α7SのRAW現像 Image EdgeとLuminar Neoなど

はじめに

ズボラな性格なので、写真を一枚いちまい現像なんてしてられるか!ということでα7Sを購入してから保存設定(画質)はJPEGのエクストラファイン(X.FINE)にしていました。もともと、写真は文字通り『真実を写しとるものである!』という信念?を持っていたので、撮って出しで写真を楽しんでいたわけです。

ところが最近iPhoneの写真にだいぶ毒されてきまして、コンピュテーショナルフォトグラフィーでいい感じに画像処理された写真も悪くないかも、と思い始めてきました。考えてみれば、α7SもBIONZ Xという画像処理エンジンを搭載していて、いい感じな写真に仕上げているわけですし。

α7Sも購入してから7年以上たっているので最新のカメラに画質では敵いませんが、イメージセンサーはともかく、画像処理エンジンについてはRAWで撮って後からPCでガッツリ処理すれば最新のカメラよりも高画質な写真が期待できるのではないか?というのが今回のお話です。

こんな不純?な動機なので、他の多くの方が解説されているような一枚いちまい調整を重ねて追い込んでいくような現像は目指していません。旅行から帰ったら撮ってきた写真をまとめてサクッ現像していい感じの写真に仕上げるというのが目標です。

Image Edge View

まずは、ソニー純正のImaging Edgeというアプリを使って現像してみました。

現像を行うのはImaging Edge Editというアプリなのですが、これは1枚いちまい調整しながら現像するタイプのアプリで一括しての現像はできないようです。逆にImaging Edge Viewは画像管理アプリなのですが一括現像はこちらが対応していました。写真をまとめて(複数)選んで『現像出力』を選択、画質などを選んだら保存ボタンです。JPEGの『圧縮レベル:1 (高画質)』がだいたいエクストラファインと思われます。



純正ですからRAWで撮って、このアプリで現像すればカメラでJPEGで書き出したのとほぼ同じ写真がで出来上がる、と思っていた時期が私にもありました。。。上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がImage Edgeで作ったJPEGです。(容量の都合でJPEGをWEBPに圧縮していますので厳密なものではなく雰囲気をお楽しみください)


まず色味が明らかに違い、Imaging Edgeで作った方が黄色っぽい色に寄っています。解像感や明るさなども同じではないように感じます。もっとも、どちらが良い悪いというわけではなく、純正アプリを使っても、カメラのJPEGとは違った写真になるという事を押さえたいと思います。なお、Image Edge Editで一枚ごとに現像した結果もImage Edge Viewで現像したものと同じ結果でした。

ちなみにImaging Ediging Edge Editではカメラのプロファイル(クリエイティブスタイルと読んでいるもの)やホワイトバランスを変更できるので、撮影時にホワイトバランスをオートで撮影したけどやっぱり曇天の方が良かったというような場合も後から変更ができます。この機能はImaging Edgeに限らずいずれの現像ソフトも対応していまるようでした。

Photoshop Lightroom

続いて、おそらくもっともメジャーな現像ソフトと思われるPhotoshop Lightroomです。


人によって好みはあると思いますが、価格を除けばとりあえずこれを選んでおけば間違いはなし、と言えるほどド定番の現像ソフトだと思います。

Photoshop Lightroomの含まれる『フォトプラン』は高価なAdobeさんの中ではわりと良心的な価格設定だとは思うのですが、サブスクという料金体系である以上、使っている限りずっとお金が加算されていくというのは精神衛生上あまりよろしくないのも事実です。

とはいえ、定番といわれるだけあって使い勝手はとても良く、初めて使う人でも違和感なく使えると思います。左上の『写真を追加』でフォルダを選択し、画面下の写真から現像したい写真をガバっと選んで、右上の『共有』ボタンで書き出しを選べば現像できます。



上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がPhotoshop Lightroomで作ったJPEGです。(ともにWEBPに圧縮)


やはりカメラのJPEGとは違い、色味はImage Edgeよりさらに黄色っぽい色に寄ってコントラストも若干高めのようですが、解像感など全体的にバランスが良いように感じます。

