はじめに
UNIXの簡単な歴史を纏めてみました。歴史を知ると現在の各OSと会社の状況が把握しやすくなるように思います。
UNIXの登場
1969年にAT&T社ベル研究所のKen ThompsonとDennis Ritchieの2人の研究者がUNIXを開発しました。このOSはもともとAT&Tベル研究所の研究者が自分たちで使う為のOSをとして開発したもので、このため最初から商用に開発された他のOSとは開発動機が異なります。UNIXが未だに初心者に敷居が高いのは、ある程度コンピュータを扱える人間が使うのに適した設計が起因しているのかもしれません。
ところでこの二人はC言語の開発者でもあります。1973年にUNIXを別のコンピュータに移植することになった際に、将来また移植するようになった時に備えて、コンピュータへの依存度が高いアセンブリに代わる言語として開発したのがC言語なのです。これによりUNIXはシステムによらずに移植しやすいOSとなり、その後の爆発的な普及の一因となったのでした。
さて、AT&Tベル研究所は既知の通りかのベル研究所である通信分野ですでに独占的なシェアを占めてる会社だったため司法省が独占禁止法を発動し、AT&T社はライセンスによる販売をすることになりました。しかも、なんとそのライセンスを受けてUNIXを販売したメーカーにかのMicrosoftもあったのですから驚きです。
MicrosoftはUNIX Ver.7.0をIBM PC向けにしたものをXENIXとして販売していました。ちなみに、UNIXは登録商標なのでUnixなどと記述するのは間違いなのだそうです。
BSDの登場
1974に年に州立カリフォルニア大学バークレー校にUNIX Ver.4.0が導入され、1976年からこれを元に開発を始めたのが今でいう(BSD=BerkeleySoftware Distribution)となりました。
さらに1979年頃にはAT&T社がUNIXの商用化を考え、ベル研究所から別の開発するグループへ開発元が変更してしまいます。このため研究を外されたベル研究所内外にいたUNIXの研究員はその技術の反映先としてバークレー校のBSDを選んだのでした。
1980年にはインターネットの開発資金を提供したので有名な国防総省高等研究所から資金援助を受け同所の研究センターでつかうコンピュータのOSとしてバークレー校が開発を行うことになります。こうして開発され1983年に発表されたのが4BSDで、4.2BSDは現在標準的なインターネットのプロトコルであるTCP/IPが初めて実装されたOSでした。その後4.4BSDが発表されるまで資金援助を受けていました。
本家UNIXのその後
AT&Tは1982年に商用UNIXとしてUNIX Ver.7.0の後継のSystemIIIを開発します。当時はOEM用として販売されましたが、このOSが由緒正しいUNIXでした。その後継として1983年にSystemVが発売され、1988年発売されたSystemV R4でBSDや後述のLinuxの利点を吸収します。
Sun MicrosystemsはSolaris1という名称で4BSDをベースに作ったSunOS4.xを販売していました。AT&TはSunMicrosystems組んでSolaris2となるSunOS5.xをリリースします。SunOS5.xはSunOS4.xの後継ですが、SystemVR4系となっており現在正式なUNIXの後継といえるOSとなっています。 ただし、1993年にAT&TはUNIXの商標をX/Openという機関に売却しています。
FreeのUNIXの登場
UNIXはAT&T社がそのソースコードのライセンスをもっており、使用するにはライセンス料を支払う必要がありました。1987年にオランダのAndrewS.Tanenbaum教授が出版した『Operating Systems: Design and Implementation』というOSの教科書がベストセラーになり、この本には同氏が一から書き上げた(AT&Tのライセンスにかからない)UNIX風のソースコードがすべて掲載されました。ただ、このOSは学習の為に作られており実用的な発展には向かないと同氏自身が言っていました。
1991年にこの本に多大な影響を受けたフィンランドの学生だったLinus Torvalds氏が一から書き上げたのがLinuxです。同OSはBSDとSystemVの両方の利点を合わせ、さらにLinus氏の持論である『ユーザーに使いやすく』という点でも優れていたため今日の普及に至るのでした。
ところで、Andrew氏とLinus氏は大論争をしておりAndrew氏がLinus氏に「君が私の生徒だったら単位なんかやらん。」といったという逸話が残ってます。ちなみに論争の結果、Linux氏がAndrew氏が最初に指摘したLinuxは時代遅れであるという点を認める形となり逆にLinuxは時代の最先端を走らない=最先端を走らなくても良いという利点(?)を得ることになるのでした。
さて、バークレー校は1994年に4.4BSDからUNIXのコードを排除した4.4BSD-Liteを発表します。バークレー校の使用条件は以下の二点だでした。
- ソースはオリジナル、改訂版ともにバークレー校に一切報告やライセンス料なしで配布できる。
- バークレー校のソースを一部でも使った場合はその旨をそのデータに書く。
これによって、AT&T社やバークレー校にまったくライセンス料を払わなくて済むFreeなBSDが誕生したのでした。