペックシートには『Dual-Stack MOSFET (DSM)』と書かれていて、オン抵抗が少ないことが特徴として記載されています。

MOSFETはON/OFF(スイッチング)をするわけですが、ONの時でも僅かに抵抗(Ω)があるのでMOSFETも少し電力を消費することになります。オン抵抗が少ないということは、それだけ省エネというだけでなく、エネルギーの消費が少ないということは発熱も少ないという大きなメリットにもなります。

スペックを見ると40Aまで対応していて、25Aで90%の効率と書かれているので、ASRock X470 Taichiは全体で640Aで、400Aくらいで使うのが良さそうです。

チョークコイルは外観からはよく分かりませんが、ASRockのホームページによると、プレミアム 60A パワーチョークで飽和電流を最大 3 倍まで効果的に増加と書かれています。上の写真ではMOSFETとコンデンサのの間にある四角いやつです。なお、MOSFETが40Aまでなので、60Aは少しオーバースペックな気がします。

コンデンサはニチコン製のアルミ固体電解コンデンサのFPCAPシリーズです。

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ASRockのホームページには12Kブラックコンデンサで12000時間の寿命を持つと書かれています。昔にくらべてマザーボードの交換周期が延びているので12000時間というのもあながちオーバースペックというわけではないかもしれません。10年使うと1年1200時間で1日平均3時間です。

ちなみに、従来のアルミ電解コンデンサ(湿式)は温度に対してデリケートで、低いと特性が悪くなり、高いと寿命が短くなる性質がありました。ちなみに、アレニウスの式とよばれる法則が広く知られていて、10度上がると寿命が半分になると言われています。

とくにマザーボード上は高温になりやすく、廃熱をしっかりとやらないとアッという間に寿命が尽きてマザーボードが壊れるということがよくありました。アルミ固体電解コンデンサはアルミ電解コンデンサ(湿式)と比べてずっと耐久性が高いので、昔のようにコンデンサが原因でマザーボードの寿命が尽きるということはあまりないと思います。

なお、ASRock X470 Taichiはスイッチング回路以外にもコンデンサを積んでいますが、オーディオ以外はこの12Kブラックコンデンサで統一しているようです。

スイッチング回路はMOSFETとコイル、コンデンサがワンセットで1フェーズを作るので、ASRock X470 Taichiは、それらが16個整然とならんでいるのでCPU周りがとても美しいです。

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まぁ、よく見るとマザーボード上側の列のコンデンサだけ1個多いのは謎ですが(笑)

メモリの電源用にCPUとは別にVRMを持っているようで、メモリの上に独立して2フェーズ搭載していました。MOSFETとコンデンサは、CPUと同様でTexas InstrumentsのCSD87350Q5Dとニチコンのアルミ固体電解コンデンサのFPCAPを使用していますが、コイルは別のものを使っているようです。

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ASRockのホームページには『プレミアムメモリ合金チョーク』と題してメモリ電源供給用に特別設計された新世代合金チョークと書かれていますが、ホームページの写真を見る限りVRMの回路に使われているものではなさそうです。

ASRock X470 TaichiはATXの24ピンコネクタの他に、EPS12VとATX12Vの2つのコネクタがあります。

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もともとマザーボードはATXの20ピンのコネクタを使って各電圧の電源を供給されていましたが、12Vラインを多く使うようになったため12Vラインを増やした24ピンコネクタが主流になりました。

さらに、CPUの消費電力が多きくなってきたためCPUのVRM用にATX12Vという独立した4ピンのコネクタを使うようになり、さらにピン数を8ピンに増やしたEPS12Vが登場しています。現在の標準的なマザーボードではEPS12Vを1つ使うものが多いようですが、ASRock X470 TaichiではEPS12VとATX12Vの2つのコネクタを接続して、安定した電源供給ができるようになっています。

なお、すべてを接続しなくても動くのかもしれませんが、ATX12VもEPS12Vも12Vを供給しているだけですので変換ケーブルなどでSATAなどの12Vラインから容易に作ることができます。電源がコネクタを持っていなくても対応させることが可能ですので、接続しておいた方が無難だと思います。

基板と回路

ASRock X470 Taichiは黒い基板とグレーの対極のデザインが特徴です。

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この黒い基板はASRockのホームページによると『マットブラックPCB』というようです。ホームページ見てもこの黒にデザイン以外に性能上のメリットは特にないみたいですが。。。ちなみに、『高密度ガラス繊維PCB』で、湿気が中の層に入り込んで絶縁が悪くなるようなことが起きにくいと書かれています。

また、『2オンスの銅PCB』で高い冷却性能と優れたエネルギー効率を実現しているのも特徴としてあげられています。似たようなものをGigabyteが10年くらい前からウリにしていて、基板の電源層に使っている銅を従来の1オンスから2倍の2オンスにすることで、銅の熱伝導を使った基板全体の冷却と低い抵抗値による高効率な電力供給を実現しているというものです。余談ですが、1オンスは28gくらいです。

ASRock X470 Taichiは配線設計もしっかり作り込まれている印象を受けます。マザーボードの裏面を見てみると、とくにクロックにシビアなメモリ周りを中心に、ノイズが発生しにくい曲線の配線や配線長を合わせるためのジグザグ配線などが見受けられます。

