Pentax Qの絵づくり

はじめに

ついついPentax Q を衝動買いをしてしまったので、その特徴を下の4つにわけて考察してみることにしました。

Pentax Qを買ってみた。 - トップページ

今回は、その中で絵づくりについて詳しくお話ししてみたいと思います。

絵づくり

Pentax Q には出来上がる写真を調整する以下の3つの機能が搭載されています。

これらの機能を見ても、Pentax Q は単に写真を撮るということだけでなく、写真を撮ることを楽しむことを目指して作られているとうことを感じさせるものです。

こういった写真を調整する機能は最近では他のメーカーの機種でも良く見かけるメジャーな機能となっているようですが、Pentax Qの面白いところはそれぞれの項目をさらに自分で調整できるパラメータを多数持っているところです。

同じエフェクトを設定してもパラメータの値が異なれば出来上がる写真も異なるわけで、撮り手としては可能性が広がるのと同時に、メーカー押しつけの設定ではなく自分好みに調整することができるのが Pentax Q の良いところだと思います。

ただ、3つの機能はいずれも写真の仕上がり変える機能ですが、ややその役割分担がイマイチ謎なところもあります。たぶん、言葉の意味からすればそれぞれの機能の意味は以下のようなものだと思うのですが、他の項目と重複して同じ機能があったりとややこしいところも見受けられました。

カスタムイメージ

フィルタやエフェクトと違って聞き慣れない言葉だったので、最初は何の機能か分からなかったものでした。Pentax Qを買ってみた。 - トップページでもお話しましたが、フィルムやデジカメに限らず、再生側のテレビなどにもメーカーの特色のようなものがあります。より美しくと目指すところは同じでも、鮮やかな写真を好むメーカーもあれば、自然な発色を良しとするメーカーもあるわけです。

昔ならば自分の好みやシチュエーションによってフィルムを使い分けたりしていたのですが、最近ではデジタルの利点を活かしてシーンごとに自動的に最適な調整が行われるような機種が多くなり、カスタムイメージもそのような機能の一つのようです。

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(左)ナチュラル、(中)雅(みやび)、(右)ほのか

カスタムイメージの詳しい写真比較をカスタムイメージ に纏めました。

カスタムイメージはシーンごとにガリガリとチューニングした調整値というよりかは、もうちょっと汎用性が高く『鮮やか』や『自然』のような基本的な調整に留めています。さらに、ユーザーがパラメーターを調整することによってメーカーの絵づくりではなくユーザーの絵づくりができるようになっているのもウリの一つです。

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フィルタ

デジタルフィルタと聞くと、工学系の人間だとローパスフィルタとかが浮かんでしまうのですが、デジカメで言うところのフィルタはどちらかというとアナログ時代から写真の味付けなどに使っていた偏向フィルタやカラーフィルタなどなどをデジタル的に再現したものという意味のようです。

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(右)物理的な偏向フィルタによって撮影。空がより青くなっている…気がしない?

もっとも、Pentax Qに搭載されているフィルタは、エフェクト(特殊効果)的な意味合いで使われているものも多く、Photoshop などのフォトレタッチソフトで用いられる特殊効果のフィルターという意味なのかもしれません。スリムや水彩画などはフィルタというよりエフェクトなんじゃないかと思いますが。

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(右)『水彩画』。たしかに水彩画っぽくなっている。

フィルタの特徴は後からも適用することができる点です。撮ってみたらトイカメラにぴったりな絵だったので、トイカメラのフィルタをかけてみた、というような使い方ができます。ただ、後から適用する場合はタイミングが重要で、次の写真を撮る前に行わないと順番が入れ替わるという問題があります(リサイズでも同様の問題が起こる)。

例えば、北海道に行って毛ガニを食べて写真を撮り、その足で飛行機乗って九州に行って芋焼酎を飲みながら写真を撮ったとして、その夜に宿で毛ガニの写真にフィルタをかけると芋焼酎の写真の後にフィルタをかけた毛ガニの写真のくるわけです。もちろん、元の写真は残るので分からなくなるわけではないですが。

これはデジカメの名前に決まり事があるのが原因なのである意味仕方がないのですが、フィルタをかけたものはIMG_0001 → IMG_0001Aのような連番ではないものにできるように設定項目などがあるとうれしいです。

ちなみに、フィルタは撮影する時に適用できるフィルタと、後からしか適用できないフィルタがあります。特に後からの方は知らないと一生使わないで過ごしてしまう可能性があるので念のため。

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(右)後から適用するフィルタ『ミニチュア』。たしかに、ソレっぽくなっている。

スマートエフェクト

スマートエフェクトは、意味合い的にはエフェクト(特殊効果)なんですが、Pentax Q の場合はどちらかというとカスタムイメージとフィルタを組み合わせてメーカーが用意したテーマのようなもののようです。

