はじめに
RAGE 128 は1999年に 3D RAGE PRO の後継(実際にはそのマイナーアップ版の 3D RAGE PRO TURBO の)として発売されたグラフィックチップです。
1999年に発売された初 RAGE 128 は ハイエンド向けの RAGE 128GL と 廉価版・組み込み向けの RAGE 128VR の二種類で、グラフィックカードとしてはXPERT128 や RAGE Fury 及び All in Wonder 128 (RAGE 128GL) と XPERT 99 XPERT 2000(RAGE 128VR) などで採用されています。また、Macintosh でも RAGE Orion や Xclaim VR 128、Nexus128 (RAGE 128GL)などで採用されました。
主な仕様
- ATI Technologies 初の128bitグラフィックエンジン。
- 128bitメモリバス帯域。
- PCIとAGP(×2) の両方のスロットカードに対応。
- SDRAM又はSGRAMを最大32MBまで搭載可能。
- 250MHzのRAMDAC。
次に
このグラフィックチップは、先発の nVIDIA の RIVA TNT に対抗する形で投入された高速な2D/3Dチップで、名前こそ RAGE シリーズですが3D RAGE PRO TURBO までは RAGE 以前の Mach 64 の改良版に過ぎなかったのに対して RAGE 128 は全く新しいコアを採用しています。3D投画速度はRIVA TNTには若干速いものの Voodoo3 や RIVA TNT 2 比べると劣るようですが、32bitカラーでは高速になる(というよりも他のチップに比べて速度が低下しない)という特徴があり、これは次の世代のRADEONにも引き継がれています。
ATIの戦略は以前から最速ではないグラフィックチップを手ごろな価格で提供するというもので組み込み用チップのOEMを中心に高い支持を得ていました。今回のRAGE 128 も、3Dの速度こそそれほど高速ではないのですが2Dの描画能力には充分な性能があり、特にカラーマッチングなど発色には定評があります。このため出版や印刷など画像を扱う分野での需要が高いMacintosh で標準グラフィックとして採用され、Macintosh PoworMac G3 などに搭載されました。
さらに、MPEG デコーディングの機能の一部をハードウェアでサポートします。完全に RAGE だけでデコードすることは出来ませんが、CPUにあまり負荷をかけずにMPEG(DVD)のデコードが可能としました。
このように3Dもそこそこながら2Dでは充分な画質を提供し、MPEGデコード再生支援機能などの付加価値をつけた上で手ごろな価格で提供されたためにゲーマーを除く幅広いユーザーから支持されマイナーアップ版も含めてロングセラーを樹立しました。
RAGE 128 シリーズは多数存在して、さらにリテール品とバルク品では動作クロックが異なるなど多岐にわたります。
基本は第一世代の RAGE 128GL と RAGE 128VR で 128VR は 128GL のメモリバスを128bitから64bitに減らす代わりにDDR化をサポートしRAMDACの周波数を250から230に下げた製品ですが、実際にはDDRメモリを搭載した製品はほとんど出荷されなかったようです。RAGE 128GL/VR はAGP(2X)までしかサポートしていませんでしたが、途中で4Xに対応したRAGE 128GL 4X と 128VR 4X をリリースします。また、第二世代としてコアクロックとメモリクロックを引き上げ AGP(4X) に対応した RAGE 128 のマイナーアップ版の RAGE 128 PRO (RAGE 128 PRO GL 、 RAGE 128 PRO VR)もリリースされています。ほとんど内部に変更は加えら得ていないようで、純粋にクロックがアップした分性能が上がっています。
RAGE 128 シリーズは 90MHz程度のコアクロックに125MHz程度のメモリクロックでし、RAGE 128 PRO シリーズは125MHz程度のコアクロックに143MHz程度のメモリクロックのようです。また、RAGEMobility 128 はRAGE 128 PRO をベースにモバイル用に改良されたものでそれまでの RAGE Mobility よりもずっと性能が向上しています。
さて、RAGE 128 は高性能なグラフィックチップとしてリリースされましたが高性能はチップを要求す分野では RADEON がカバーし、高性能よりも安定性を重視する分野では3D RAGE PRO 程度でも充分だったため最近ではあまり見かけなくなりました。現在でも市場で一定のシェアを誇る RAGE シリーズですがこれはほとんど3D RAGE PRO 系です。
サーバー分野では枯れた安定性が評価され、RAGE XL が高いシェアを持っています。このグラフィックチップは 3D RAGE PRO に液晶接続用のTMDSトランスミッターを内蔵してRAGE 128 GL とピン互換を持ったものです。
また、モバイル分野で浸透している RAGE Mobility シリーズ(RAGE Mobility 128/Mobility-M4を除く)ですが、RAGEMobility は 3D RAGE PRO TURBO をベースに作られた3D RAGE LT PRO のマイナーアップ版です。
スペック
チップ名 | ベースとなったチップ | 内蔵メモリ | 最大外付けメモリ | 備考 |
---|---|---|---|---|
3D RAGE LT PRO | 3D RAGE PRO TURBO | なし | 8MB | RAGE Mobility シリーズのベースとなったチップ デスクトップ向けの 3D RAGE PRO TURBO をノート用に改良したもの |
RAGE Mobility-M | 3D RAGE LT PRO | 4MB | 4MB | 3D RAGE LT PRO に内蔵メモリを加え改良したもの |
RAGE Mobility-P | 3D RAGE LT PRO | なし | 8MB | 実際には RAGE Mobility-M から内蔵メモリを省いたもの |