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配線の善し悪しなどはスペックに表現しにくいものの、品質に大きく影響する部分でもあるので好感が持てますね。

なお、水晶発振器の近くにICS 9VRS4883BKLFというチップが搭載されています。

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これはIntegrated Device Technology(現在はRenesas Electronicsの傘下)のクロックジェネレーターで、ASRock X470 Taichiでは、このチップ使って『Hyper BCLK Engine II』というオーバークロックを支援する機能を実現しています。

今でこそメーカー公認のオーバークロック方法として倍率が変更できるモデルがありますが、以前は倍率が固定されており(さらに昔は普通に変更できましたが)、オーバークロックする場合はベースクロック側を調整するのが普通でした。

例えば、ベースクロック100MHz・倍率10倍で1GHzのCPUがあったとして、倍率を11倍に変更できれば1.1GHzにできますが、倍率が10倍に固定されていてもベースクロックを110MHzにすれば1.1GHzにすることができます。

しかし、倍率が高くなってくるとベースクロックをちょっと変えただけでクロックが大きく変わってしまうため調整がシビアになります。そのため、マザーボードメーカーは、ベースクロックをきめ細かに調整できる高性能なクロックジェネレーターを搭載するようになりました。

ただ、ベースクロックをオーバークロックすると、CPU以外のデバイスも一緒にオーバークロック状態になってしまうため、倍率アンロックモデルが登場してからはあまり話題になっていないように感じますが、このチップはそういうベースクロックをきめ細かく調整する機能を提供しているようです。

余談ですが、ASRock X470 Taichiの取扱説明書のマザーボードレイアウトには、このチップの位置に『Super IO』と書かれているのですがたぶん誤植だと思います。

その他

ライティング

最近のマザーボードはライティングの搭載が標準になっているようで、通電確認用のLEDくらいしかなかった昔にくらべるとずいぶんと賑やかになりましたね。ASRock X470 Taichiもライティング機能を搭載しており、LED用のピンヘッダーの他にマザーボード自身も七色に光ります!

マザーボードが光るのは①チップセットの周辺、②オーディオチップの周辺、③バックパネルの周辺です。どれも通常はヒートシンクや"緩衝材"がついているのでパッ見じゃ分かりづらいですが、①と②はマザーボード上にLEDが、③は"緩衝材"側にLEDがついてて、ケーブルでマザーボード上にある専用のピンヘッダーに接続しています。

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マザーボード上のLEDには番号が振ってあるのですが、その並びはいまいちよく分かりません。チップセット周りはLED2~10とLED16~17で、オーディオ周りがLED11~15です。チップセット周りの番号が2つだけ連番ではないのは、過去のマザーボードから設計を引き継いだのか、後から追加したのか、いずれも設計者以外知るよしもありませんね。

専用ピンヘッダーはピン配列までは調べていませんが、形状は他のLED用のピンヘッダーとは違うようです。なお、マザーボード上にIOCOVER_LED1と印字されているので、これがLED1でしょうか。

LED用のピンヘッダーはRGB LEDヘッダー、アドレサブル LEDヘッダー、AMD FAN LEDヘッダーが各1つづつです。

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マザーボード上のLEDと併せてASRockオリジナルユーティリティ『ASRock Polychrome Sync』で纏めてコントロールすることができます。対応パーツを搭載していないのでグレーアウトしていますが、どうも対応していればメモリやグラフィックカードのLEDも一緒にコントロールできるようです。

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なお、アドレサブル LEDヘッダーは、標準規格というものがないらしく各社で独自に実装しているようです。このため、ASRock Polychrome Syncに対応したアクセサリを選ぶ必要がありますが、各メーカーごとに別々に製品があるというわけではなく、複数のメーカーの規格に対応した製品も多いので、ASRock Polychrome Sync対応の製品も少なくないと思います。

私はPCの電源をつけっぱなしにしている間に煌々とひかられるとうっとうしいのでOFFにしていますが、いずれ色々試してみたいですね。

スーパーI/O

今ではキーボードやマウスといった基本的な入出力インターフェースのほとんどがUSBに移行してしまったので、スーパーIOコントローラーはすっかり存在感が薄くなってしまい、ASRock X470 TaichiではLEDの光のあたらない基板の裏側に搭載されています(笑)。

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搭載されているスーパーI/OコントローラはNUVOTONのNCT6779Dで、温度センサ、電圧モニター、FANコントローラーなどの機能を提供しています。

なお、FANコネクタはCPU用が2つ、ケース用が3つで、FANドライバとしてNUVOTON 3947SAが各FANコネクタの近くに搭載されています。スペックシートによるとFANコネクタは水冷にも対応しているようです。

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まとめ

ということで、長々と主に搭載チップに主眼をおいてお話してきました。ASRock X470 Taichiは、ミドルエンドの価格帯ながら、オンボードデバイスを控えめにする代わりに電源回路はハイエンド並みにした製品というのが私の印象です。オンボードデバイスもフロントのUSB 3.2 Gen2やIntel LANなど要所を押さえていて、普通に使いやすいマザーボードだと思います。

強いて言うならば、最近は猫も杓子もオーバークロックとゲーミングで似たようラインナップが多いため、もう少し特徴があっても良かったのかなと思うくらいでしょうか。