さらに、ガバっと選んだ状態で右クリックしたポップアップメニューから自動設定を適用をすると、Photoshop Lightroomさんが各写真をイイ感じに調整してくれます。今回のテーマとしてはこれが求めていた機能と言えるかもしれません。


さすが世界のAdobe、鮮やかで綺麗な写真に仕上がっていると思います。情緒やリアリティなどの難しい議論は置いておいて、iPhone的な誰が見ても美しい写真に仕上がっているのは間違いないと思います。

Photoshop Elements

Photoshop Lightroomはサブスクで抵抗感があるという方は、廉価版のPhotoshop Elementsという選択肢もあります。Photoshop Elementsにも現像機能のCamera RAWが搭載されていて現像ができます。


また、あまり記事を見かけませんでしたが、複数ファイルのバッチ処理で複数ファイルをまとめて現像することもできます。ただバッチ処理を使うと現像の部分については設定ができないので完全にPhotoshop Elementsのおまかせになってしまうようです。


上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がPhotoshop Elementsで作ったJPEGです。(ともにWEBPに圧縮)


同じAdobeでもPhotoshop Lightroomとはだいぶ違った雰囲気で、かなり黄色や緑色によった色合いで手前の植物が瑞々しい雰囲気になっています。Photoshop Lightroomとは違う色合いですが、これはこれでバランスよく出来上がっていて好みの問題だと思います。

ただ、Photoshop ElementsのCamera RAWにもAdobe謹製の優秀な自動補正機能があるのですが、残念ながらバッチ処理では使えないようです。また、色空間もsRGBとなっていて(撮影時はAdobe RGB)バッチ処理では変更できなさそうです。

このあたりはあくまでPhotoshop Elementsは入門向けで、現像を色々とやりたいなら払うもの払ってPhotoshop Lightroomを使いなさいということなのでしょう。

ちなみに、Camera RAWを使って1枚ずつ現像する場合は自動補正も使えます。どうやらPhotoshop Lightroomとは自動補正のエンジンも異なるようで、さらに鮮やかな雰囲気の仕上がりです。


Photoshop 番外編

実は私はサブスクになる前の古いPhotoshopを持っています。最新の機能は使わないので使い慣れた古いPhotoshopを愛用しているわけですが、RAW画像は当時のカメラまでしか対応していないのでα7SのRAWファイルはそのままでは読み込めません。

そんな時は、Adobe謹製のAdobe DNG Converterで、α7SのRAWファイルを一旦Adobe DNG形式のファイルを変換してしまえば読み込むことができるようになります。α7Sに限らずわりと汎用性が高い方法なので活用して頂ければ。(Adobe DNGは各メーカーでバラバラのRAWファイルの標準化を目指してAdobeが開発したファイル形式です)



なお、Photoshopも(少なくとも私の持っているバージョンは)Camera RAWを使って1枚ずつ編集するような使い方が基本となるようなので、今回のテーマには向いていませんね。

Capture One Express(for Sony)

SONYはあまり積極的にアピールしていないのですが、Capture Oneのソニー専用版 Capture One Express for SONYが無料で利用できます。α7R IIIやRX100Vのサイトに特典として記載がありますが、Capture OneのサイトにはSONY用としか書かれておらずα7Sでも問題なく利用できます。

もともとExpressという無料版の位置づけなのでCapture Oneの製品版よりもかなり制限がかかっているようですが、細かい調整をせずに現像するという今回の目的であれば問題ありません。

このアプリも直感的に使いやすいインターフェースとなっていて、右上のインポートボタンで写真のフォルダを読み込んで、読み込んだ写真をガバッと選んで右上のエクスポートボタンから現像します。




上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がCapture One Express(for Sony)で作ったJPEGです。(ともにWEBPに圧縮)


ここで挙げた現像ソフトの中で一番カメラのJPEGに近いと感じる色合いで、手前の植物の色が若干異なっていますが空の雰囲気などそっくりだと思います。もちろんまったく同じというわけではないですが、カメラのJPEGに近い写真を現像したい場合は、Imaging EdgeよりもCapture Oneの方が良いかもしれません。

