AI時代に輝く3dfx勝利の方程式。

AI時代に輝く3dfx勝利の方程式。

nVIDIAというメーカー

ひと昔前までnVIDIAはゲーマー御用達の高性能グラフィックチップのメーカーでした。最近ではAIで必要なデバイスを作っているメーカーとして有名となり、パソコンマニアよりも投資家の方が注目しているかもしれません。

nVidaは強さの秘訣は語弊を恐れずに言えば、CUDAというAPI・プラットホームとそのエコシステムだと思います。

CUDAのエコシステム

今盛んに開発されているAIのプログラムの多くが、nVIDIAが自社のグラフィックチップのために開発しているCUDAというAPI・プラットホームで動作するよう作られています。そのため、別のメーカーのグラフィックチップでは、たとえ同じくらいの性能で値段が安かったとしても使うことができず、みんな渋々?値段が高くてもnVIDIAのグラフィックチップを買うことになります。

CUDA向けのプログラムがたくさんあるから、CUDAが使えるサーバーがたくさん導入されます。CUDAが使えるサーバーがたくさんあるから、ますますCUDA向けのプログラムが開発される・・・そういうエコシステムを築いたからこそ、nVIDIAはこんなにも強いわけです。

へぇ、賢い戦略だなぁと思うところまでは、テクノロジー業界ではよくある話ではあるのですが、私は、はるか昔に流星のように現れて消えていった、3dfxとVoodooというグラフィックカードを思い出します。

3dfxとVoodoo

3dfxとVoodooと聞いて懐かしい名前だなぁと思った方は、わりと古参のパソコンマニアだと思います。

その昔、パソコンのグラフィック機能では3Dグラフィックが演算できなかった時代、CPUに頼らずに3Dグラフィックを表示する機能を追加するための3Dアクセラレーターというものがあり、そのジャンルで一世を風靡したのが3dfxというメーカーとVoodooというグラフィックカードのシリーズです。

このVoodooの特徴は、GlideというAPI・プラットホームを提供し、プログラムから比較的容易にグラフィックカードの機能を扱うことができるようにしているところでした。

3Dグラフィック機能を持ったグラフィックカードはいくつものメーカーが出していましたが、機能を使いこなすのが大変で、しかもメーカーごとに仕組みが違うものだから、各ゲームメーカーはそれぞれのハードウェアごとにゴリゴリとプログラムを書く必要があり大変でした。

VoodooのGlideは、美しく高速な3D表示を、比較的容易にプログラムできるのが特徴で、他社よりも圧倒的に洗練されたものでした。Glideに対応したゲームがたくさんあるからVoodooが売れる、Voodooを持っている人がたくさんいるからGlideに対応したゲームが作られる。まさに3dfxの繰り出した、勝利の方程式です。

もちろん、理屈は簡単ですが、実際にやるとなると大変です。各メーカーが3D性能でしのぎを削っている中で、グラフィックカードの開発だけでなく、API・プラットホームの開発にもリソースを割かなければなりません。しかも、どんなにすばらしいAPI・プラットホームであっても、それを使うゲームがある程度揃ってこないと売り上げにつながりません。

これは先行投資のようなもので、最初のうちはリソースは割けども売り上げには貢献しない状況が続くため、理屈は分かっていても、どうしても売り上げに直結するハードウェア開発の方に重きを置くメーカーが多くなります。ただ、API・プラットホームは一度エコシステムができてしまうと、今度は他社が追いつくのが大変で、確実に利益を得られるようになるというのも特徴です。

DirectXの登場~Glideの終焉

もっとも、そんな3dfxの天下はそう長くは続きませんでした。原因はいくつかありますが、致命傷となったのはMicrosoftの提供するDirectXという共通APIが普及したからだと思います。GlideがVoodooでしか動かないのに対して、DirectXは様々なメーカーのグラフィックカードで動きました。

もちろん、DirectXはいろいろなグラフィックカードに対応させているため、その分 最適化はハードウェアとセットで開発されているGlideの方が有利ですが、ゲームメーカーからすれば、Voodooがないと動かないゲームと、いろんなメーカーのグラフィックカードでも動くゲームとでは、どっちが売れるかは明らかです。

もう一歩引いた目線で見ると、MicrosoftがDirectXの改良を頑張っただけでなく、グラフィックカードの性能があがって、そこまで最適化しなくても充分なゲーム性能が得られるようになった、という側面もあります。結局、3dfxは急速に力を失い、最終的にnVIDIAに買収さて市場から消えていきました。

引き継がれたDNA

今、nVIDIAがAIの市場でやっていることは、まさに3dfxがGlideで3Dゲームの市場を掌握したのと同じ手法です。nVIDIAは3dfxを買収した際に、3dfxをリスペクトする発言をしており、『最高の技術と人材を得た』という声明を出しています。実際に3dfx出身の技術者は、その後もnVIDIAのグラフィックチップの開発に深く関わっています。

その昔、3Dゲームの黎明期に伝説だけのこし、コンピュータの歴史の中に消えて行った3dfx。3dfxという会社こそなくなってしまいましたが、3dfxのDNAは確実にnVIDIAの中に流れていると思うと、ロマンを感じずにはいられないのです。

nVIDIAの未来

ちなみに、投資家たちが今 気になっているのは、nVIDIAの勢いがいつまで続くか、だと思います。史上初の時価総額4兆ドル越え企業になり、まだまだ株価はうなぎ上り。まだまだ伸びるのか、それともバブルがはじけてしまうのか?

投資家的な視点は私には分かりませんが、3dfxとVoodooの辿った歴史を考えると、それはDirectXのようにハードウェアに依存しないAPI・プラットホームがCUDAに取って代わったときで、もっと言うとハードウェアの性能があがって、そこまで最適化しなくても充分なAIの性能がえられるようになったとき、だと思います。

そして、今の日進月歩で爆走するAIの様子を見るに、それはだいぶ先になりそうな気はします。