はじめに
PentiumIIIは1999年にPentiumIIの後継として発売されたCPUです。開発コードネームはKatmaiで、PentiumIIをベースにSSE=StreamingSIMD Extensions拡張命令を追加したものです。
写真

主な仕様
Pentium III
- SSEを搭載。
スペック
チップ名 | Pentium III |
---|---|
開発コードネーム | Katmai |
一次キャッシュ | 32KB |
二次キャッシュ | 512KB(コアの半分の速度で動く) |
FSB | 100/133MHz |
クロック | 450/500/533/550/600MHz |
パッケージ形状 | SECC2 |
対応スロット | Slot1 |
コア電圧 | 2.0V |
プロセスルール | 0.25μ |
ダイサイズ | 128mm2 |
トランジスタ数 | 950万個 |
拡張命令 | MMX/SSE |
分類 | RISC |
その他 | - |
特徴
PentiumIIIのKatmaiでFSB100MHz版とPentiumIIのDeschutesでFSB100MHz版と比べるとSSEをサポートするか否かの他にほとんど変更点がありません。PentiumIIとPentiumIIIではデスクトップ向けコアでも複数のコアが存在します。実はそのコアチェンジにともなって機能が大幅に向上していたりして、私的にはPentiumII→PentiumIIIよりもそれぞれのコアチェンジの方が変化が大きいような気がします。
PentiumIIIはPentiumIIとの性能差がそれほどないにしても、価格的な差もそれほどなくすんなり後継として受け入れられました。しかしながら、PentiumIIIとして快進撃を進めたのは第二世代のCoppermineになってからです。
ラインナップ
チップ名 | Pentium III | Pentium III | Pentium III/PentiumIII-S |
---|---|---|---|
開発コードネーム | Katmai | Coppermine | Tualatin |
一次キャッシュ | 32KB | 32KB | 32KB |
二次キャッシュ | 512KB(コアの半分の速度で動く) | 256KB(コアと同速度で動く) | 256/512KB(コアと同速度で動く) |
FSB | 100/133MHz | 100/133MHz | 133MHz |
クロック | 450/500/533/550/600MHz | 533-1000MHz 66MHz刻み 550-1000MHz 50MHz刻み |
1.13/1.20GHz 1.13/1.26/1.33/1.40GHz |
パッケージ形状 | SECC2 | SECC2/FC-PGA/FC-PGA2 | FC-PGA2 |
対応スロット | Slot1 | Slot1/Socket370 | Socket370 |
コア電圧 | 2.0V | 1.35-1.75V | 1.45-1.475V |
プロセスルール | 0.25μ | 0.18μ | 0.13μ |
ダイサイズ | 128mm2 | 106mm2 | 80mm2 |
トランジスタ数 | 750万個 | 2810万個 | 4400万個 |
拡張命令 | MMX/SEE | MMX/SEE | MMX/SEE |
分類 | RISC | RISC | RISC |
システムバス方式 | - | - | - |
※CoppermineやTualatinは同一コアのモバイル版が存在して電圧他スペックが多少異なる。
※電圧はステッピングやクロックなどによって異なる場合もある。
※ダイサイズはスペックアップで変わることがある。
CoppermineのPentiumIIIはKatmaiから大幅に改良されています。プロセスルールが微細化すると同じコアならばダイサイズが小型化することができます。Coppermineはこの小型化の代わりに二次キャッシュをコアに統合しました。これに伴って二次キャッシュの量が半減しましたが、速度がコアと同一になったので性能的には向上しているようです。PentiumPROもコアと同一な速度でしたが、こちらはコアに統合されているのではなくて別の二次キャッシュチップをコア一緒にパッケージに入れただけでコアと統合したCoppermineの形式とは異なります。
二次キャッシュがコアに統合されたためにカートリッジ形状である必要がなくなっために再びPGA形式に戻りました(古いマザーボード用にカートリッジ形状もしばらく継続販売されたが)。
※2次キャッシュとパッケージの関係については『Pentium II』を参照してください。
IntelのCPUでは同じ周波数でもコアやFSBなどが異なる製品が存在するために周波数の後ろにアルファーベットを入れて区別することがあります。たとえば、KatmaiとCoppermineの同じ周波数の製品があったらCoppermineの方にEをつけて呼びます。例えば550EMHzみたいな感じです。さらに、FSB100Hz版とFSB133版が存在する場合はFSB133MHz版にBをつけます。例えば、1000BMHzのような感じです。
katmai FSB100 | Katmai FSB133 | Coppermine FSB100 | Coppermine FSB133 |
---|---|---|---|
PentiumIII 600MHz | PentiumIII 600BMHz | PentiumIII 600EMHz | PentiumIII 600EBMHz |
同一の周波数で異なる製品がない場合はなにも付けずに呼ぶことが多いですが、区別するのも紛らわしいので全部まとめてEとかBとか付けて呼ぶこともあります。同様にCoppermineとTualatinの区別にはAを付けて呼びます。
第三世代のPentiumIIIはTualatinコアでさらにプロセスルールが微細化されて、二次キャッシュがCoppermineの2倍(PentiumIII-S/PentiumIII-Mのみ)に増量されています。機能的にはほとんどそれ以外の変更はなのですが、システムバスの信号電圧がAGTL+=AssistedGunning Transceiver Logic Plusの1.5VからAGTLの1.2Vに引き下げられ、転送方式がシングル駆動からディファレンシャル駆動に変更されました。この為、それまでのPentiumIIIと電気的な互換性が損なわれてしまいました。本来特殊なゲタを使わない限りは、対応したチップセットを搭載したマザーボードが必要となります。ちなみに、Coppermineで従来のAGTL+とAGTLの両方をサポートしたものが存在していてD0ステッピングなどと呼ばれていました。
ディファレンシャル駆動について詳しくは『Column 08』を参照してください。
Tualatinコアの登場のあたりでIntelは急速にPentium4への移行を進める方針をとっていて、TualatinコアのPentiumIIIは性能向上も価格引下げもほとんど行われずに短期間で市場から消えていくことになってしまいました。しかしながら、プロセスルールの微細化にともなってコア電圧が引き下げられ消費電力が下がったことやPentium4の消費電力が高いことなどからモバイル向けやラックマウントサーバー向けにはそれなりに出荷されていたようです。
Pentium IIIとPentium 4の消費電力の関係は『Column 01』を参照してください。