まぁ、エフェクトの類は最初は物珍しくて使ってみるものの、そのうち使わなくなるのがオチだろうとは思うものの、名前が『さくらほのか』や『あでみやび』など、シチュエーションによってはちょっと使いたくなるようなネーミングをしているところが面白いです。

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(右)『さくらほのか』、花の写真に使いたくなります。 (ちなみに、写真は桜ではないですw)

ただ、これを呼び出すために使うカスタムボタンの作り込みは甘いと思います。まず、カスタムボタンはスマートエフェクト以外の機能を設定できるのですが、そうするとスマートエフェクトが使えなくなってしまう

また、カスタムボタンに設定できる機能にも制限がかなりあり、カスタムイメージ、フィルタ、サイズ、ホワイトバランスが選べるものの、それぞれは排他利用で、1はカスタムイメージの『自然』、2はフィルタの『トイレンズ』、3はホワイトバランスの『CTE』といった使い方はできません。

取り扱い説明書に注意でわざわざ書いてあるところを見ると、技術的な理由で仕方なかったような雰囲気です。

デジカメWatchの記事に掲載された開発者インタビューを見ると、ある技術者がひとりでがんばって搭載させたとのこと。すごい。。。作り込みまで至らなかったとしても仕方がないですね。

http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/longterm/20110930_480575.html (デジカメWatch)

デザインについてはまったく抵抗はありませんでした。何でかって、そこには昔からモノがあったから。。。

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昔懐かしのタイマーレバー

私はこのボタン自体はすごく良い機能だと思います。最近のカメラは多機能ですが、メニューを追って色々操作するのがメンドウで、ついフルオートでとってしまうこともしばしばで、操作しやすいところに一発アクセスのボタンがあるのはありがたいです。

せっかく、アクセスしやすいところにあるのですから、このカスタムボタンの作り込みを進めて欲しいと思います。こちらはファームなどでも対応できるのではないかと期待しているのですがいかがでしょうか。カメラの名前、『Q1』ではなく長く使えそうな『Q』ということでちょっと期待してもいいでしょうか?(笑)

EXIFの記録

このブログを書いていてとても思うのですが、カスタムイメージやデジタルフィルタ、スマートエフェクトなどに何を使って撮影したのか記録が欲しいです。これは次の撮影の参考になるのでとても重要なことだと思います。

フィルムカメラの時代はシャッタースピードや露出などをメモしておいて、現像した後に見比べながら研究したりしていましたが、デジカメでは写真画像そのものにEXIF情報として細かく記録されるようになって大変便利になりました。

同じようにカスタムイメージやデジタルフィルタ、スマートエフェクトなどもEXIF情報の一つとして記録に残して欲しいと願います。EXIF情報には、コントラスト、彩度、シャープネスなどの各パラメータについては記録があるのですが、カスタムイメージ一つとっても情報が足りなくて分らないのです。

実は、比較の写真を旅先でいっぱい撮ったものの、メモしてなくほとんど無駄になってしまったというのはココだけの話。(T_T)

項目について

カスタムイメージやデジタルフィルタ、スマートエフェクトの役割分け(場所)なんですが、ちとわかりにくいと感じます。さらに、HDRなどは3つの項目から呼び出せたりと、重複しているのもいくつかあります。

カスタムイメージ  
鮮やか -
ナチュラル -
人物 -
風景 -
雅(MIYABI) 和風に似合う(笑)
ポップチューン コントラスト高め
ほのか コントラスト低め
銀残し フィルム現像技法の一つ、
緑がかかった低彩度写真に
リバーサルフィルム リバーサルフィルム風
モノトーン 白黒
クロスプロセス フィルム現像技法の一つ、
ランダムエフェクトになるらしい

デジタルフィルタ  
トイカメラ トイカメラ風
ハイコントラスト コントラストを高める
シェーディング 写真の隅を暗くしたり、明くしたり
スリム 縦横比を変える
HDR 疑似的なHDR
ネガポジ反転 ネガのように
色抽出 特定の色だけを抽出、後は白黒に
カラー カラーフィルターのような効果
水彩画 水彩画のように
ポスタリゼーション ポスターのように
フィッシュアイ 魚眼レンズ風
   
デジタルフィルタ(後からのみ)  
モノトーン 白黒化する
レトロ 退色したフィルム写真のように
ソフト ソフトフォーカスレンズのような効果
デッサン デッサン画のように
ミニチュア ジオラマ風にする
フレーム 写真にフレームをつける
トゥインクル 夜景などで光を輝かせる
ベースメイク カスタマイズ