Capture OneもPhotoshop Lightroomと同じように写真をガバっと選んで一括して自動調整を行うことができます。

Photoshopシリーズの自動調整は良くも悪くもパット見で鮮やかになったと分かるものでしたが、こちらは自然な雰囲気で調整されており好みが分かれるところだと思います。(ホワイトバランスを自動調整の対象にすると色味が変わってイマイチだったので今回は外してあります)

無料で使えるということを考慮すればCapture Oneは文句なくオススメだと思います。デフォルトはカメラのJPEGに近い写真ですし、一括の自動調整もできるので今回のニーズにベストマッチです。ただ、SONYがあまり積極的にアピールしていないのが気になるところで、将来性が心配なのが玉にキズです。

SILKYPIX Developer Studio Pro 11

α7Sには付属していませんでしたが、色々なメーカーのカメラにこのシリーズの廉価版が添付されている事ので使っている方は少なくないのではないかと思います。アップグレード版が提供されているので、過去にこれらの付属版を持っている方は気持ちリーズナブルに買う事ができます(一応買う前に対象バージョンをご確認ください)。

カメラに付属していた古いバージョンは持っていますが、新しいのは持っていないので体験版をダウンロードして試してみました。このアプリもImage Edgeのように、写真をガバッと選んでメニューの現像から現像するタイプです。



上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がSILKYPIX Developer Studio Pro 11で作ったJPEGです。(ともにWEBPに圧縮)


ブラウザ上で見ると分かりづらいのですが、カメラのJPEGとはだいぶ違った印象で、やや淡い感じで良くも悪くも写実的な写真に感じました。まぁ紹介のアッサリさとコメントの辛口さからなんとなくお気づきかと思いますが、私はこの絵作りが好きじゃないんです、ええ完全に個人的な好みです(笑)。

とはいえ、この辺りは好みですので、このアプリをすでに持っている方はこの絵作りが好きなのだと思うので充分アリだと思います。

Luminar NEO

AIによりいい感じな写真に仕上げてくれるという比較的ライトな層向け?の現像アプリです。Luminar NEOは豊富なプリセットでワンステップでいい感じの写真を仕上げてくれるのが特徴なので、バッチ処理というよりかは一枚いちまいプリセットを選択していくような使い方が一般的で、解説サイトもそういうのが多いです。

ですが、実はLuminar NEOにも複数写真をまとめて現像する機能があり、しかも色々と設定もできるのです。やり方は、カタログ(写真の管理画面)で写真を選んでエクスポートを選択すると複数写真をまとめて現像できるというものです。



上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がLuminar NEOで作ったJPEGです。(ともにWEBPに圧縮)


LuminarもSILKYPIXと似たような、やや淡い写実的な写真です。ただ、Luminarは先ほどお話した通り複数写真をまとめて現像する機能でも色々と設定ができます。カタログ画面で適当な写真を選び、編集画面に移動、現像の設定を見るとプロファイルがLuminarデフォルトになっています。

どうもLuminarは写真に設定されたプロファイル(クリエイティブスタイル)に関係なくLuminarデフォルトが設定されるようなので、撮る時に設定したプロファイル(今回はVivid)を選択します。


カタログ画面に戻ると写真の右上に編集済みマーク?きます。写真を右クリックしたメニューに調整の項目があり、この設定をコピー、貼り付け、同期(選択した写真全部に設定を展開)などができます。再度エクスポートしてみます。



上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がLuminar NEOで作ったJPEGです。(ともにWEBPに圧縮)


先ほどと雰囲気が変わって、今度はImage Edgeに近い雰囲気の写真だと思います。もっとも、色々と調整してImage Edgeと一緒なら最初からImage Edgeを使えばいいじゃんという話になりますが、Luminar NEOでは同じ要領で他のパラメーターも一括して複数の写真に設定して現像できます。

