『Geforce4の謎』

はじめに

Radeon8500に対抗するためにnVIDIAがリリースしたGeforce 4シリーズですが、発売当初からあまり性能が上がっていないと市場の評価はイマイチなものでした。なぜ、Geforce4はそれほど性能が向上しなかったのでしょうか?ここでは根拠のない推測を駆使して私的見解を展開してみようと思います(笑)。

Geforce 4 Tiはなぜ性能が期待ほど性能が上がっていなかったのか?

Geforce 4シリーズは決して性能が悪かったけけではなかったのですが、やはり天下のnVIDIAさんがフルモデルチェンジをしてきたとなればnVIDIAファンじゃなくても期待してしまうものです。しかし、Geforce4シリーズはハイエンド向けの製品からローエンド向けの製品まで「おとなしい」性能アップで期待していたほどではなかったので期待していた市場の皆さんはがっかりしてしまったようです。ではなぜ、Geforce4は思ったほど性能が上がっていなかたったのでしょうか?

実は Geforce4は本来もっと性能がよい別のチップだったらしいのです。より高性能なチップはより多くのトランジスタを搭載して高クロックで動作するために、プロセスルールを小さくしないとチップの原価が高騰する上に発熱が対処できないレベルになってしまって製品として実際に販売することが困難となります。どうやらGeforce4はGeforce3で使われた0.15μプロセスルールの次の世代である、0.13μプロセスルールで生産することを前提に設計されていたようなのです。

nVIDIAは設計のみを行いチップ工場を持たない(ファブレス)の企業で生産は外注に頼るわけです。0.13μプロセスルールでグラフィックチップレベルの超大規模集積回路の製品を量産できる術を持ってる会社は当時Intelぐらいなものでほとんどありませんでした。しかし、ATIがRadeon8500をリリースして徐々にnVIDIAのシェアを奪っていくのを防ぐためにもGeforce4をリリースするしかなく、0.15μで製造するチップを急遽作る事なってしまったのではないか?というのが私の見解です。しかも、一世代前のGeforce3はすでに0.15μプロセスルールの限界で高価になってしまったためそれほど機能や性能を向上させることが難しく、一部の機能拡張と回路の最適化という地味な性能向上にとどまってしまったというワケです。

もう一つ、これは計画的だったという考え方もできます。nVIDIAはフラグシップモデルの開発コードネームにNV**という数を使っていて、Geforce 256がNV10、Geforce 2 GTSがNV15、Gefoce 3 がNV20そしてGefoce 4 Ti がNV25です。Geforce 2 GTSは大ヒットした製品でGefoce 256からGefoce 2 GTSは大幅に性能がアップしているように思われますが、よく見てみると最適化とプロセスルールの微細化によるクロック向上と低価格化が主な変更点で仕様などはあまり変更がされていないのです。つまり、X0世代で仕様の大幅な革新を行いX5世代ではそのマイナーアップというのがnVIDIAの方針かもしれません。

おそらくそれでもGeforce 4シリーズでプロセスルールの微細化というもくろみはあったと思われます。Gefoce 4 Tiシリーズでもクロックの向上や最適化などは行われていますが、プロセスルールの微細化が行われなかったために価格があまり下がらなかったのがGefoce 2 GTSとの明暗を分けてしまったのではないでしょうか?とすると次のNV30には大きな期待がかけられるのです。

実はnVIDIAはいつも次期プロセス世代にあう程度の設計をしていました。つまり、そのプロセス世代では通常のメーカーが作るグラフィックよりもトランジスタの量が多めで価格も高めで、その分性能も高いというグラフィックチップを作っていました。しかし、Geforce3でそれが行き過ぎてしまったのかあまり売れなく、またライバルのATIが同じレベルの性能で少し低価格でリリースしてきた為に、計画が狂ってしまったのもあるようです。

なぜGeforce 3 MXは存在しない?

nVIDIAのシェア拡大の決め手になったものの一つにローエンド市場向けに最適化された最新のグラフィックチップによってローエンド市場の掌握を図ったことがあると思います。Geforce2 MXによって華麗なる成功を収めたnVIDIAがなぜGeforce 3にローエンド向けの製品を作らなかったのでしょうか?

①元になるGeforce 3の基本構造(特に特徴でもあるプログラマブルシェーダの辺り)があまりにも大きくてトランジスタを食うためにどんなに最適化してもローエンド向けの価格帯に抑えることができなかった。

②XBOXのチップセットの開発などに開発リソースが割かれてローエンド向け製品の開発まで手が回らなかった

が考えられると思います。あくまで予想の域をでませんが私は後者の線が濃いと思います。というのも前者であればGeforce 2をベースにした廉価版をさらに強化してくることもできたハズなのに、投入したのはクロックが異なる製品だけでほとんど開発にリソースを割いていないと思われるからです。

Geforce 4 MXはなぜGeforce 2 MXから劇的に性能アップしなかったのか?

Geforce4 MXともなると、Geforce 2 MXから二世代も後の製品ですし、ネーミング的に考えてもGeforce 4 Tiのローエンド向けに最適化したもののように感じられます。ところが、ふたを開けてみるとGeforce2 MXから劇的には性能アップしていない上に、DirectX8.0世代のグラフィックチップであるGeforce 4 Tiをベースしたわりには、肝心のプログラマブルシェーダを搭載しておらず、ハードウェアT&LのみでGeforce2世代のDirectX 7程度の機能しかハードウェアで実装していません。これはなぜなのでしょうか?

前項で私の見解としては②を選びました。おそらくGeforce 3 の時には②の方だったと思われますが、Geforce 4 MXをつくりにあたり実際に設計してみたら①も当てはまってしまったのではないでしょうか?プロセスルールが同じなのでGeforce4がだめなら同じ程度の大きさになるGeforce 3でもダメでしょう。したがって二世代も前のGeforce 2から設計することになってしまったというワケです。

今回は、開発リソースを割いてある程度手を加えました。Geforce 2 MXは0.18μプロセスルールで製造されていましたが、今は0.15μプロセスルールが使えるのでより小型=り低価格にそしてより高クロックにすることが可能で、コアは古い設計ですがなんとかGeforce4世代でもローエンド向けとして戦力になるレベルに引き上げたのではないかというのが私の見解です。

もし、これが事実だとしてもそれでも使えるコアを設計したnVIDIAはやはりすごいというほかなく、さらにそれをGeforce 2MX発売当時はどれほど先進的なグラフィックチップであったかが伺えるのです。そうなると、nVIDIAの次なる一手に期待したいところです。