『音質とスペック』

はじめに

最近、PCオーディオというのが流行っているようです。24bit/192kHzで再生できるとか、スペック的にはオーディオを凌駕するスバラシイ性能を持っています。

では、このオーディオインターフェースを買うと、CDをリッピングしてPCに保存したマイコレクションが24bit/192kHzのスバラシイ音質で再生できるか!?、というとそうではありません。ここではそんなお話しをしたいと思います。

24bit/192kHzで16bit/44.1kHzの曲を再生すると?

車を例に考えてみましょう。ここに300km/h出せると言われたランボルギーニ・カウンタックと、150km/hでも大変そうな農道のポルシェことスバル・サンバー(軽トラ)があったとしましょう。

この2つの車で家の前の国道を隣町まで走ったとすると、ランボルギーニの方が半分の時間で到着できる、わけないですよね。なぜなら国道の法定速度はせいぜい60km/h程度だからです。

では、ランボルギーニ・カウンタックとサンバーは、国内で乗る分にはどっちも同じか?と言えばそれもまた違います。なぜならランボルギーニの方が最高速度以外の部分でも性能が高いからです。

おそらく速度面でも加速や減速が早い分、サンバーよりも目的地に早く着くというのも事実でしょうし、乗り心地も違うと思います。私は乗ったことありませんが(笑)

オーディオインターフェースも同じです。CDを再生する限り、高級で24bit/192kHzの性能を持つ製品と、並みで16bit/44.1kHzの性能しか持っていない製品はスペック面では同じと言えます。なぜなら、CDに録音されているのは16bit/44.1kHzの音だからです。

アップコンバートなどで後から疑似的にサンプリングレートや量子化ビットを増やすこともできますが、これは音響効果と同じで、より美しく聞こえるように音を加工しているもので、このスペックが重要なのではありません。

でも、高級で24bit/192kHzの性能を持つ製品と、並で16bit/44.1kHzの性能しか持っていない製品は、それ以外の部分でも性能差があるハズです。デジタル部分ではクロック部分、アナログ部分ではノイズ対策などで差があるようです。

なので、24bit/192kHzに対応した製品で再生した方が、やっぱり美しく聞こえるのです。そして、やっぱり24bit/192kHzは違うね~とツイッターで呟きたくなるわけです。でも、理論上は24bit/192kHzだから良い音質ではなく、24bit/192kHz対応製品は良い音質の製品が多い、という点は押さえておきたいところなのです。

人間の可聴域とサンプリングレートの関係について詳しくは『Column 07』を参照ください。

アップサンプリング

上の例では、スペックが高いことは良くならないだけで悪影響はないとも考えられます。ただし、出力のサンプリングレートをソース(曲)のサンプリングレートと異なるものにする場合は、整数倍にしなければ音質が劣化します。

下はイメージですが、横100ピクセルの画像の横幅を2倍にしても輪郭はキレイなままですが、1.33倍とかにすると中間のピクセルで補完が入り輪郭がボヤけます。

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音楽でも似たようなことが発生して、48kHzを96kHzにアップサンプリングしてもほとんど影響はありませんが、44.1kHzを96kHzにするのは好ましくありません。数値が多い方が高音質だからといって、サンプリングレートが44.1kHzのCDを48kHzにアップサンプリングしても音質が良くなることはないのです。

通常のオーディオインターフェースは複数のサンプリングレートに対応しており、ソース(曲)のサンプリングレートに応じて自動的に変更される場合がほとんどですが、機種や設定によっては固定される場合もあるので注意が必要です。