Pentium Pro

はじめに

Pentiumは1995年にPentiumの後継として発売されたCPUです。

開発コードネームはP6で、x86命令を内部でRISCふうの命令に変換する仕組みをもつためにRISCプロセッサに分類されます。パッケージに統合された二次キャッシュをバックサイドバスと呼ばれる専用のバスにより接続し、計5本の12段のパイプラインをもち32bitの演算には長けていましたが、16bitの演算を苦手としたため一般向けにはあまり受け入れられずにPentiumIIに取って代わられました。

主な仕様

Pentium Pro

スペック

チップ名 Pentium PRO
開発コードネーム P6
一次キャッシュ 16KB
二次キャッシュ 256/512/1024KB
FSB 60/66MHz
クロック 150/166/180/200MHz
パッケージ形状 DC-PGA(Dual Cavity PGA)
対応スロット Socket8
コア電圧 3.3V
I/O電圧 3.3V
プロセスルール 0.6/0.35μ
ダイサイズ 306mm2
トランジスタ数 550万個
拡張命令 -
分類 RISC
その他 -

※コア電圧は多少異なるものも存在した。

※トランジスタ数は二次キャッシュ分を含まない。

特徴

Pentium Proプロセッサは、スーパースケーラ・アーキテクチャを拡張して、整数演算や浮動少数演算ほか計5本のパイプラインを搭載して最大5命令を同時に実行できるのが最大の特徴です。5本のパイプライン12段になっていてPentiumよりもさらに高度な先読み機能を備えていました。特に先読みによる分岐ミスが起こった場合にPentiumは全パイプラインが一度停止してしまうのに対して、Pentium Proは影響がなければ他の演算を続行できるなどの改良が加えられていました。Pentium Proは本来Pentiumと比べて格段に処理能力が向上する仕組みでした。

※先読みとパイプラインの段について詳しくは『Colmun 01』を参照してください。

x86という複雑な演算をネイティブで演算しているPentiumまでと異なりPentium Proでは内部でμOPSとよばれるRISC風の命令に変換して演算するいわゆるRISCプロセッサーであるという特徴を備えています。ただし、純粋なRISCプロセッサーに対して、Pentium Proはx86命令を変換して演算する分同じ速さならばRISCよりも遅くなります。

Pentiumの初期の頃までは、CPUのクロックとマザーボードのクロックは同じでしたが、Pentiumの中後期版はマザーボードのクロックの何倍という速さで動作するようになり、マザーボード上に二次キャッシュを搭載するとCPUよりも動作が遅くなりボトルネックとなるようになってしまいました。そこでPentium ProではCPUにCPUと同じ速度で動作する二次キャッシュを搭載して、マザーボードとは別に二次キャッシュ専用のバスを設け、マザーボード側のバスをFSB=FRONTSIDE BUS、二次キャッシュ側のバスをBSB=BACK SIDE BUSとしました。

CPUに二次キャッシュを搭載したために、CPUのパッケージが大きくなりまた製造が難しくなりました。また、CPUと同じ速度の二次キャッシュは高価でCPU自体も割高になったのもPentium Proが一般受けしなかった理由にもなってしまいました。

搭載できるトランジスタの数は一個あたりの価格によって限られてしまうのでそのトランジスタをどこに割くかを決めるのが重要になってきます。Pentium Proは16bit演算を犠牲にしてでも32bit演算の性能向上を目指しました。実はPentium Proが発売された年は1995年でくしくもWindows95が発売されダイブレークした年ですが、Microsoftは当初1995年にはOSの32bitをすると公約していたのです。

まぁ、予定が遅れることは良くあることで本格的に完全32bit化されたOSが普及したのは2000年に登場したWindows2000あたりからで、16bitコードをふんだんに使ったWindows95ではPentiumProはその性能を完全に発揮することはできませんでした。

加えて、キャッシュをパッケージに統合したために価格が高騰してしまったのも相まって一般向けとしては普及することはなく、WindowsNT等で一足速く32bit化を果たしていた企業などで評価されることになります。

Pentium Proの後継であるPentiumIIはDual CPUまでしかサポートしない為、4-way SMPなどを構築するサーバー向け用途などにはPentiumII発売後にも出荷されていました。PentiumIIのサーバー向け版のPentiumIIXeonの登場をもってこの分野からも姿を消すことになります。

Pentium Proは結局コンシューマ向けとしては成功したとは言い難い結果に終わりましたがPentium Proの構造は優れたものであり、後継のPentiumII/PentiumIII及びCeleronなどを含めて7年以上にわたってIntelのCPU戦略の根幹を担った設計として優れたCPUだったと思われます。