はじめに
Pentium4は2000年にPentiumIIIの後継として発売されたCPUです。
開発コードネームはWillametteで、FSBを400MHz(クロックは100MHz)に上げて、SSE2拡張命令をサポートしました。NetBurstアーキテクチャと呼ばれる構造をとりパイプラインの段を20段に増やして高クロック化をしやすくするとともに分岐予測をより強力にしました。
写真

主な仕様
- NetBurstアーキテクチャで高クロック化を容易にした。
- ボトルネックになっていたFSBを400MHz(クロックは100MHz)に上げた。
- SSE2命令をサポートした。
スペック
チップ名 | Pentium 4 | 備考 |
---|---|---|
開発コードネーム | Willamette | |
一次キャッシュ | 20KB | 実行トレースキャッシュ12KB データキャッシュ8KB |
二次キャッシュ | 256KB | |
FSB | 400MHz | クロックは100MHz |
クロック | 1.3GHz-2.0GHz | 発売当初は1.4-1.6GHzだった。 |
パッケージ形状 | FC-PGA2 | |
対応スロット/ソケット | Socket423/Socket478 | 発売当初はSocket423だった。 |
コア電圧 | 1.7V | - |
プロセスルール | 0.18μ | |
ダイサイズ | 217 mm2 | |
トランジスタ数 | 4200万個 | |
拡張命令 | MMX/SSE2 | |
分類 | RISC | |
その他 | - |
特徴
Pentium4は、Pentium Proから5年間使われてきたP6アーキテクチャを一新してNetburstアーキテクチャを使ったのが最大の特徴です。アーキテクチャというのはCPUの構造のことでNetburstアーキテクチャの特徴は、パイプラインの段を20段に増やして高クロック化をやりやすくし、P6アーキテクチャでいう命令キャッシュの内容を変更した点などが特徴です。
パイプラインについて詳しくは『Column 07』を参照してください。
Pentium 4ではパイプラインの数が増えたことによる分岐ミスの増大を防ぐために分岐予測の精度を向上させました。しかしながら分岐ミスの発生頻度は上がってしまい、同周波数のPentiumIIIよりも性能が劣るようで発売当初、高クロック版が登場するまでは散々な評価を下されてしまいました。現在はそれを補えるだけのクロックや二次キャッシュの増量、Hyper-ThreadingTechnology搭載などの効果で性能が向上し市場に受け入れられているようです。
PentiumIIIではFSBが133MHz止まりで、クロックの上昇にあきらかに遅れをとっていてボトルネックとなっていました。しかしながらFSBのクロックを上げるのはタイミングの精度など難しいのでAGP4Xなどと同じ技術を用いて、FSBクロックを100MHzのままでクロックの立上りと立下りの2回とさらにクロックに半期ずらした信号を送りこれに対してもクロックの立上りと立下りの2回のデータを転送を行うことで400MHzのデータ転送を可能としました。後にクロックを133MHzに引き上げて533MHzのデータ転送を行うようになり、現在では200MHzとでFSBは800MHzのものもでています。
広いFSB帯域を生かすには、広いメモリ帯域と高速なメモリが必用です。Intelはその回答としてRDRAMを使うことを提唱しました。しかしながら、RDRAMはすでにPentiumIIIで失敗しておりその上かなり高価であったこともありユーザーの評価は極めて厳しいものでした。その為、結局性能では劣るが将来性と価格が安いDDR-SDRAMを採用する方針に変更されることになります。最終的にはDDR-SDRAMをデュアルで使うことによって性能を向上させて問題を解決するに至りました。
Pentium4はクロックの向上によって性能が上がるように設計されていますが、それが消費電力の上昇を招いてしまいました。詳しくは上のコラムを参照していただくとしてこの理由からPentium4はモバイル向けには向いておらずPentium 4が登場してからも長い間消費電力がポイントになるモバイルパソコンなどではPentium IIIなどが使われ、現在ではモバイル専用設計のPentiumMが投入されています。Pentium 4でも消費電力が抑えられたモバイル向けの製品もありますが、その設計上モバイル向けには利用されにくい製品なのです。
NetburstアーキテクチャにはHyper-Threading technology技術の採用を前提に作られたものだったようで、このHT技術が最新のコアの後期のバージョンで有効になりました。逆に言うならこのアーキテクチャでHT技術を使わないと、CPU一個分近くのリソースが無駄になっていることになり、初期のPentium4が性能がふるわなかった理由の一つかもしれません。IntelのPentiumシリーズは以前よりSMP(一般にはDual CPUまで)に対応していましたが、Pentium4では非対応になっていましたがこれもHT技術を見越したためだと思われます。
Hyper-Threadingについて詳しくは詳しくは『Column 02』を参照してください。
本来、Intelの戦略ではFSBを533MHzの次に677MHzを導入して、さらにHyper-Threading technologyは高クロック版のみに導入する予定だったようです。しかし、AMDがAthlon64を投入することになり対抗してFSBは一気に800MHzまで引き上げHyper-Threading technologyを低クロック版にも投入することになりました。もちろんこの結果われわれ消費者は恩恵を受けたわけで、AMDのようなよい意味でのライバルというものはAMD派だけでなくIntel派でもがんばって刺激をあたえてもらいたいものです。
ラインナップ
Pentium4には現時点ですでに3つのコアが存在します。(Pentium 4 XEを除く)
チップ名 | Pentium4 | Pentium4 | Pentium4 |
---|---|---|---|
開発コードネーム | Willamette | Northwood | Prescott |
一次キャッシュ | 20KB | 20KB | 28KB (トレース12KB データ16KB) |
二次キャッシュ | 256KB | 512KB | 1024KB |
FSB | 400MHz(クロックは100MHz) | 400/533/800MHz (クロックは100/133/200MHz) |
533/800MHz (クロックは133/200MHz) |
クロック | 1.3-2.0GHz 0.1GHz刻み | 1.6-2.6GHz 0.2GHz刻み/2.5GHz 2.4-2.8GHz 0.13GHz刻み3.06GHz 2.4-3.2GHz 0.2GHz刻み |
2.4/2.8GHz 2.8-3.4GHz 0.2GHz刻み |
パッケージ形状 | FC-PGA2 | FC-PGA2 | FC-PGA2 |
対応スロット | Socket423/478 | Socket478 | Socket478 |
I/O電圧 | 1.7V | 1.5-1.525V | 1.225-1.4V |
プロセスルール | 0.18μ | 0.13μ | 0.09μ |
ダイサイズ | 217mm2 | 146mm2 | 112mm2 |
トランジスタ数 | 4200万個 | 5500万個 | 12500万個 |
拡張命令 | MMX/SSE2 | MMX/SSE2 | MMX/SSE3 |
分類 | RISC | RISC | RISC |
その他 | - | 3.06GHz、FSB800版はHTに対応 | FSB800版はHTに対応 |
※Northwoodにはモバイル版が存在して電圧ほか多少スペックがことなることもある。
※電圧はクロックの違いやモバイル版などによって多少異なることがある。
※Pentium 4にはXeon用コアのGallatinを用いた2MBの3次キャッシュ搭載のPentium 4 Extreme Edition(Pentium4 XE)が存在する。