はじめに
Athlonは1999年にAMD-K6(正確にはその改良版であるAMD-K6 III)の後継として発売されたx86互換CPUです。
開発コードネームはK7で、x86互換CPUながら独自のプラットホームを採用して本家IntelのハイエンドCPUと対抗したCPUです。ハイエンドのPentium系CPUと互角の性能を低価格でリリースする形をとり、それまでローエンドむけ専用だった互換CPUの地位を対等な立場まで引き上げた製品で、現在でもそのブランドは続いておりハイエンドユーザーや自作マニアを中心にメーカー製も含めて幅広い層に人気があります。
写真

主な仕様
Athlon
- 独自プラットホームを採用。
- EVバスプロトコルを採用して200MHzのFSB(クロックは100MHz)。
- 128KBの一次キャッシュ。
- 512KBの二次キャッシュ
スペック
チップ名 | Athlon |
---|---|
開発コードネーム | K7 |
一次キャッシュ | 128KB |
二次キャッシュ | 512KB |
FSB | 200MHz(クロックは100MHz) |
クロック | 500-700MHz 50MHz刻み |
パッケージ形状 | Card Module |
対応スロット | SlotA |
コア電圧 | 1.6V |
プロセスルール | 0.25μ |
ダイサイズ | 184mm2 |
トランジスタ数 | 2200万個 |
拡張命令 | MMX/Enhanced 3D Now |
分類 | RISC |
その他 | - |
特徴
AthlonはAMDが開発したそれまでのIntelのプラットホームを利用した互換CPUではなくx86互換CPUながら独自プラットホームを利用するCPUです。CPUバス(FSB)にはクロック100MHzのDDR動作として200MHz相当の転送力を誇りIntelのPentium系と互換性のない独自のバスです。このバスはAlphaが開発したEV6をベースに開発されていて、チップセットとP2P(ポイントto ポイント)で接続されます。この構造はPentiumとは異なった(デュアルCPU)の構造をとることになります。
AthlonはPentiumPRO系同様にスーパースケーラアーキテクチャ構造をとり、9本のパイプライン10段を搭載して最大9命令を同時に実行できる構造になっていて、さらに浮動小数点演算も完全なパイプライン構造にして3本のパイプライン15段により最大3命令を同時に演算できるようになっていました。これによりK6-IIIの弱点であった高クロック化の難点と浮動小数点演算の弱さを克服しました。
AMD K6の2倍、PentiumIIIの実に4倍にあたる128KBの一次キャッシュをコアに内臓しまし、二次キャッシュに関してはIntelがPentiumPROからPentiumIIの時にとったのと同じようにパッケージ形状をさせて別チップを搭載することで高価格化を防ぎました。ただし、別チップの二次キャッシュの高クロック化は容易ではなくK75コアで高クロック化されるのについてゆけずにコアと倍率が開いてしまいました。
IntelのPentium4はクロックほど性能が高くない為、逆に同じ性能ならばAthlonの方がクロックが低くなってしまいます。消費者の多くがクロック=性能に近いイメージを持っていてAthlonの売れ行きに影響がでるため、AMDではPalominoからそれまでのクロックによる製品分類ではなくモデルナンバーという数値での製品出荷を始めました。
モデルナンバーは『この程度周波数のPentium4と同程度の性能をもつよ』という数値で、実はAMDは以前にも『Pentiumでこの程度の性能』をあらわすPレートと呼ばれる数値を発案したのですが、AMD自身が勝手に言ってただけで、どうもウサンくさく市場に受け入れられませんでした。この教訓を生かして今回はAMDが他の機関に依頼して検査しているとかでもう少し信憑性がおかれるようです。事実Pentium4のクロックに対する性能の評価が低かったことも手伝って、現時点ではモデルナンバー=Pentium4の周波数と考えても問題ないという感じになっています。
ラインナップ
Athlonにはプロセスルールの変更や二次キャッシュの統合他多くの種類が存在しています。
チップ名 | Athlon | Athlon | Athlon |
---|---|---|---|
開発コードネーム | K7 | K75 | Thunderbird |
一次キャッシュ | 64KB | 64KB | 64KB |
二次キャッシュ | 512KB(コアの半分の速さで動く) | 512KB (750-850=2/5 900-1000=1/3) |
256KB(コアと同速度で動く) |
FSB | 200MHz(クロックは100MHz) | 200MHz(クロックは100MHz) | 200/266MHz (クロックは100/133MHz) |
クロック | 500-700MHz 50MHz刻み | 550-1000MHz 50MHz刻み | 650-1400MHz 100MHz刻み 1133/1333MHz |
パッケージ形状 | Card Module | Card Module | Card Module/FC-PGA |
対応スロット | SlotA | SlotA | SlotA/SocketA |
コア電圧 | 1.6V | 1.6-1.8V | 1.7-1.75V |
プロセスルール | 0.25μ | 0.18μ | 0.18μ |
ダイサイズ | 184mm2 | 125mm2 | 120mm2 |
トランジスタ数 | 2200万個 | 2200万個 | 3700万個 |
拡張命令 | MMX/Enhanced 3D Now | MMX/Enhanced 3D Now | MMX/Enhanced 3D Now |
分類 | RISC | RISC | RISC |
その他 | - | 0.18μのアルミニウム配線 | 一部の製品で0.18μの銅配線 |
チップ名 | Athlon | Athlon MP/XP | Athlon MP/XP |
開発コードネーム | Palomino | Thoroughbred | Barton |
一次キャッシュ | 64KB | 64KB | 64KB |
二次キャッシュ | 256(コアと同速度で動作) | 256(コアと同速度で動作) | 512KB(コアと同速度で動く) |
FSB | 266MHz(クロックは133MHz) | 266/333MHz (クロックは133/166MHz) |
333/400MHz (クロックは166/200MHz) |
クロック | 1.333-1.733GHz 66MHz刻み | 1.46-2.25GHz | 1.833- |
パッケージ形状 | FC-PGA | CPGA | CPGA |
対応スロット | SocketA | SocketA | SocketA |
コア電圧 | 1.75V | 1.6-1.65V | 1.65V |
プロセスルール | 0,18μ | 0.13μ | 0.13μ |
ダイサイズ | 128mm2 | 84mm2 | 101mm2 |
トランジスタ数 | 3750万個 | 3760万個 | 5430万個 |
拡張命令 | MMX/3D Now Professional | MMX/3D Now Professional | MMX/3D Now Professional |
分類 | RISC | RISC | RISC |
その他 | 0.18μの銅配線 | - | - |
※Athlonにはモバイル版が存在して電圧他スペックが多少異なり名称もいろいろある。
※電圧はステッピングやクロック他MPとXPなどによっても異なる場合もある。
※Athlonシリーズはそれぞれ内部回路でも多少変更が加えられている。
第三世代のThunderbirdで二次キャッシュを統合して、パッケージもカートリッジ式からPGAになりました。その後はプロセスルールや二次キャッシュなどが主な変更点で内部は最適化が進められた程度の変更です。AthlonはThoroughbredのAthlonMPからデュアルに正式対応しましたが、実際には最初からデュアルで動作する構造になっていてもっとも初期(K7あたり)を除いて対応していてたようです。