はじめに
Biogon 35mm F2.8はカールツァイスの広角レンズで、少しマニアックですが写りに定評があるレンズです。私はすでに戦前タイプを持っていたのですが、戦後タイプを購入してみました。Biogonは戦後にレンズ構成が変更になっており、いわゆるビオゴン型のレンズ構成はこの戦後タイプからになります。お値段は5万円ほどでした。
戦前タイプに比べて設計が新しくコーティングも施されているので、よりモダンな写りを想像していましたが、戦前タイプに比べても発色が独特で、オールドレンズらしい写りという印象です。後玉が小さくなり扱いやすくなっているので、戦前タイプよりも手軽にオールドレンズらしいアジを楽しめるレンズと言えるのではないでしょうか。

CarlZeiss Biogon 35mm F2.8
最初に登場したBiogon 35mm F2.8 (Carl Zeiss Jena製)はSonnarを広角向けに発展させたゾナー型のものでしたが、戦後に西ドイツで製造されたBiogon 35mm F2.8(Zeiss-Opton製, Carl Zeiss製)はレンズ構成が変更となり、こちらはビオゴン型と呼ばれています。
ちなみに、戦後タイプのBiogon 35mm F2.8はレンズ構成もさることながら後玉が小型化しており、このレンズに合わせて設計された戦後タイプのContaxボディには、戦前タイプのBiogon 35mm F2.8は物理的に干渉してつかないそうです。なお、Biogon 35mm F2.8のコピーレンズであるJupiter-12は戦前タイプをベースにしています。


戦前タイプと同様に後玉が後ろに飛び出していますが、小さく短くなっているのが特徴です。戦前タイプはマウントアダプターから後玉がはみ出しましたが、戦後タイプは収まり通常のリアキャップが付けられるので、使い勝手が大きく向上しています(重要!)。また、戦前タイプでは干渉するミラーレスカメラでも、こちらだったら大丈夫かもしれません。


マウントは戦前タイプと同じくCONTAX C(オールドコンタクス)マウントの外爪タイプで、KIPON社製の外爪専用アダプタのCRF-NEX(8000円程度)を使用しています。

新旧ビオゴン比較
せっかく戦前タイプと戦後タイプ両方のBiogon 35mm F2.8があるので撮り比べてみました。とはいっても、だいたい同じ場所でレンズを変えて撮っただけなので、厳密なものではありません。なお、取り扱いが雑だったためF22には大量のゴミが映り込んでしまっているのもご容赦のほどを。
![]() 戦前タイプ F2.8 |
![]() 戦後タイプ F2.8 |
![]() 戦前タイプ F8 |
![]() 戦後タイプ F8 |
![]() 戦前タイプ F22 |
![]() 戦後タイプ F22 |
いかがでしょうか。色味や周辺画質などのクセも含めて、ほとんど違いが分からないくらい似ていると思います。レンズ構成が変わってはいるものの、結局のところ同じ設計思想に基づいて、同じように写るよう設計されたレンズということなのでしょう。
写りの印象
戦前タイプに比べてコントラストが高く色味が独特というのが第一印象です。戦前タイプでは比較的コントラストが高いものの自然で繊細な色味という印象だったのですが、戦後タイプはコントラストがより高い反面、色味が独特でコッテリとした色合いだと感じました。どことなく、一昔前のフイルムカメラの写真のようなイメージでしょうか。
もっとも、上の撮り比べを見て頂ければわかりますが、並べてみるとほとんど色味に違いはないようです。正直言って見分けが付かないくらいだと思います。それでも、色味に違いがあるように感じるのは条件によって違いがでるからなのかもしれません。このレンズはコーティングが施されているので、そのあたりが影響しているのでしょうか。
ちなみに、Biogon 35mm F2.8に限らず、α7Sで撮影した写真はレンズによって色味が変化します。イメージプロセッサでデジタル処理され、ホワイトバランスなどもオートで調整されているにも関わらず、レンズを交換すると色味が変わるというのは興味深いですね。
周辺部は戦前タイプと同じように盛大に流れます。こちらはイメージセンサが光の入射角にシビアなのが原因のようなので仕方ないかもしれません。
個人的には写りに関しては戦前タイプの方が好みですが、取り扱いの面では圧倒的に戦後タイプの方に軍配があがります。また、せっかく『ビオゴン』を味わうという面でもビオゴン型のこちらの方が良いと思います。色味や周辺画質などオールドレンズらしい写りが楽しめ、大きさもコンパクトなので旅行にもってこいのレンズだと思います。

α7S + Biogon 35mm F2.8 ISO100 F2.8 1/2500 +0.3 Vivid
作例
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