『X-BOX』

はじめに

Microsoftが投入したコンシューマ向けX-BOX。ゲームではありますが、Microsoftが開発しただけのことがありパソコンにも大きな影響を与えるだろうことは容易に想像がつきます。ここではX-BOXとそれがパソコンに及ぼす影響について考えてみます。

次に

2002年にMicrosoftは家庭用ゲーム機X-BOXを発売しました。X-BOXは単にMicrosoftが新しい分野に進出したといえばそれまでなのですが、実はPCの将来にも多大な影響力をもっていることも確かなのです。

Playstationはゲーム機として他を寄せ付けない圧倒的なシェアで家庭にあります。MicrosoftはPCを将来的には家庭でだれでも使える総合マルチメディアシステムにすることを目指しています。ところがゲーム機であるSONYのPlaystationが高度に多機能化し家庭用のマルチメディアシステムとなりつつあったため、Microsoftが将来PCでマルチメディアシステムを実現しても既に家庭で圧倒的なシェアを占めているPlaystationによって入り込む余地がなくなってしまうことを恐れシェアの分散を目的として投入したのがX-BOXの背景のようです。

そういう理由で投入されたX-BOXですが、OS、ハードその他中身はパソコンそのものです。

スペック

CPU PentiumIII 733MHz (PentiumIII 733MHzの二次キャッシュを128KBにして、パッケージをOLGA=Organic Land Grid Arrayにしたもの。)
Chipset nVIDIAのnForceをPentiumIII用にした程度のもの。
Graphic チップセット内臓(Geforce3のGeforce2程度の性能にしたものですが、正確にはnForceに近いかと)
Sound チップセット内臓 (nVIDIAのサウンド機能は優秀でPlaystationでも成し得なかったドルビーデジタル5.1chハードウェアエンコードを実現した。)
Memory nForceとはことなりシングルチャンネルのDDRを採用。ただしDDR400に相当する200MHz駆動のものを64MB使用。(Micron製)
HDD IDEのHDDを8GB搭載。(Seagate製) Controller:USB接続だがコネクタ形状は独自のものを採用。
OS Windows2000をカスタマイズ(大幅に改良され不要な機能をカットして500KB以下の容量になっているとか。) HDDではなくゲーム本体のDVD-ROMに入るので、ゲームによってカスタマイズでき、ゲーム開発時の最新版のものを使えるめに高性能化が可能。
API DirectXを採用

次に

スペックを見るとパソコンそのものであることが分かりますが、APIにDirectXを使っている点は特に注目すべき所です。 つまり、X-BOX用のゲームソフトはAPIにDirectXを利用するわけでパソコンに移植するのが非常に簡単になるのは明らかです。(マイクロソフトに言わせるとX-BOXのゲームをパソコンでそのまま動作させることは無理らしい。)

もし、X-BOXのゲームが移植されればX-BOXで使われたグラフィックコアであるGeforceが有利になることは当然ですし、以前Gride対応したゲームがVoodooのみで動作したようにX-BOXから移植されたゲームがGeforce系のグラフィックのみを動作環境とする可能性は充分にあります。X-BOXの普及とグラフィックカードメーカーのシェアは切っても切れない関係にあるのです。余談ですが、任天堂のゲームキューブをよく見るとATIのロゴがあります。あれはグラフィックコアにATIのチップが(正確にいうと、採用されたチップを作ったメーカーがATIに買収された)採用されているからです。

また、nVIDIAだけでなくグラフィック業界全体の性能向上につながる可能性も秘めています。グラフィックカードの性能は年々大きく向上していますが、そのすべての機能をフルに発揮したすばらしいゲームを作ってもそのゲームが動作する最新スペックのパソコンを持っている人は少なくゲームの売り上げが伸びなくなってしまいます。したがって、ゲームメーカーは多くのユーザーが使えるように最新の技術をあまり使わずに動作するゲームを作っていて、これがゲームの品質向上の足かせになっていました。ところがX-BOXから移植されたゲームはGeforce3程度の性能をもったグラフィックカードの機能をフルに使ったゲームです。このようなゲームが普及すればパソコンのグラフィック環境そのものが全体的に向上することは間違いないでしょう。

ところで、このXBOXで核となるパーツはCPUではなくグラフィックコアを内臓するnVIDIAのチップセットです。MicrosoftはAMDとIntelの両方にCPUの交渉を行っていて、最終的にIntelの大幅な値下げでIntelを採用したとのことです。実際に直前までAMDの方が優勢だったといい要するに安ければCPUはどちらでもいいということだったのでしょう。これからもCPUがXBOXにとってそれほど重要ではなかったことがわかります。

たしかに、ゲームに関してはCPUに負荷がかからないほどグラフィックコアが演算をしえしまえばCPUはほとんどやることがありません。XBOXに至っては、サウンド機能もチップセットがハードウェアでサポートしてしまったので、基本的にCPUはそれらのコントロールだけに使われることになります。実は、nVIDIAはパソコンでも同様にCPUではなくてチップセットがパソコンの中核を担うようにする野望があるようなのです。これに向けてnVIDIAはXBOXに使ったチップセットの小改良版のnForceをリリースしています。XBOXは、nVIDIAの野望の最終形態を表したものでもあるようなのです。