はじめに
AMD-K6は1996年にAMD-K5の後継として発売されたPentium互換CPUです。
開発コードネームはK6で、Pentium互換CPUながらPentium Pro並みの性能で低価格だったためにローエンドむけパソコンに人気があったのに加えて、Pentium時代の資産が生かせるということでハイエンドユーザーにも人気がありました。
写真

主な仕様
AMD-K6
- 64KBの一次キャッシュ。
- Socket5/7互換。
- Pentium Pro並みの演算能力。
- MMX互換の命令実行系を搭載。
スペック
チップ名 | AMD-K6 |
---|---|
開発コードネーム | K6 |
一次キャッシュ | 64KB |
二次キャッシュ | - |
FSB | 66MHz |
クロック | 166/200/233MHz 233/266/300MHz |
パッケージ形状 | CPGA |
対応スロット | Socket5/Socket7 |
コア電圧 | 2.8/2.2V |
プロセスルール | 0.35/0.25μ |
ダイサイズ | 162mm2 |
トランジスタ数 | 880万個 |
拡張命令 | MMX |
分類 | RISC |
その他 | - |
※電圧はクロックやステッピングによって多少異なる。
特徴
AMD-K6は、合併したNexGen社のx86互換プロセッサのNx686をベースに開発されたプロセッサです。Nx686はRISCプロセッサでPentium Proと同様に二次キャッシュを統合するタイプで同クロックのPentium Pro以上の性能がでると評価されていました。AMD-K6ではコスト削減のために二次キャッシュを取り除いて一次キャッシュを増強しさらにCPUバス(FSBのこと)をPentium互換にしたものでMMX命令もサポートします。
AMD曰く初めて本家よりも速い互換プロセッサといわれその演算能力はかなりたかいものでした。AMD-K6はSocket5/7に対応した互換プロセッサですが、世代的には六世代目なのでPentium Pro世代となります。
Pentium/PentiumProの4倍、MMX PentiumやPentiumIIの2倍という高容量の一次キャッシュを内臓して、7本でパイプライン6段を実装して高速に演算が行えるのに加え、トランジスタ量がPentiumIIよりも多いのに関わらず最適化やC4テクノロジと呼ばれる集積化技術でダイサイズがPentiumIIよりも小型化しました。この結果同程度の性能をもつCPUがより低価格で出荷できるようになりコストパフォーマンスの高いCPUとなったのでした。
IntelはPentium ProやPentiumIIでは設計上の理由からあれほど人気のあり資産も豊富なPentiumのプラットホームと互換性のないプラットホームに移行してしまいました。AMD-K6はそのPentium ProやPentiumIIと同等の性能をもちながら、既存のPentiumのプラットホームが利用できるということでIntelが急速にSlot1に移行しようとしていた当時にSocket5/7の延命措置として広く受け入れられました。
その後も高価で手の出しにくいSlot1に対して安価でなじみのあるSocket5/7を使ったAMD-K6は、CPU自体の価格の安さもあってアンチIntel派などパワーユーザーを中心に市場を二分極化していくことになります。性能が同等で安価なAMD-K6マシンは当時の1000$PCのCPUとしてメーカーからも利用されAMDのシェアと知名度はいやがおうにも高まっていきました。
AMDを中心にチップセット互換メーカーらはSocket5/7の規格にも手を加えて改良してSuper7なるものを規格します。これはSocket7を改良して100MHzのFSBに対応させたもので、古いSocket5/7などとは互換性は損なわれていくことになります。しかし、性能が高ければIntelのプラットホームに互換性がない独自プラットホームでも人気がでることがわかったのです。くしくもIntelはPentiumの後継であるPentiumIIのプラットホームであるSlot1の互換CPUを作ることに対してなかなか首を縦には振らずにAMDはついに後継のK7で独自プラットホームを構築して対等な関係で競争していくことになったのでした。そのことからもその礎となったAMD-K6の意義は大きかったと思われます。
ラインナップ
AMD-K6には多くの種類が存在しています。実際にはAMD-K6はPentium Pro対抗で、PentiumII対抗としてAMD-K6-2、同様にPentiumIII対抗としてAMD-K6IIIをリリースしています。
第2世代のAMD K6-2はその小さなダイサイズを活かして極めて低価格で売られたために互換CPU空前の大ヒットとなります。しかしながら、第3世代のAMDK6-IIIは性能は高かったのですが、対抗品であるPentiumIIIにくらべてコア設計が古く高クロック化しにくかったためにクロックで差をつけられてモバイルやローエンド向けなど一部の市場を除いて消えていくことになりました。
チップ名 | AMD K6 | AMD K6-2 | AMD K6 III |
---|---|---|---|
開発コードネーム | K6 | AMD-K6 3D | Sharptooth |
一次キャッシュ | 64KB | 64KB | 64KB |
二次キャッシュ | - | - | 256KB(コアと同速度で動く) |
FSB | 66MHz | 66/95/100MHz | 100MHz |
クロック | 233-300MHz | 233-550MHz | 450/475/500MHz |
パッケージ形状 | CPGA | CPGA | CPGA |
対応スロット | Slot1 | Slot1/Socket370 | Socket370 |
コア電圧 | 2.8/2.2V | 2.1-2.3V | 2.0V |
プロセスルール | 0.35/0,25μ | 0.25μ | 0.25/0.18μ |
ダイサイズ | 162mm2 | 81mm2 | 118mm2 |
トランジスタ数 | 750万個 | 930万個 | 2130万個 |
拡張命令 | MMX | MMX/3DNow! | MMX/3DNow! |
分類 | RISC | RISC | RISC |
その他 | - | - | - |
※AMD-K6にはモバイル版が存在して電圧他スペックが多少異なり名称もいろいろある。
※電圧はステッピングやクロックなどによって異なる場合もある。
※ダイサイズはプロセスルールやスペックアップで変わることがある。
※AMD-K6シリーズはそれぞれ内部でも多少変更が加えられている。