IDE

はじめに

現在HDDやCDドライブの標準インターフェースとして君臨するIDEインターフェース、規格名がATAでそちらで呼ばれることも多いですが基本的に同じ物を指します。ここではIDEについてお話します。

IDEとは?

IDEはIntegrated Drive Electronicsのことで、COMPAQに組み込む安価なHDD専用のI/Fとして開発されたものです。基本的には安価にするために簡単な仕組みにして高価なコントローラチップを省き変わりにCPUに処理させるものでしたが、最近ではインテリジェント(高性能な)コントローラチップを搭載して高速にCPUに負荷をかけずに処理をできるようになりました。現在はHDDだけでなくCD-ROMやMOなど内臓ドライブの標準的なインターフェースの地位についています。

IDEの仕様

IDEはI/Fの名称で、仕様はANSIが規格化したATA規格というものに基づいて定められています。 IDEという規格は本来528MB以下の容量をもつHDD専用I/Fのことで、現在私たちが利用している528MB以上のHDDやCDなどのドライブを利用可能しているIDEI/Fは厳密にはIDEの上位規格のE-IDE(Enhanced IDE)のことです。

ATA規格

規格 I/F PIO Ultra DMA 俗称 速度 HDD以外 備考
ATA IDE PIO1/PIO2 × IDE 3.3MB/s(PIO1)
5.2MB/s(PIO2)
× -
ATA-2 E-IDE PIO3/PIO4 × - 16.6MB/s(PIO4) ATAPI -
ATA-3 信頼性などが向上
ATA-4 UltraATA/33 UltraATA/33 33MB/s HDDの規格に統合 -
ATA-5 UltraATA/66 UltraATA/66 66MB/s -
(ATA-6)仮 UltraATA/100 UltraATA/100 100MB/s ANSIにて現在策定中
(ATA-7)仮 UltraATA/133 UltraATA/133 133MB/s ANSIにて現在策定中
Serial ATA Serial ATA - - SATA/1500 150MB/s シリアル方式を採用

※ATAとIDEは一部異なることがある。
※Serial ATAでPIOモードの存在は不明。

IDEの歴史

1986年にCOMPAQとConner(Seagateが買収)がCOMPAQのPC/AT互換機用のHDD(とそのI/F)として開発したものです。余談ですが開発もとのCONNER社の資料にはIDE:IntelligentDrive Electronicsと書いてあるとか。

このIDEの構造はWestern DigitalとIBMが開発した、Seagate製HDDのI/FであるST506規格を採用したISAバス用I/F CardのWD-1003をST506規格のHDDに内臓したような構造でした。ということは?つまり、IDE I/FはISAバスをHDDまで引っ張ってきたってことになりますよね?実際にIDEI/FはほとんどISAバスと同様の構造をとっていたためI/Fの構造が単純で安価に生産することができ、PC/AT互換機のトップメーカーとして破竹の勢いでシェアを広げるCOMPAQのパソコンとともにIDEは爆発的な広まりを見せることになるのです。

IDEがもともとCOMPAQのパソコン用HDDのI/F用に開発されたため規格が明確ではなく、各社から統制のとられない上位互換が乱立してしまったのでHDDドライブメーカー各社が集まってCAMという委員会を作りATA(ATattachment)という統一規格を作ります。

1988年には米国規格協会(日本のJISみたいなの)によってATA規格は正式に認可されます。

1994年にWestern Digitalが、IDEでは規格上528MB以下のHDDのみを2台までしか接続することができなかったものを改良して、8.4GBまで対応させ2台のHDDを搭載できるチャンネルを2つもつことで4台まで搭載でき、CD-ROMなども搭載接続可能にしたE-IDE(Enhanced-IDE)というIDEの上位I/Fを作りました。1996年にANSIによってATA-2という規格で統一されます。CD-ROM等のHDD以外の規格はATAPI(ATApacket interface)としてまとめられました。

1997年にはATA-3という規格がANSIによって策定されますが、こちらはハードウェア監視機能など信頼性に関する性能の向上が主でスペック的にはATA-2とあまり変わりませんでした。

1998年には同じくANSIよりATA-4が規格かされます。ATA-4はUltraATA/33、UltraDMA/33という転送モードが加えられてCPUに負荷をかけずに高速に転送することができるようになります。ATA-4にはそれまでATAPIという別の規格にまとめられていたCDなどHDD以外の機器用の規格も吸収して統合しました。この為ATA-4はATA/ATAPI-4と書かれたりもします。