RAGE Mobility-M1 | 3D RAGE LT PRO | 8MB | なし | RAGE Mobility-M から内臓メモリを 8MB に増強したもの |
RAGE Mobility 128 | RAGE 128 PRO | なし | 16MB | デスクトップ向けの RAGE 128 PRO をノート用に改良したもの |
RAGE Mobility M4 | RAGE Mobility 128 | なし | 32MB | AGP(4X)をサポート 名前からは RAGE Mobility-M のシリーズかと思われるが RAGE Mobility 128 の改良版。RAGE Mobility 128-M4 として欲しかった… |
主な特徴
ATIはRAGEの頃はほとんど組み込み用OEM以外に外販せず、自社製のカードを中心に販売していました。RAGE シリーズを搭載する主なグラフィックカードの特徴を下にまとめて見ました。RAGE 128 シリーズに限らず初代RAGEからです。
ラインナップ
カード名 | グラフィックチップ | メモリの種類と最大容量 | スロット | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
3D XPRESSION | 3D RAGE | SGRAM 4MB |
PCI | D-Sub15 | 初代 RAGE の製品です。すべてはここから始まった…。 |
3D XPRESSION+PC2TV | 3D RAGE II | SGRAM 4MB |
PCI | D-Sub15 ビデオ出力 |
3D RAGE II の主力製品。マイナーアップ版の RAGE II+ も使われた。 |
3D PRO TURBO PC2TV | 3D RAGE II | SGRAM 8MB |
PCI | D-Sub15 ビデオ出力 |
3D RAGE II のハイエンドモデル。マイナーアップ版の RAGE II+ も使われた。 |
All in Wonder | 3D RAGE II+ | EDO-DRAM 4MB |
PCI | D-Sub15 ビデオ入出力 チューナー |
初代 All in Wonder。 |
XPERT@Play | 3D RAGE PRO | SGRAM 8MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 ビデオ出力 |
3D RAGE PRO のハイエンドモデルモデル。 |
XPERT@Work | 3D RAGE PRO | SGRAM 8MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 | 3D RAGE PRO のビジネス向けモデル。 |
XPERT 98 | 3D RAGE PRO | SDRAM 8MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 | RAGE PRO マイナーアップ版の PRO TURBO も採用された。3D RAGE PRO の廉価版 |
XPERT@Play 98 | 3D RAGE PRO TURBO | SGRAM 8MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 ビデオ出力 |
RAGE PRO マイナーアップ版の PRO TURBO が採用されたXPERT@Play の後継 |
All in Wonder PRO | 3D RAGE PRO | SGRAM 8MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 ビデオ入出力 チューナー |
3D RAGE PRO TVキャプチャーモデル |
XPERT XL | RAGE XL | EDO-DRAM 4MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 | サーバーやビジネスなど高速な投画が求められない分野用で現在でも需要がある。価格的には 3D RAGE PRO の最廉価版となる。 |
XPERT 128 | RAGE 128 GL | SDRAM 16MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 | RAGE 128 主力モデル |
XPERT 99 | RAGE 128 VR | SDRAM 8MB |
AGP(2X) | D-Sub15 | RAGE 128 の廉価版 |
RAGE Fury | RAGE 128 GL | SDRAM 32MB |
AGP(2X) | D-Sub15 ビデオ出力 |
RAGE 128 ハイエンドモデル |
All in Wonder 128 | RAGE 128 GL | SDRAM 16MB/32MB |
PCI AGP(2X) |
D-Sub15 ビデオ入出力 チューナー |
RAGE 128 TVキャプチャーモデル |
XPERT 2000 | RAGE 128 VR | SDRAM 32MB |
AGP(2X) | D-Sub15 | 後発の廉価版 |
RAGE Fury PRO | RAGE 128 PRO GL | SDRAM 32B |
AGP(4X) | D-Sub15
ビデオ入出力 |
RAGE 128 PRO 主力モデル DVI-D出力付きやメモリ量などなどバラエティーがある。 |
XPERT 2000 PRO | RAGE 128 PRO VR | SDRAM 32MB |
AGP(4X) | D-Sub15 | RAGE 128 PRO 廉価版 DVI-D出力付きでメモリが8MBのバージョンがある。 |
RAGE Fury MAXX | RAGE 128 RRO GL ×2 |
SDRAM 32MB×2 |
AGP(4X) | D-Sub15 ビデオ入出力 チューナー |
RAGE 128 PRO ハイエンドモデル |
All in Wonder 128 PRO | RAGE 128 PRO GL | SDRAM 32MB |
PCI AGP(4X) |
D-Sub15 ビデオ入出力 チューナー |
RAGE 128 PRO TVキャプチャーモデル |