はじめに
PentiumIIは1997年にPentium Proの後継として発売されたCPUです。名前の示すとおりコンシューマ向けにはPentiumの後継として位置づけられました。
開発コードネームはKlamathで、Pentium ProをベースにPentium Proの欠点とされた16bit演算の処理速度の向上と形状の変更により価格の引き下げを行い、既にPentiumでも採用されていたMMX拡張命令を搭載しました。機能的にはMMX Pentium Proとでもいうべき製品でしょう。
写真

主な仕様
Pentium II
- パッケージにSECC=Single Edge Connector Cartridgeを採用。
- 二次キャッシュをカートリッジ基板上に配置。
- MMXを搭載。
- 32KBの一次キャッシュを搭載。
スペック
チップ名 | Pentium II |
---|---|
開発コードネーム | Klamath |
一次キャッシュ | 32KB |
二次キャッシュ | 512KB(コアの半分の速度で動く) |
FSB | 66MHz |
クロック | 233/266/300MHz |
パッケージ形状 | SECC |
対応スロット | Slot1 |
コア電圧 | 2.8V |
プロセスルール | 0.35μ |
ダイサイズ | 203mm2 |
トランジスタ数 | 750万個 |
拡張命令 | MMX |
分類 | RISC |
その他 | - |
特徴
Pentium IIは、CPUとしては初めてカートリッジ形状のCPUになっています。PentiumIIIの後期で再びPGAパッケージに変更されているのでこの試みは失敗かと思われえる方もいるかもしれませんが、そうではありません。
Pentium Proの欠点として高速な二次キャッシュを統合した反面、パッケージが大型化して製造が難しく価格が向上してしまいました。さらにコアと同スピードで動作する自社製の高速なSRAM二次キャッシュ自体が高価でこれも価格を引き上げる要因となってしまいました。
そこで、形状をPGAからカートリッジ状に変更して中の基盤にコアと二次キャッシュを搭載するという方法をとったのです。搭載される二次キャッシュはメモリメーカーからのOEMとして、さらにカートリッジを採用したために搭載する二次キャッシュの物理的な大きさに余裕があったので容量を通常の倍(Pentium Proは二次キャッシュの容量が複数用意されている商品もあったが一般的には256KBが多かった)にする代わりに速度をコアの半分とすることで価格の引き下げを狙いったのです。
しかし、PentiumIIIの後期ではプロセスルールが微細化したために二次キャッシュがコア内に統合されたので二次キャッシュを別途用意しないのでカートリッジにする必要がなく再びPGAパッケージに変更になったのです。
コンシューマ向けに出荷するために、Pentium Proの苦手とした16bit演算を強化して、さらにPentiumでは既に搭載された製品も登場していたMMXの拡張命令を統合しました。なお、一次キャッシュもMMXPentium同様に32KBに増強されています。
PentiumIIにはデスクトップ向けには二種類のコアが存在しています。DeschutesのコアはFSBが100MHzに対応したものがあることを除けば性能的にはKlamathとさほど変わりません。
特徴
チップ名 | Pentium II | Pentium II |
---|---|---|
開発コードネーム | Klamath | Deschutes |
一次キャッシュ | 32KB | 32KB |
二次キャッシュ | 512KB(コアの半分の速度で動く) | 512KB(コアの半分の速度で動く) |
FSB | 66MHz | 66/100MHz |
クロック | 233/266/300MHz | 266/300/333MHz 350/400/450MHz |
パッケージ形状 | SECC | SECC/SECC2 |
対応スロット | Slot1 | Slot1 |
I/O電圧 | 2.8V | 2.0V |
プロセスルール | 0.35μ | 0.25μ |
ダイサイズ | 203mm2 | 131mm2 |
トランジスタ数 | 750万個 | 750万個 |
拡張命令 | MMX | MMX |
分類 | RISC | RISC |
その他 | - | - |
※このほかモバイル市場向けに、開発コードネームDixonと呼ばれる二次キャッシュをCPUコアに内臓したものもある。