スマートエフェクト  
極彩 ハイコントラストを強力に
ソリッドモノカラー 色抽出 + コントラスト高め
Auto110モード トイカメラ風 + コントラスト低め
クロスプロセス クロスプロセスフィルタ
さくらほのか ほのか + ややピンク味
ドラマチックアート ドラマチックに似合う(笑)
ハードモノクローム 白黒 + コントラスト高め
水彩画 水彩画フィルタ
あでみやび みやび + コントラスト高め

人によって感じ方は色々あると思うのですが、ここではちょっと私なりに各機能を整理して分けてみたいと思います。まず、1つ項目を増やした上で各項目の意味を再定義します。

カスタムイメージ  
鮮やか -
ナチュラル -
雅(MIYABI) 和風に似合う(笑)
ポップチューン コントラスト高め
ほのか コントラスト低め
トイカメラ トイカメラ
リバーサルフィルム リバーサルフィルム風
モノトーン 白黒
セピア セピア色(追加)

風景と人物は、カスタムイメージではなくてシーンモードにあるべき項目だと思います、というかシーンモードにもあります。。。カスタムイメージは絵づくりなので、対象となるシーンに合わせたチューニングはシーンモードに任せましょう。

また、セピアカラーは白黒の色を変えることで実現するのですが、人によっては良く使う項目だと思うので独立して項目を作ってみました。

カスタムイメージのような味付けの善し悪しははカメラの大きな特徴となります。たぶん、Pentaxの技術者さんも日夜研究を重ねていると思いますので、ぜひとも研究成果による新カスタムイメージの追加はファームウェアのアップデートなどで既存のユーザーも恩恵を得られるようにしてほしいなぁと思うのです、ユーザーとしては。

デジカメに限らず、ケータイやオーディオなど、デジタル家電はパソコンによく似ていて、しかも結構高価な割に、発売後は修正や調整はしても機能が追加されることはまずありません。何万もするカメラを『新機能が欲しければ新しいのを買って下さい』はあまりにも。。。ハードウェアに起因する部分は仕方ないですが、こういうソフトウェアの部分ではぜひ長く使えるアップデートを期待したいところです。

フィルタ  
トイカメラ トイカメラ風
レトロ 退色したフィルム写真のように
ソフト ソフトフォーカスレンズのような効果
ハイコントラスト コントラストを高める
シェーディング 写真の隅を暗くしたり、明くしたり
トゥインクル 夜景などで光を輝かせる
色抽出 特定の色だけを抽出、後は白黒に
カラー カラーフィルターのような効果

エフェクト  
モノトーン 白黒化する
ネガポジ反転 ネガのように
フレーム 写真にフレームをつける
スリム 縦横比を変える
ミニチュア ジオラマ風にする
デッサン デッサン画のように
水彩画 水彩画のように
ポスタリゼーション ポスターのように
フィッシュアイ 魚眼レンズ風
銀残し フィルム現像技法の一つ、
緑がかかった低彩度写真に
クロスプロセス フィルム現像技法の一つ、
ランダムエフェクトになるらしい
ベースメイク カスタマイズ

HDRはメニューにもあるのでそちらを利用してもらうことにして、デジタルフィルタから外しました。HDRは2種類搭載しているようですが、HDRの詳細メニューで選択できるようにすることで対応できると思います。

フィルタはリアルタイム適用、エフェクトは撮影後適用を考えていますが、トゥインクルはリアルタイムで処理できるのかはちとあやしいと思います。

テーマ  
極彩 ハイコントラストを強力に
ソリッドモノカラー 色抽出 + コントラスト高め
Auto110モード トイカメラ風 + コントラスト低め
クロスプロセス クロスプロセスフィルタ
さくらほのか ほのか + ややピンク味
ドラマチックアート ドラマチックに似合う(笑)
ハードモノクローム 白黒 + コントラスト高め
水彩画 水彩画フィルタ
あでみやび みやび + コントラスト高め

テーマは、カスタムイメージ + フィルタ のメーカー推奨設定ということで、とくに変更はしていません。ただ、USER設定で設定できる項目を増やして欲しいと思います。カスタムイメージ + フィルタ + ホワイトバランスに加えて、画像サイズや画像品質なども設定できるとありがたいです。

そして、選択肢の中に『現在の設定を適用』を追加してもらえれば、使わない項目はそれにしておけばテーマを変更してもその項目は影響なく使えます。

というのも、旅先で説明書きなどをメモ代わりにとったりするのですが、その際に画質や設定を変更するのが結構面倒で、さらに変更後に忘れていて低画質のまましばらく撮っていたりして愕然とすることが結構あるのでワンタッチでそういうためのモードに変更できたらいいなぁと思います。USER設定如何でそういうことも容易に対応できるので期待しているのです。