IDEではもともとPIOとDMAという転送方式をサポートしていました。PIO方式はProgram I/O transferのことで、CPUがHDDを直接コントロールする方式です。もともと、IDEはコントロールをCPUにさせることにより高価なコントローラを搭載せずに安価に生産するために作られたI/Fだったのと、低性能なコントローラで処理するよりもCPUが処理した方が高速だったのでATA-4以前はこちらが使われてました。

DMAモードはHDDへの転送をCPUを介さずにコントローラチップ行う方式です。DMAはDirect Memory Access transferのことでDMAcontrollerコントロールすることでCPUに負荷をかけずにメモリのデータを読み書きできる方式です。近年になって安価なIDEでも高速でCPUに負荷をかけない方式が必要となりました。そこでATA-4ではIntelとQuantum(Maxtorに買収)が開発したUltraDMA方式が規格としてとりいれられPIO方式のとき最大16MB/sだった転送速度と同じクロック数で33MB/sを誇るUltraATA/33、UltraDMA33モードをサポートしたのです。

同年にIntelとQuantumがさらにクロックを上げて最大転送速度を66MB/sにしたUltraATA/66を発表し、2000年にはANSIによってATA-5として規格化されます。同年には同じくIntelとQuantumがさらに高速化して100MB/sにしたUltraATA100を発表しました。すでに製品自体は登場していて、まだANSIには認可されていませんが近いうちにATA-6として規格化される予定です。

UltraATA/66以降はノイズ対策のため、ケーブルがそれまでの40ピンのIDEケーブルからコネクタ形状は同じながら各ケーブルの間にグラウンド線を挟んだ80本の線を持つ専用ケーブルが必要とされます。(植木算的に考えると78本になると思うのは私だけ?)ちなみに、UltraATA/100はさらに高速化してノイズに弱くなっていると思われますが、規格的にはUltraATA/66のケーブルでよいとされています。

2001年にはそれまでHDDメーカーの規格策定のリーダーシップをとってきたQuantumを買収したMaxtorがそれを引きつぎ、UltraATA/100をさらに高速化したUltraATA/133を発表しました。ただ、すでにIntelなどはSerialATAを進める方針なようで普及はしたもののそれほど重要な規格とはならなかったようです。(HDDの実際の転送速度が100MB/sになる前にSerialATAが普及すると見られるためUltraATA/100のインターフェースでもUltraATA/133でもどちらでもいいから。)

IDEはパラレル転送方式を採用しますが、コードが太く短くなってケース内で邪魔な上、ノイズに弱くある程度以上の高速化が難しいという欠点がありました。そこでIDEのシリアル化が考えられ、2000年にSerialATAが策定されました。 Serial ATAはATAがANSIが規格策定機関として大規模すぎるため策定に時間がかかったのを踏まえSerialATAは開発に携わる企業を集めて作ったSerial ATA Working Groupによって規格の策定を行いました。 2002年ごろにはHDDを含め各種製品が登場しており、2003年にはIntelの主力チップセットに機能が統合されました。現在はSerialATA/1500と呼ばれる150MB/sの転送速度を誇るものが主流ですが、転送速度を倍にしたSerial ATA II(Serial ATA/3000)などが発表されています。

IDEの利点

IDEの利点は次の点でしょう。

IDEが安価なI/Fを作ることを目的に作られた経緯からも他の機器よりも構造がシンプルで比較的安価なものが多いようです。しかしながら、IDEも年々進歩していて昔と違いコントローラなどが改良された結果、実用上は充分といえるほどの性能を誇るようになりました。IDEならば安い速いウマイのです。

また、すでにIDEはチップセットにコントローラが内臓され、内臓ドライブの標準的なI/Fとして普及している為、ソフトやドライバなどの対応よく製品の種類も豊富なです。また、IDEはかなり互換性の高い製品で、端的には最新のUltraATA/133のインターフェースにIDE用の528MBのHDDを取り付けても原則動きます。容量の関係でその逆は無理ですが、可能な限り互換性があることはパーツの将来性を考えると有利だと思われます。(互換性はありますが、ATA-4以下の機器を同じチャンネルに搭載すると古いほうの規格に合わされるのでパフォーマンス面で不利になります。)