『メモリスロットとバンク』

はじめに

最近では大容量のメモリが増えて規格一杯にメモリを積むことは少なくなりましたが、少し古めのマザーボードを利用する際には搭載できるメモリの種類と最大容量には気をつける必要があります。

バンクとスロット

メモリの増設はスロットが空いていればそれだけ増設できる…、そう考えるのが普通ですが、実際にはそうでもない場合があるので初心者の方が『パソコンはなんだかよくわからない…』の原因になっているような気がします。

その原因はチップセットがサポートするメモリの最大量はスロットではなくバンクによって管理されていることからなります。たとえば、i815では合計6バンクまでサポートします。通常のDIMMはダブルサイドと呼ばれるもので一つで2バンク消費します。よって、6バンクサポートするi815にはこのダブルサイドと呼ばれるDIMMは3本搭載させることができるのです。

しかし、ダブルサイドというDIMMがあるということは、シングルサイドのDIMMも存在したりします。このシングルサイドのDIMMの場合は一つで1バンクしか消費しません。ということはシングルサイドのDIMMならば6本搭載させることができるというワケです。マザーボードメーカーの判断によっては、さすがに6本のメモリスロットを搭載させることはないですが4本のメモリスロットを搭載させることがあります。

この場合でも搭載できるメモリのバンク数は6バンクなので、ダブルサイドのDIMMを三本刺した場合は6バンク既に消費済みなので最後の1スロットは利用することはできません。4本のスロットを全部使えるのは、そのうち2本以上シングルサイドのDIMMが搭載されている場合のみというワケです。あと、当然ながらどんなに6バンクサポートしても2本しかマザーボード上にメモリスロットがなければ増設できるメモリは2本までとなります。

ダブルサイドとシングルサイド

DIMMメモリは設置面積的には片面に8個のメモリチップが搭載可能な設計で両面で計16チップ搭載することができます(メモリチップを二階建てにして増やすこともできるがあまり見かけない)。これは搭載可能な最大数でこれ以下ならば問題ありません。一般に両面にメモリを搭載しているものは一枚で2バンク消費するダブルサイドと呼ばれるタイプで、片面しかメモリを搭載していないものの中には1バンクしか消費しないシングルサイドのものがあります(片面だからといって全部が全部シングルサイドとは限らない)。

さて、スロットとバンクの関係が話題になるようになったのはi815の辺りからですが、どうしてそのようなことになったかというとi815が従来のi440BXよりもサポートするバンク数が少なかったのも原因の一つですが、メモリチップの高容量化も関係していたりします。

メモリチップが高容量化するのと同じようにアプリケーションの必要とするメモリの容量も増加するのですが、それ以上の速さでメモリチップの高密度化が進んだため必用なメモリ容量を提供するために使うメモリチップの数が減って片面しかメモリチップが搭載されていないシングルサイドのメモリーモジュールが多く出回るようになりました。

例えば128Mbit=16MBのメモリチップを16個搭載したメモリモジュールは256MBということになりますが、256Mbit=32MBのメモリチップならば8個で256MBを持つことができます。技術が進歩して高容量のメモリがそれほど難なく作れるようになると同じ容量ならばコスト的にはチップの数が少ない方が一般的には安くできることは予想がつきます。

先ほどの256MBのメモリモジュールもメモリチップ8個で作ったモジュールの方がコスト的には有利になるのですが、512MBのメモリと設計を同じにすることによって同じモジュールで16個メモリチップを乗せれば512MBとなり片側だけ8個しか乗せなければ256MBとなるように作ることが多いです。そのような場合に512MBのメモリーモジュールはダブルサイドになって256MBのメモリーモジュールはシングルサイドとなるのです。

わざわざこんな説明を加えたのにはワケがあり、例えば片面8個しかメモリチップが搭載されていなくてもモジュール基板を二つのバンクを消費するように設計すればダブルサイドのメモリーモジュールとなるからです。何れにせよ、シングルサイドと呼ばれるメモリーモジュールが多く出回るようになったためにi815チップセットのマザーボード辺りからシングルサイドのメモリーモジュールのことも考えてマザーボードメーカーは設計(スロットの数を決める)するようになったのです。

トラブル

もっともよく分からないトラブルは仕様的には動くハズなのに動かない場合でしょう。メモリーやマザーボードの低価格化によって粗悪なモジュールや基盤が売られるようになって久しいですが、そんな粗悪品だった場合は基盤のデキがわるいので信号が劣化したりパーツが正常に動かなくて一つくらいならなんとか動くのですが複数のメモリーを刺すとタイミングがとれなくて動作しないということがあります。

この辺になるとメモリウンヌンの話ではなくて相性とか品質の問題になってしまいますが品質が悪いものは買わないとか、メモリーに限らず仕様一杯には使わない(i815の場合はダブルサイドを3本までをサポートしますが2本くらいにしておく)などの配慮をすることでトラブルを避けることができるようです。この辺はもはや結構の熟練でも手を焼くものらしいのでわれわれ素人では手に負えませんから。

メモリチップの最大容量

例えばi440BXでは1GBまでの容量をサポートします。しかし、考えてみると8バンクまでサポートするのですから今時の1GBのメモリを4枚搭載させれば4GBまで搭載できるのではないか?と考えてしまいます。結論としては残念ながら1GBまでしかサポートしません。i440BXの仕様では256MBまでのメモリモジュールしかサポートしないのです。それはi440BXチップセットは128MBitメモリーチップまでしか認識できない為で、128MBitのメモリーチップを最大の16個搭載したダブルサイドのメモリーモジュールを4本搭載した状態、つまり1GBが最大ということになるのです。

さて、ここで感のいい人は気づいたかもしれません。そうです256MBのメモリーモジュールでもシングルサイドのメモリーモジュールは使うことはできません。シングルサイドは8個のチップで256MBの容量を実現しているのでメモリチップ一つの容量は256Mbitです。よってこのメモリーモジュールはi440BXでは認識することはできないのです。ただし、256Mbitのメモリーチップを使ったメモリーモジュールでもダブルサイドになるように設計されたモジュールについては設計によっては128Mbitのメモリーチップに見えるようになっている可能性もあるので購入時には確認してみるといいでしょう。

考えても見てください、わざわざシングルサイドではなくてダブルサイドにしたのにはワケがあるわけで、その筆頭に挙げられるのがダブルサイドにすることによってメモリーチップの容量を擬似的に下げて古いチップセットのマザーボードでも使えるようにすることです。まぁ、もっともトラブルを避けるには少し高くても16個乗ったダブルサイドのメモリーモジュールの方がいいと思いますが。