例えば、編集画面の補正の『アクセント』を調整するとちょっと今どきのスマホライクな写真にになりますよね。


Luminarは全ての写真で同じ設定で現像することもできれば、面倒でなければ一枚いちまい異なる設定にすることも、いくつかに分けて複数枚ずつ同じ設定にすることもできます。また、Photoshop Elementsと同じように、撮影時に設定したクリエイティブスタイルやホワイトバランスを変更できますので便利です。

ちなみに、Luminar NEOの画像処理機能は本当にすんっごいので、下の写真のようにやりすぎると迷走します(笑)。ほどほどに。


DxO PureRAW 2

ワンタッチでRAWデータをいい感じに処理(補正)してくれるというDxO PureRAW 2、お手軽に高画質な写真ができるという触れ込みだったので、早速体験版をダウンロードして試しみました。使い方は今までで一番簡単、ガバッと写真を入れて右上の『画像を処理』ボタンを押して設定すれば完了です。



上が『RAW+JPEG』でカメラが作ったJPEGで、下がDxO PureRAW 2で処理したJPEGです。(ともにWEBPに圧縮)


正直なところ、目に見えてイマイチ。カメラのJPEGに比べて解像度が落ちてボヤけている上に発色もよくない印象で、(カメラは普通なので)オールドレンズの写真との相性が良くなかったのかもしれません。お手軽で使い勝手が良さそうなだけに残念です。

一応気になったので、他の写真とかも色々と試したところ、たしかに色収差とかを補正したりはしているようなので、そういう要素が多くなるオールドレンズで撮った写真とは相性が悪かったようです。

まとめ

・純正アプリのImage Edgeで現像してもカメラのJPEGとはちょっと異なる写真になる。

・RAWで撮影するが基本は調整せずJPEG保存で気に入った写真のみじっくり現像する場合は、カメラの『RAW+JPEG』を使うかソニー純正のImaging Edgeか無料のCapture Oneで現像するのが良さそう。

・撮った写真を全部まとめてコンピュテーショナルフォトグラフィーでいい感じの写真にする場合は、RAWで撮影してPhotoshop LightroomやLuminarでちょいパラメータ弄って一括現像するのが良さそう。

・RAWの場合はクリエイティブスタイルやホワイトバランスを後から変更できる。

(おまけ)カメラ側の設定

α7Sの写真の保存設定は、RAW、RAW+JPEG、エスクトラファイン、ファイン、ノーマルの5段階です。いきなりRAWオンリーにすると、やっぱやめたと思った時に困るのでRAW+JPEGをチョイスしました。ここで気になるのはRAW+JPEGのJPEGの画質ってなんなのさ、という事ですが、結論から言うとファインの画質のようです。

今までエクストラファインで撮っていたので、RAW+JPEGのJPEGではワンランク画質が落ちてしまいますが、正直なところ大きなディスプレイで拡大しながら比較すればなんとなく?という程度でそこまで違いは感じられないというのが私の感想です。そうは言っても、気になるのが写真好きの性というの。だから今までエクストラファインで撮っていたわけですよ。

ちなみに、SONYの新しいカメラだとその辺が改善されていて選べるようです。

(おまけ)RAW

α7SのRAWは14bit(サイレント撮影、バルブ、連写などは12bit)なので、8bit出力のJPEGよりも広いダイナミックレンジを持っています。とはいえ、現在でもモニターも含めてほとんどが8bitが前提でシステムが構築されているのでJPEGで充分に事足りますが、露出調整など画像処理を行う場合はこの余裕代が効いてきます。

最初から8bitのデータでは、コントラストを上げれば階調が滑らかではなくなりますし、白飛びや黒潰れはどうにもなりません。ですが、元が14bitのデータであればそれらをある程度許容できるようになります。

本来はカメラのイメージプロセッサが14bitのRAWデータを上手に処理して8bitのJPEGに書き出しているワケですが、α7Sの場合はそれが7年前の設計のエンジンですから今となっては旧式です。そう考えれば、カメラのイメージセンサが捉えた本当の写真を、RAW + PCでの現像は最新のイメージプロセッサで引き出していると言えなくもないでしょうか。